1995年発売
精神の危機を感じて外国滞在を決意した作家の父に、妻が同行する。残された3人の兄弟妹の日常。脳に障害を持った長男のイーヨーは“ある性的事件”に巻き込まれるが、女子大生の妹の機転でピンチを脱出、心の平穏が甦る。家族の絆とはなんだろうかーー。〈妹〉の視点で綴られた「家としての日記」の顛末に、静謐なユーモアが漂う。大江文学の深い祈り。 精神の危機を感じて外国滞在を決意した作家の父に、妻が同行する。残された3人の兄弟妹の日常。脳に障害を持った長男のイーヨーは“ある性的事件”に巻き込まれるが、女子大生の妹の機転でピンチを脱出、心の平穏が甦る。家族の絆とはなんだろうかーー。〈妹〉の視点で綴られた「家としての日記」の顛末に、静謐なユーモアが漂う。文学の深い祈り。 ●静かな生活 ●この惑星の棄て子 ●案内人(ストーカー) 他
ある夕暮れ、午睡から目覚めると、左足の親指がペニスになっていたー。驚くべき奇想とともに始まる性の遍歴を描いて、発表直後から圧倒的な反響を呼び、90年代の文学に画期的な地平をひらいた第三十三回女流文学賞受賞の名作。
性の見せ物一座に加わった、親指ペニスを待ち受ける数奇な運命は…。新たなセクシュアリティのあり方をラジカルに問いかけながら、かつてない文学世界をつくりだした、近年、最大の話題作。
宝暦七年、侍・徳山五兵衛が波乱に満ちた六十八歳の生涯を終えた。五兵衛は若い頃、一人の少女への恋慕の念から、土蔵から盗み出した宗〓@59BC@作の笄(こうがい)を贈った。その笄がこれほど数奇な運命をたどろうとは…表題作「さむらいの巣」ほか全7編を収録。味のある短・中編小説、歴史紀行とエッセイ、およびインタビューで構成。歴史ファン、池波ファン待望の一冊。
信州追分への旅行以来、なぜか円くんを避けている小雪ちゃん。大上円は、そんな彼女を訪ね、その鬱屈の意外な正体を知る。一方、ホタルは遺産相続問題で家を引き払うことになり、円くんとの“同居”を決意。小雪や伊福部らも加わって、“ユニー・ファミリー”が誕生しようとしていた。しかし、ホタルをつけ狙う敵の脅威はいよいよ間近に迫り、別離の予感が日一日とふくれあがる…大上円はホタルを守りきることができるのだろうか。
草津温泉に近い暮坂峠の木に吊された繭成金の富豪の死体。東京では地元選出の代議士の奇禍死-。殺人犯と間違われ事件に巻きこまれた若山牧水。「幾山河越えさり行かば-」の歌で知られる牧水は、短歌創作で鍛えた思索と、旅や短歌人脈で得た情報をもとに難事件に挑んだ。首尾やいかに。
時は2世紀半…世界がいまだ伝説の帳に包まれていたころ。劉備は早春の残雪の中で、伏し倒れていた娘を助ける。娘の名は劉桃花。この出会いが歴史の流れを大きく変えることになる。炎のように漢朝を呑み込み始めた新興宗教黄巾党に対して、敢然と立ち上がった男たち-劉備、関羽、張飛、曹操。そしてもう一人、劉桃花。戦いは熾烈を極め、劉備は謎の道士の呪詛によって命を落とす。怒りに燃えた桃花は龍気を発散し、死して悪霊と化した黄巾党の首領張角を倒す。そして劉備として、兄の志を継ぐことを決意する。ここに赤龍の血を引く桃花の数奇な運命の幕があく-。
ハワイを目前にして、超大型台風のため、針路を南西に転じた南雲艦隊。だがそこはキンメル大将率いる太平洋艦隊の演習海域だった。この日米の遭遇戦により、両艦隊合せて空母7、戦艦10、重巡10を失った結果、共に、すぐには次の作戦は起こせなくなった。このタイミングを見計って、英国の首相・チャーチルは、講和を提唱する。独ソ両軍の中東への南下作戦阻止に、連合国側に組込んだ日本軍を利用するつもりなのだ。かくて本間中将率いる第9軍と、伊藤中将率いる大和、武蔵を中心とした第1艦隊は中東を目ざした。
一瞬の隙に幼い娘が消えた-絶望の果てにバランスを失っていく妻と夫、危うい喪失感のうちに浮び上がる「もうひとつの記憶」…。倒錯的な美意識と痛烈な諷刺。イギリス文学界の奇才が、90年代の「暗黒郷」を幻想的に描く。ウィットブレッド賞受賞。
今をときめく梨園の御曹司と、向島花街に生きる売れっ子芸妓。芸の未熟をつかれて自らを見失い、姿を消した人気役者羽村市之助。一方、彼を案ずるお良の身には向島乗っ取りを狙う陰謀の影が迫り…。明治下町を舞台に人情の機微を描く力作長篇。
美食を愛し、色を好むラテン気質の愛犬ボーイは、また何時間でも蟻を眺めて過ごすデカルト流の内省的な性格も持つ。彼の目にうつった“人間、この不可思議なるもの”の物語。『南仏プロヴァンスの12か月』の著者がユーモアたっぷりに綴る“豊かな人生哲学とは”。
藤平潤子・智実-この母娘を神聖女子高で知らない者はいない。健康的な肢体、明晰な頭脳、活発な性格…学園のアイドル智実を、かねてから狙っている男がいた。鬼の生徒指導部長とは名ばかりの凌辱教師、長沼周兵だ。彼は特権を利して智実に近づきネチネチといたぶるものの、逆に失脚した。藤平母娘を諦めきれない長沼は、色事師の羽生と手を組み、二人を奴隷に堕とすべく、虎視眈々と計画を練り始めた…。
敗戦直後の未曽有の混乱状況は、中国大陸に農業技術普及のために渡り、各地で農民と接しながら力強く大地に根を張ろうとしていた一人の邦人を襲う。…変わり果てているであろう日本に引揚げるか、このまま大陸に残って骨を埋めるか、揺れる心情を描き切る。
陸奥の豪族安倍頼良(よりよし)の館では息子貞任(さだとう)の婚儀が盛大に始まった。平将門の乱が平定されてすでに100年を越え朝廷は蝦夷(えみし)たちを俘囚(ふしゅう)と悔るばかりだった。源平の武士たちの台頭を前に東北の地に黄金の楽土を築こうとした藤原氏の夢がこの夜大きな炎となって燃えあがる。著者渾身の大作歴史ロマン全5巻刊行開始!! (講談社文庫) 陸奥の豪族安倍頼良(よりよし)の館では息子貞任(さだとう)の婚儀が盛大に始まった。平将門の乱が平定されてすでに100年を越え朝廷は蝦夷(えみし)たちを俘囚(ふしゅう)と悔るばかりだった。源平の武士たちの台頭を前に東北の地に黄金の楽土を築こうとした藤原氏の夢がこの夜大きな炎となって燃えあがる。著者渾身の大作歴史ロマン全5巻刊行開始!!