1995年発売
憧れの女性に着せたい一心で華麗な振袖を精魂こめて縫い上げた職人、自分のために公金を横領した若者の釈放に奔走する遊女、逢瀬の翌日は必ず負ける力士の出世を願って身を引く芸者…ここに描かれるのは、私利を顧みず人間の情に生きた悲しく優しい「人情馬鹿」たちだ。美しい風俗と江戸っ子気質が色濃く残る大正期の東京下町を舞台に、人生の達人が共感と愛惜の思いをこめて綴った名作十二話。
幸福の条件とは?パーティーの帰りに、偶然出会った3人のワーキングガール、笙子と美保と絹。長所も短所もまるで違う3人がおりなす、恋と友情とサクセス。(解説・浅野加寿子)
モース主任警部にとって、他人が担当していた事件を途中から引き継ぐのは、あまり面白いことではなかった。その上、怨恨による殺人ときては、さして難しい事件とも思えなかった…。ところが、オックスフォード大学のもと研究員マクルーア博士が刺殺された事件は、モースが乗り出した途端、意想外の展開を見せ始めた。容疑者と目されていた博物館の係員ブルックスが行方不明となり、数週間後、刺殺体となって発見されたのだ。凶器は博物館から盗まれたアフリカのナイフだった。はたして奇妙な凶器の意味するものは何か。そして、第一の殺人との関連は。やがてブルックスに恨みを持つ三人の女が捜査線上に浮かび上がるが、彼女たちにはさすがのモースも頭を抱える鉄壁のアリバイがあった。アクロバティックな推理と華麗な謎解きで読者を魅了しつづける現代本格シリーズの最高峰、待望の最新作。
紀元前七千年、氷河時代のアリューシャン列島。大波に洗われ、火山のとどろきやまぬ極北の地。寄せくる運命に翻弄されながらも、少女は大自然の精霊たちにまもられて、ひたむきに生き。旅。戦い。誕生。死。壮大なスケールで描く愛と冒険の古代ロマン。平和な兵辺の村を「殺し屋」一族が襲った。たったひとり生き残った十三歳の「黒曜石」。愛するすべての者を失った少女は、ラッコの精霊に導かれ、大海原へ旅立つ。黒髪をなびかせながら進む彼女のゆくてに、やがてクジラの彫像をもつ謎の老人が…。
新たな戦いが間近かに迫っていた。危機を伝えるため、「黒曜石」は乳飲み子を連れて故郷の西の島へ向かう。そのとき、新天地を求めて一人の青年が海をわたってきた-。氷に閉ざされた青い世界に薄明かりが照り映えるころ、死者たちの霊をのせた風が「黒曜石」にささやく。いまこそ勇気を…。
男子禁制の秘密の花園、雨宮学園。そこに潜入していた工作員からの連絡が途切れた。一体何があったのか。恋人兼連絡役の由美が続いての潜入を俺に指示して来た。そこで待っていたのは、女子高で繰り広げられる様々な悦楽の光景だった。生徒同志のレズビアンだけでなく、青い果実と熟女のハードな誘惑。その中で隠された陰謀が、恐るべき結末に向かって進行して行く…。
身長158センチの尊のコンプレックスをビシバシ刺激してくれちゃう192センチの慶司。高校の入学式で初めて出会って以来、喧嘩ばかりのふたりだが、学校名物の大晦日の仮装パレードで、なんと「白雪姫と王子様」に扮することになってしまって。書き下ろし続編ほか一篇を同時収録。
一九四一年三月、太平洋戦争開戦を目前にして、日本海軍首脳は艦隊の編制に頭を悩ませていた。途中で駆逐艦が不足する恐れがある…。その不安を取り除くため、特別武装の駆逐艦四隻を新たに建造することになった。軍籍簿に記載されない“闇の艦隊”の誕生である。
百三十九歳の詐欺師が語る法螺話が、そのまま広大なオーストラリアの歴史につながる。『百年の孤独』オーストラリア版とも評された、ブリリアントな俊英のおかしなおかしな大長編。