1996年10月発売
わたしはなんとしても作家になりたい!創作意欲に燃える家事ロボット-キャル-が、様々な機能を付け足し、執筆内容もしだいに上達して、やがては主人の作家を凌駕する作品を書き上げたとき…作家志望のロボットの奮闘を、ブラックな笑いにつつんで見事に描きあげたロボット・シリーズの名作「キャル」。「リア王」のコンピュ・ドラマ化に成功し世界的な名声を得た演出家ウイラードのところに、ひとりの作家が訪れた。自分の作品をコンピュ・ドラマ化してほしいという。しかもひきかえに、十万グロボ・ドル相当のゴールド-黄金を支払おうというのだ!映像化を拒否するような内容の原作を、コンピュータを使っていかに立体映像化するか…息詰まるコンピュ・ドラマ作成現場を描きヒューゴー賞を受賞した「ゴールド-黄金-」。そのほか、作家志望の若者たちにSF小説作法を伝授する「SF作家になるためのヒント」、著者みずからがロボット・シリーズについて解説する「ロボット年代記」など、愉快でためになるエッセーの数々をあわせて収録した、アシモフ最後のヴァラエティ溢れるSF作品集。
ことばで生きるものの迷いと悲しみ。彼女のあとについて歩くような文章を書いてみたい、そんな意識が、すこしずつ私のなかに芽ばえ、かたちをとりはじめた…20世紀フランスを代表する文学者ユルスナールに魅せられた筆者が、作家の生きた軌跡と自らのそれを幾重にも交錯させて紡ぎだす待望の長編作品。
心はいつも朗らかながら経済観念まるでなしのランプリイ家は、何度目かの深刻な財政危機に瀕していた。頼みは裕福な親戚の侯爵ゲイブリエル伯父だけ。ところがこの侯爵、一家とは正反対の吝嗇で狷介な人物、その奥方は黒魔術に夢中のこれまた一癖ある女性。援助を求めた一家の楽観的希望もむなしく、交渉は決裂、侯爵はフラットをあとにした。ところが数分後、エレベーターの中で侯爵は、眼を金串でえぐられた無惨な死体となって発見された。わずかな空白の時間に犯行が可能だったのは誰か?はたしてこの愛すべき一家の中に冷酷非情な殺人者がいるのだろうか-?魅力的な英国貴族の人物造型と流麗な情景描写、巧みなトリックが融合したマーシュの代表作。
高校一年の宮川嶺は二つ上の従兄で同じ高校の生徒会副会長でもある若木圭一と南国の無人島へ。そこで嶺は、ずっと好きだった圭一をモノにするつもりなのだ。しかし嶺より何枚も上手の圭一は「抱かれるのは嶺の方」と意思表示。逆の立場になるつもりだった嶺は「嘘だろう!?」と叫び、更に二人の関係を邪魔するべく生徒会の面々が島にやってきて…。圭一&嶺のその後のエピソードを書き下ろしで加え、天花寺悠、待望の新登場。
未知の惑星ジオ。調査船の一員アスールは、探査中、砂嵐に巻き込まれる。彼を助けたのは、美しい異星人・トゥリアだった。触れ合うことで互いの気持ちを伝えられることに気づいた二人は-。
奇怪な連続殺人は、仁木雄太郎と悦子の学生兄妹が下宿したばかりの病院で発生した。謎の電話、秘密の抜け穴、闇にきらめく毒塗りナイフ…。事件ごとに現われるペットの黒猫は何を目撃したのか?急造名探偵の二人は次第に真相に迫っていく。鮮やかなトリックと論理的な推理、明快な文体で日本のクリスティ誕生と絶賛され、空前のミステリー・ブームを巻き起こした江戸川乱歩賞屈指の傑作。
関ケ原に向けて満を持した二十五万の兵力が動きはじめる頃、細川幽斎は三成方に居城を囲まれ、ひたすら籠城戦を耐えていた。我れに秘策あり。しかし糧秣弾薬には限りがあった。来る。必ず使者は来る。古今伝授はその時のためにこそあった。そして決定的な切札、それこそが関ケ原連判状。事が成らねば天下は家康の、あるいは豊臣のなすがままとなるは必定。幽斎の決戦は史上最大の戦闘の前に始まっていた…。
家族のきずな、生きることの喜びと悲しみを心あたたまる筆致で描いて日本中に静かな感動を呼び起こした『豚の死なない日』に、待望の続編登場!父の死にめげず、家族をささえて健気に働くロバート。だが凶作とアメリカ全土に及ぶ恐慌の波がヴァーモントを襲い、一家は苦況に立たされる…。
遠い昔、はるか銀河の彼方で…邪悪なる銀河帝国の圧政に耐えかね、立ち上がった旧共和国の人々は反乱同盟軍と呼ばれていた。その若きリーダーの一人、プリンセス・レイアは銀河の自由を取り戻すべく、帝国軍の最終兵器の機密を携え、専用の銀河巡航艇で一路故郷オルデランへと向かっていた。しかし、帝国軍の追撃を逃れることができず、彼女は悪の化身ダース・ヴェイダーに捕えられてしまった。しかし彼女がメッセージを託したR2・D2とC・3POという2体のドロイドは、奇跡的にも辺境の惑星タトゥイーンに住むルーク・スカイウォーカーと出会った。これを境にルークは銀河規模の戦いに巻き込まれるのだった-。
広尾の豪華マンションに住み、女と酒とギャンブルとスポーツでその限りない時間を費す六本木の帝王・沢辺が、突如姿を消した。失踪人調査のプロで、長年の悪友佐久間公は、彼の妹からの依頼を受け調査を開始した。“沢辺にはこの街から消える理由など何もないはずだ…”失踪の直前まで行動を伴にしていた公は、彼の不可解な行動に疑問を持ちつつプロのプライドをかけて解明を急ぐが…!?大沢文学の原点とも言うべき長編ハードボイルド、待望のシリーズ第三弾。
シカゴ郊外の町パクストン。日本企業クラタが買収したオルネイ社工場は、従業員や市民との間に様々な軋轢を生みだしていた。神話ともて囃された“日本的経営”も差別とした映らない。脅迫状。不審火。姿なき抗議がオルネイ社を襲う。そして、子供達が心待ちにしていたハロウィンの日。工場に爆弾が仕掛けられたという騒ぎの後、日本人の少年が消えた!誘拐か?事故か?それとも!?オルネイ社を調査にきた経営コンサルタント・田畑は、この町の深き亀裂を目のあたりにしていくー。日本経済の崩壊を暗示した戦慄のハードサスペンス。
春が来ないのなら、夢でも見るしかない…。クリムトの名画に寄せて描く哀しい恋の伝説。カラー図版多数収録!古し土蔵のなかで、世紀末ウィーンの画家クリムトの贋絵を描いて暮らす「私」を時折訪ねてくる不思議な女キキ。そのキキが描く肖像画には秘密があり、やがてひとつの「事件」が…。やって来ない「春」を待ち続ける登場人物たちの静かで哀しい日々を、クリムトの絵画と懐かしい映画に寄せて綴る、爛熟の香り高い長編。
90年代最後の、そして最高の、ピュアな恋愛小説!ニューヨークで暮らす弁護士の夫と、雑誌編集長の妻、そして13歳のひとり娘。幸福を絵に描いたような家に、ある日突然、不幸が襲いかかる。郊外の別荘で乗馬に出かけた娘が、大型トレーラーに轢かれる大事故に遭う。娘は片足切断、馬は手のつけられない半狂乱の状態に。妻は、深く傷ついた娘と馬を立ち直らせようと手を尽くすうちに、野生馬や暴れ馬を手なずける特別な能力を持ったカウボーイたち、すなわちホース・ウィスパラーの存在を知る。実在するホース・ウィスパラー、運命の鍵を握る男を求めて、妻は遙かなモンタナの、大自然の中へと旅立った。
栗村夏樹は都内の短大生で剣道三段の腕前。ひょんなことから横浜の探偵事務所でアルバイトをするはめになった夏樹は、デパート社長の令嬢・久住あずさの尾行を命じられた。直後、その少女の危機を救った夏樹は、久住家にまつわる不可解な事件の渦の中に巻き込まれ…。あずさの父は五年前に「光る地獄蝶を見た」という奇妙な遺書を残し、自殺を遂げていたのだ。謎を探ろうとする夏樹の前に、新たな連続殺人事件が立ちはだかる。二転三転の末、最後に明らかにされる衝撃的な真相とは?“夏樹”シリーズ第二弾。
リオで暮す妹ルシのもとへブエノスアイレスからやってきた姉ニディア。片やロマンチスト、片やリアリストの二人は隣りの女性やハンサムなガードマンをめぐって噂話に花を咲かせる。だが、妹は息子の転勤にともないスイスへ移住、南国を偲びつつその地で病死する。周囲のはからいで妹の死を知らされない姉は、リオで待ち続け、妹に宛てて手紙を送り続ける。ところが、彼女は信頼していたガードマンに裏切られ、傷心のままブエノスアイレスに戻るのだが…。