1996年10月発売
五歳で母を、十歳で父を失い、否応なく戦国の荒波に投げ出された幼き日々、妻と二人三脚で歩む壮年期、大合戦を勝ち抜き、覇者となった晩年…梟雄、策謀家と呼ばれる元就を全く新しい視点で捉えなおした意欲作。
「人の斬りようを考えよ」という師・伊藤弥五郎の言葉一途に体で剣を学ぶ小野善鬼。当然、敵も多くなる。今も、彼に殺された飯田勘解由左衛門の門弟たちが待ち伏せている。善鬼は走りながら人数を数えてみた。21人いた。斬る相手を選んでいる暇はない。敵はみな斬り捨てるのだ…。若き頃の自分と同じ激しい太刀節を善鬼にみる弥五郎。その師との葛藤の中で磨く善鬼の剣。
十五歳のとき、私は娼婦だった。売春宿のおかみさんは私の実の母であり、ただ独りのお客は彼女の情夫で、私の育ての父だった……。自由を求めて旅立つ多感な少女を描くベストセラー。
地震で津波が発生し、警報が遅れる事故が起こった。地震火山研究官の江坂は、ミスをした森本を鹿児島に訪ねるが、彼はすでに退職し姿を消していた。同じ頃、森本と同窓の大学教授も、地震の観測データを持ったまま、行方不明に。そこには国家的陰謀が渦巻いていた!新進気鋭の作家が放つ、長編サスペンス。
植民百周年にわく火星マルスシティ。荒事専門のトラブルバスター、鈴木さやかは、ある女性から、昔の恋人を探して欲しい、と依頼される。尋ね人の名は、チュチェ・フェレイラ。前の晩、天才少女歌手リィ・ドリスを誘拐しようとして、さやかに捕まった間抜けな悪党その人だった!同じ頃、当のチュチェも、栗色の髪の謎の少女から仕事の依頼を受けていた。内容はずばり殺人。しかも断ることができないというーさやかはなんとかチュチェを探し出すが…。老若男女巻き込んでの大逃走劇。
永井荷風が『〓東綺譚』の続編として構想しながら、ついに完成しなかった幻の作品『冬扇記』を再現。明治・大正・昭和の吉原遊廓を舞台に、全盛を極めた花魁がおちぶれ、時代にとり残され乞食となってさまよう様を「わたくし」の青春の残骸として思い描く、荷風ファン必読の初めての試み。
本能寺に散った織田信長。大返しを果たした秀吉は明智光秀を山崎で撃破、続く賤ヶ岳の合戦で柴田勝家をも葬り去る。天正十四年、尾張中村のサルはついに関白・豊臣秀吉となった。しかし、天下統一を遂げた瞬間から戦国バブルの崩壊が始まる。「夢のまた夢」…夢に向かって走り続け、ついに夢を超えた男は、この言葉を残して逝った。『新・太閤記』最終巻。
社交界のスノビズムを嫌悪し、片田舎の城館に若くして隠棲するトニィ。平穏な日々をおくる彼はしかし、美しい妻の心が次第に自分から離れて行くのを知らなかった…。息子の死をきっかけに知る妻の情事、館を去る彼女、離婚の手続きのために今度は彼が演じる浮気の芝居ー物語は急展開し、トニィはアマゾンの奥地へ向う探検行へ。そして熱病にかかり死線をさまよった彼を待ち受けていたのは、奇怪なディケンズ狂の老人だった…。「美しい郷愁の世界」と醜い現実とのはざまで、心ならずも悲しきファルスを演じるはめになる主人公に、個性ゆたかな脇役たちを配し、緻密な文体で描いた、イーヴリン・ウォーの最高傑作を、清新な翻訳でおくる。アメリカの雑誌連載時の「もうひとつの結末」を付した。
この世の中のことは全て本当のことなのか?僕の人差し指サイズの小さな王様。王様の世界では大きく生まれて成長するにつれ小さくなり、しまいには見えなくなってしまうという。長きにわたって愛されてきた30万部突破のドイツのベストセラー小説。「いま、大人が読むべき絵本」と柳田邦男氏推薦。 長きにわたって愛されてきた30万部突破のドイツのベストセラー小説。 どうやら王様の世界では子ども時代が人生の終わりにあるらしい。僕らのところとは違って……。 おまえたちは、はじめにすべての可能性を与えられているのに、毎日、それが少しずつ奪われて縮んでいくのだ。それに、幼いうちは、おまえたちは、知っていることが少ないかわりに、想像の世界がやたら大きいだろう。どうしてランプに明かりがつくのか、テレビの画面に映像がうつるのか、理屈がわからないから、想像しなくてはならなかった。 「いま、大人が読むべき絵本」と柳田邦男氏推薦!累計30万部突破のロングセラー小説。
図書館を訪れた「私」は、いつの間にか別世界に迷い込み、探偵天下一になっていた。次々起こる怪事件。だが何かがおかしい。じつはそこは、「本格推理」という概念の存在しない街だったのだ。この街を作った者の正体は? そして街にかけられた呪いとは何なのか。『名探偵の掟』の主人公が長編で再登場。
真犯人は、裁判所あるいは警察の内部にいるのか。それともラーラ判事の下した判決に恨みをもつ者の仕業か!?担当刑事リッカーソンのハードな捜査が続く。逆転また逆転、ラスト100ページの息づまる展開!SM売春、幼児虐待…正義が報われることのない病めるアメリカの真実に迫る興奮の全米ベストセラー。
虚栄の都・ハリウッドに血でただれた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優・松崎レオナの主演映画『サロメ』の撮影が行われる死海の「塩の宮殿」でも惨劇は繰り返された。甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向かう。渾身のミステリー巨編が新たな地平を開く。 虚栄の都・ハリウッドに血で爛(ただ)れた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優レオナ松崎が主演の映画『サロメ』の撮影が行われる水の砂漠・死海でも惨劇は繰り返され、甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向う。ここにミステリの新たな地平が開かれた。 プロローグ 1 長い前奏 プロローグ 2 死海の殺人 エピローグ
親友が顔を吹き飛ばされて殺された!見知らぬ女から電話がかかった後だった。その電話はダンに青春の一コマを思い出させたが、殺されるような原因には心当りがない。だが、もう一人の親友も自分も命を狙われるに及んで、ダンは電話の女の影を追い始める…。人間の恐怖と不安を鋭く描く傑作サスペンス。
夫の修理と死に別れ寡婦となり、鶴ヶ城へ行けぬまま官軍兵士の暴虐にさらされた神保雪子を描く表題作。若松郊外涙橋の戦いに散った絶世の美女・中野竹子を描く『涙橋まで』。女だてらに銃を持ち籠城戦で戦った山本八重を描く『残す月影』。一八六八年の会津を舞台に織りなされる各々の人間模様。男と女の滅びの美を丹念な史実の発掘から見事に描きだす珠玉の六編。
そのテラナーはいっさいの記憶を失ったまま、衛星タイタンの秘密ステーションに幽閉されていた。テラナーのほかにそこにいる生物は、メルコシュと名乗るオプロン人のミュータントだけ。しかもメルコシュは、隙あらばテラナーを殺そうと狙っていたのだ!たがいに牽制しあいながらも、ふたりは共通の目的である自由を求めてステーションを脱出した。だが、地表に出たテラナーたちの前に、謎の巨大宇宙船が出現した…。
降旗少尉以下、3名の首都圏情報防衛軍団兵士が遂行する作戦名は“マタタビ”作戦。首相の行方不明になった愛猫を捜し出せ、というものだ。ただしその猫は、脳にひじょうに貴重な情報が入力された、人類の存亡を決する猫なのだ。3名はなんとか目標の猫を発見したものの、コンタクトしようとして、失敗。しかも、本部との通信は不能となってしまった。現在地不明のここは、すでに死後の世界なのか?俊英が描くSF長篇。
パリの街角にある小さなレストラン『ル・プチ・マルグリィ』が今宵かぎりで閉店する。三十年近くにわたって美味しい料理を作り、温かく客をもてなしてきたオーナー・シェフ夫妻は、二十代の息子とその友人たちを招き、お別れの晩餐会を開く。アペリティフからデザートまで、素敵な料理のフルコースと楽しいおしゃべりが進むなか、皆に愛された店の歴史が、夫妻の秘密が、若い世代の様々な恋や人間模様が浮かび上がる…。