1996年1月15日発売
昭和十七年六月五日未明、南雲艦隊の108機の攻撃隊がミッドウェー島へ発進、迎え撃つ米軍機TBFアベンジャー、B-17「空の要塞」、SBDドーントレスらを蹴散らした。米空母三隻を撃沈して勝利に酔う攻撃隊の無線機に、氷山空母発見の報が飛びこむ。わずか二時間後、南雲艦隊の精鋭四空母は壊滅、聯合艦隊司令長官山本五十六は“敵艦隊攻撃C法”を発令した。「すべての戦力を結集し、氷山空母を撃つべし」。
在日朝鮮人・高泰人は、経営する印刷会社と自宅を新築したが、内情は火の車。友人、親戚、高利貸しと、雪だるまの借金手当に追われる日日。だが、派手な生活からも抜け出せない。世は不況。とはいえ会社を潰せば、金策してくれた恩人たちも、全員破滅だ。八方手を尽くしてやっと手にした二千万円だったが、これが破滅への序曲だったとは。分断の故国と日本の狭間で苦闘する、在日の若き群像を描く問題長篇。
世界中の女性に愛される女流作家の生涯。94歳をすぎてなお現役作家として活躍し、総刊行点数が600冊を越え、ダイアナ妃の義祖母で、イギリス王室にも親しい世界的な女流作家による自伝的回想。
私の名は秋津慎平、48歳。モデルガンの解体・組立てと“気楽さ”を何より愛している私立探偵だ。その依頼人は、49歳になる歯科技工士の夫を探してくれという。情報も少なく、この手の仕事は気が重い。が、同じ病院に勤める、男と同郷の独身看護婦が同じ頃休職しているのを知る。私はふたりの郷里へ飛んだ。そこは17年前忌わしい大火に襲われた酒田市だった。
敷島英二率いるシャンバラ教団による軍事クーデター勃発から一か月半。戦艦大和を総旗艦とする新設された日本連合艦隊の出撃態勢が整った。作戦は二つの枝作戦で構成されている。ひとつは、首都奪還作戦。もうひとつが、北海道上陸作戦。そして、ハワイ・マウイ島に設置された臨時日本政府の統合作戦本部で、ついに渡辺首相によって作戦実施が命令された。三陸沖をゆく潜水艦隊、その中心には、クーデター軍に乗っとられた最新鋭の攻撃型潜水艦「玄海01」の姉妹艦「玄海02」の姿があった。一方、世界最大の海域制圧艦として生まれ変わった大和は首都奪還をめざし、小笠原諸島沿いに北上する…。果たして、人類の未来を賭けた壮絶なる海戦を制するのは。
湘南で平凡に暮らす楠部大輔には、暗い過去があった。その、彼の過去にまつわる能力を利用しようと、執拗に接近してくる悪徳商事、麻薬シンジケート-。さらに、彼を愛する短大生、栄子をめぐり暴走族との死闘。いま、寡黙な男の闘争本能に火がついた。ダブサンの網鉄の匂いに、汗と血の匂いが混じって鼻を衝き、野獣の咆哮のごとくエンジンが雄叫びをあげる。そして男たちの壮絶な闘いは、海へ、空へ-。大輔の求めてきた、最大最高の武器が彼の手に入った。鉄拳と銃弾が入れ乱れ、炎と硝煙がバトルの舞台に渦を巻く。愛するもののために、不利な闘いに敢然と挑む大輔の運命は-。
地位と財産以外には関心のない高慢な妻エウニッセ野の百合にも似た気高く清純な恋人オリヴィア。人間らしく在りたい、人間らしく生きたい、という二人の女性の間でエウジェニオの人生は大きく揺れた…過ちに対する深い同情や、生に対する限りない愛情など時代や国籍を超越したテーマを心地よく謳いあげ、読者が持つ原始の潜在意識を意外な方向から揺さぶる感動の書。