1996年1月発売
静かな港町の造船所に謎の外国客船がやってくる。だが姿を現した巨大な船体には、もの悲しい雰囲気が漂っている。アスパシア・アン号。乗って来たアスパシア人とは、一体何者か。忘れられた国家の議会は、由緒正しくも、しかしデタラメに展開して…。生者と死者の交差する、現代の寓話。
いいなずけを恋するあまり、いちばん美しい死に方をさせずにはいられなかった古着屋の娘。生身の女よりも他人様の描いた美人画に惚れぬいたが故、その代筆に精魂傾ける絵師。呉服屋の醜怪な娘と、思わぬ密通を重ねる奉公人。-江戸という時代の日常に、息づいてあった不思議な「成り行き」を、気負わず飄々と、さりげない書きぶりで物語り、人間の真相を浮かびあがらせた佳篇3話。
歴史のなか、人は天命に従い生きるのみ。だが無数の夜に沈んでいった、愛の、怒りの、欲望の、幾つを史書は、伝えることができたのかー。始皇帝暗殺に失敗した青年が、逃亡中迷い込む幽境での不可思議な体験を描き、第15回歴史文学賞を受賞した表題作を始め、古代中国史の美姫、英雄たちのドラマを、微かな悲しみと共感を湛えた視線で描く佳品六篇。幻想的な美しさ溢れる歴史小説集。
いつかきっとめぐり逢える。この想いがつづく限りー。太古のモンゴル砂漠で暮らしていた男女が、他部族の襲撃により離れ離れになってしまった。伝説の赤い鹿の精霊に導かれた男は、最愛の妻を追う。そして18世紀の南太平洋の小島で、現代のアリゾナノ地底湖で…。一万年の時と空間を超え、愛を探しつづける壮大なファンタジー。第二回日本フアンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。
全寮制私立校ブレッドガー・チェンバーズは、良家の子女だけが入学を許されるイギリスの名門校だ。その閉ざされた世界の中で、一人の新入生が行方不明となり、全裸死体で発見された。捜査に乗り出すリンリー警部と相棒バーバラ。行く手を阻んだのは、いじめ、小児性愛、人種問題など、ありとあらゆる要素の絡み合った迷路と、絶対に告げ口をしないという“名誉の掟”だったー。
恋人に捨てられて教会で泣いていたダグレスの前に、16世紀イングランドの伯爵を名乗る奇妙な男が突然現れた。無実の罪で捕われた部屋に女の泣き声が聞こえ、気づくとここにいたのだという。このままでは処刑されてしまう彼の運命を変えるため、ダグレスのタフな愛の冒険が始まった。-400年の時を越えて永遠の絆を求めあうふたりの、せつなく優しいタイムスリップ・ラブ・ロマンス。
元禄七年、かつて「四代目高尾」として名声をはせていたお栄は、ある日、旦那からのお手当を届けてくれた六十八歳の下僕・平右衛門の一物が立派なことを知り、無理やり交合。以後愛欲に溺れる日々を続け、遂に手に手をとって出奔した。ところが消耗しはてた平右衛門が夜の用をなさなくなったから大変…。「名妓『四代目高尾』」ほか、それぞれの時代で悪女と呼ばれた女たちの生態を描いた傑作時代小説集。
時は17世紀。悠久の中国大陸を旅する美少女ふたりー年若き道士レイレイと、その双子の姉リンリン。そんなふたりが立ち寄った山奥の寒村には、血の臭いの混じった妖しい風が吹きすさんでいた。母の魂を救うべく立ち上がったレイレイとリンリンに、闇の魔人たちが迫りくる。ルーフー、ユン、そして、その先に待ち構える最強の敵とは一体…。哀しき宿命を背負ったふたりの闘いが、今まさに始まろうとしていたー。
連合国軍のシチリア上陸作戦は武蔵を旗艦とする第1艦隊を含む連合国艦艇の艦砲射撃から始まった。東海岸正面をモントゴメリー中将指揮の英第8軍が、それを支援する形でパットン中将指揮する米第7軍が中央部を担当し、山下中将指揮する第25軍は島の西部から山岳地域にかけてイタリア軍守備隊を撃破しながら、北部海岸の要衝パレルモを目指す。パレルモで米第7軍と合流した山下第25軍は、ドイツ軍中心の枢軸軍に苦戦している英第8軍を救援すべく、マレー戦で経験のある海上機動作戦を展開して…。
美女は自分の大切な日に柔肌を記念に撮りたがるらしい。脱サラしビデオスタジオを始めた野呂安彦に舞い込む話は、露出未亡人、失禁女優、変態令嬢、オナ女子大生たちの実演激写。ビデオライトに濡れ光る淫汗の谷間に野呂の股間も痛いほど恐張して、思わずズボンのファスナーに…。女たちのいやらしい性態をさらに淫らにさせる野呂の狂悦素股テクニック。
シャーロック・ホームズが巻き込まれた知られざる怪事件。それはケンブリッジ大学トリニティ・カレッジの哲学者、ラッセルからの電報で幕を開ける。 イダイナル ズノウ ヌスマレントス スグコラレタシ ホームズを待ち受けるのは、ヴィトゲンシュタイン、ケインズ、オカルトの帝王クロウリーなど希代の知性たち。ホームズ・パロディの怪作、ここに登場。
人体の多くの断片が、ほとんどフランス全土にわたって、さまざまな貨車の中から発見された。被害者は極度の肥満体の女性、そしてこれらの断片を運んだ列車は同一地点ーヴィオルヌの陸橋を通過していることが判明した。だが、いまだに頭部のみは発見されていない…。デュラスが実際の事件に取材し、十年の歳月をかけて結実させた「狂気」をめぐる凄絶な物語。