1996年10月発売
屍の声-山間に響く私を呼ぶ声。祖母の意識は何処へ。猿祈願-秩父山稜の観音堂。老女はなにかを呟いた。残り火-風呂の焚き口で燃えあがる炎。憎しみの火が薪に絡みつく。盛夏の毒-炎天下。背後からふたりにしのびよるものは。雪蒲団-冬の新潟。隣家の窓から不思議なものが…。正月女-病み衰えていく体。夫と過ごす元旦はこれが最後なのか。
高知の下町に生れ育った喜和は、十五の歳に渡世人・岩伍に嫁いだ。芸妓紹介業を営み始めた夫は、商売にうちこみ家を顧みない。胸を病む長男と放縦な次男を抱え必死に生きる喜和。やがて岩伍が娘義太夫に生ませた綾子に深い愛をそそぐが…。大正から昭和戦前の高知を舞台に、強さと弱さを併せもつ女の哀切な半生を描き切る。作者自らの生家をモデルに、太宰治賞を受賞した名作。
過去と故郷を捨て、カカオ農園による一攫千金をねらって、理想の土地を目指す男たち…。森に棲む神々や妖怪たちの伝説と詩を奏で、理想郷ケセイロ・グランデの争奪が繰り広げられる。血塗られた森に彼らが見たものとは…。次期ノーベル賞の呼び声高い、ブラジルの人気作家による最高傑作!気鋭の訳者による本邦初の完訳。
男はアムステルダムの部屋でいつもどおり床に就いた。目覚めたのはリスボンのホテルの一室だった。「私は別の誰かになったのか?」これは、死が口を開けてから閉じようとするまでのたった「二秒間」の物語である。アリステイオン・ヨーロッパ文学賞受賞。
ここは何か変だわー知人に招かれ,黒人専用の高級リゾートを訪れた家政婦のブランチは、到着早早、不穏な空気を感じとった。はたしてその直前、皆に嫌われていた女性が不審な事故死を遂げていた事実が判明する。数日後、今度は滞在客の男性が謎の自殺を…タフな黒人家政婦ブランチが、鋭い観察眼で特権階級の黒人たちの実像を暴きだす。アンソニー賞、アガサ賞、マカヴィティ賞を受賞した『怯える屋敷』に続く第二弾。
落馬事故によって片腕となった元チャンピオン・ジョッキイ、シッド・ハレー。現在は競馬界専門の調査員となっていたが、放牧中の馬の脚を切断するという残忍な犯罪が連続して発生、かわいがっていたポニイを襲われた白血病の少女から、犯人を捜してほしいと依類される。だが、容疑者とした浮かび上がったのは、ハレー自身が犯人とは信じたくない人物だった。エリス・クイント-騎手時代のよきライヴァルで、私生活でもハレーの親友だった男。引退後は、テレビ・タレントとして国民的な人気を博し、誰からも愛される好男子だった。もちろんクイントは犯行を否定し、世間も彼が犯人とは信じなかった。かえって、恵まれているクイントを妬むあまり間違った告発をしたと、ハレーはマスコミからごうごうたる非難を浴びる。ところが、この執拗なマスコミの攻撃には、じつは裏があることが次第にあきらかになってくる…。『大穴』『利腕』につづき、不屈のヒーロー、シッド・ハレーが三度目の登場を飾る、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
パチンコのプリペードカード会社の重役が、新宿歌舞伎町のホステス達と訪れたマレーシア、ゲンティンの高級カジノで毒殺され、遺品から見なれぬカードが発見された。数日後新宿に根城をもつ暴力団組長が殺され、同様のカードが見つかった。通称レッドカードといわれるパチンコホール業者用に出まわっている変造カードだった。俗に三十兆円産業といわれ隆盛の一途をたどる業界の闇の部分を垣間見た三田一星は、昔気質のトップ屋橋本とともに巨大利権巣窟に挑むが…。業界を知り尽した著者が抉り出す、迫真のミステリー。
あの少女小説界に君臨した女王がビンボーのどん底に!もう、わたし、素っ裸!借金地獄の女たちへ!おんな一匹、筆一本。細腕繁盛期もアワに消え。何の因果か大借金。自殺もおねしょも乗り越えて、見せるぞ一発大逆転!-ド根性の超半生記。
夫は仕事ひと筋のビジネスマンで、いつも出張しがち。息子は高校卒業という巣立ちのときを控え、さびしい日々を送る主婦キャサリン。ある日、退屈しのぎにパソコン通信の交流の場に参加するが、交際を求める異性からの電子メールが洪水のようになだれ込む。虚々実々のメールに戸惑う彼女。やがて一人の男性に魅了され、官能の世界に入り込むが…。