1995年7月20日発売
あで姿で大江戸の人気をさらう上方芝居の若手女形・雪之丞の胸には、重大な決意が秘められていた。豪商だった父と母を奸計で破滅させ、無残な死へ追い込んだ長崎奉行と輩下の商人たちが、いま江戸で権勢を振るっている。親の仇、恥知らずの悪人どもを許すことはできない。免許皆伝の腕を美貌に隠し、雪之丞は侠賊・闇太郎とともに復讐の時を窺う。絢爛たる設定、手に汗握る展開、これぞ大衆小説の粋。
あるときは危機一髪の白刃、またあるときは決意を鈍らせる人情の足枷。女賊の横恋慕、将軍家愛妾の純愛、さらには邪剣の使い手の逆恨みが、次々に雪之丞の前に立ちはだかる。しかし、闇太郎の侠気にも助けられ、雪之丞の復讐の刃は、一歩また一歩と親の仇に迫っていく。そして、ついに凄絶な最後の時がやってきた。映画や舞台の名場面でも知られる、奔放華麗、日本大衆文学史を飾る代表的長編。
きみの助けが必要だ-写真学校の恩師から届いた突然の手紙。主人公の飛鳥理恵は恋人のいる故郷をあとに上京を決意する。報道写真家への情熱を胸に、待ち受けていたのは過酷な助手の仕事だった。やがて、訪れたチャンスをものにする理恵。しかし、マスコミの寵児と化した彼女を賛辞、羨望、中傷、嫉妬が翻弄するのであった…。
時は1870年。理想の音楽を求めて止まぬベルシュタイン公爵。公爵が目をかける新進音楽家フランツ・マイヤー。クラブ・ハウス「プレジャー・ドーム」の経営者である外国人興行師モーリィとパトロンのセントルークス卿。音楽を絶対的な快楽に変える麻薬「魔笛」と、人々を恐怖に陥れる音楽機械をめぐって暗躍する彼らは、その果てに何を見たのか。日本ファンタジーノベル大賞選考会にて選考委員を驚嘆させた、虚実混淆、波瀾万丈の物語。82歳にして博覧強記を誇る著者が、様々な仕掛けをこめて描く世紀末小説。
ズニ族の少年と、その友人であるナヴァホ族の少年が行方不明になった。ナヴァホ族警察のリープホーン警部補は、ズニ族警察と共同で二人の捜索を始めた。が、ズニ族の少年は遺体で発見され、さらに新たな殺人事件が、やがてFBI、麻薬取締官も介入し、事態は複雑な様相を呈してくるが…アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞した傑作。
女の名はオリーヴ・マーティン、現在、無期懲役の刑に服している。母親と妹を切り刻みそれを再び人間の形に並べて、台所の床に血みどろの抽象画を描いた女-だが、本当に彼女がやったのか。アメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞受賞作。
本所深川をあずかる回向院の旦那こと、岡っ引きの茂七が、下っ引きの糸吉、権三とともに摩訶不思議な事件の数々に立ち向かう。歓び、哀しみ、苦悩、そして恋…。江戸下町に生きる人々が織りなす人間模様を描く連作時代小説。
’70年代、エイズがまだ存在しなかった頃、ニューヨークは、男たちがひたすら快楽を追求する桃源郷だった。エリート弁護士マローンは、すべてを捨てて狂乱の世界に身を投じていく。ドラッグ、セックス、そしてダンス。地上の楽園ファイアー・アイランド、黎明期のディスコ、果てしなく繰り返される夜、そして踊り続けた彼が見たものは…。
キャラメル色の髪と瞳の蜂州里緒は、男だらけの高校で噂のアイドル。甘やかな容姿と爆弾みたいな性格で、むかうところ敵なし…のはずなのに、幼なじみの芳沢椿にだけはパワーダウン。里緒は、どうしても椿への恋心と欲望を認められずにいた-。小bで大好評を博したストーリーに書き下ろしを加えた、ノエルの学園ラヴバトル。
高校二年生の川武直弥は、『コンビニ』というアダ名をつけられるほどお人良し。イヤと言えない川武を、クラスメートの森村大河は大声でしかりつける。最初は、乱暴な大河を恐れていた川武だったが、彼の素朴な優しさに触れるうちに心を開き始めていた。そんなある日…。書き下ろし表題作他、三作品を含む、火崎勇の傑作集。
やっと想いが通じ合った伊関拓朗と永見潔だったが、新しいCMの仕事が入り、またもや忙しい日々を過ごすことに。永見に逢えず苛々していた伊関は、やっと逢えた永見のあまりにも素っ気ない態度に、つい荒々しく抱いてしまう。伊関のひどい仕打ちに怒った永見は、合鍵を伊関に突き返し、部屋から出ていってしまう-。
…エイダは9歳の娘フローラとともに、長い船旅を経て見知らぬ男のもとへやってきた、この男に嫁ぐためだった…。浜辺に降ろされたエイダの荷物のなかには彼女の分身ともいえるピアノがあった。だが、ピアノは引き取りを拒絶され、そのまま浜辺に放置される。朽ち果てるピアノの運命に耐えられぬエイダは、顔に刺青を彫った奇妙な隣人とある取引を交わす。ピアノを弾いているときだけ、好きなようにしていい…その代わりに一回ごとにピアノの所有権を私のもとに移して欲しい…。19世紀ビクトリア朝に生きた女と男の、あまりにも激しい情念の世界を比類のない詩的感性で映像化することによって数々の映画賞を受賞した名画の原案を、作者自身が大胆な筆致で小説化した異色の文学。映画では描かれなかった登場人物たちの過去の秘密、意外な素顔が、小説という表現形式を得ることによってはじめて明らかにされ、官能と真実の物語はようやくクライマックスを迎える…。