1996年2月発売
夫の最高裁判事を殺害した容疑で突如、起訴された美貌の検事補アビー。彼女の弁護に立つのは、連戦連勝の辣腕弁護士レイノルズ。そして検察側の証人として出廷するのはかつてアビーに訴追され、死刑判決を受けた卑劣な殺人犯ディームズ。アビーに圧倒的に不利な状況のなか、レイノルズに秘策はあるのか。やがて激しい法廷戦の末、驚愕の真実が-裏あり、謎あり、仕掛けあり、読み始めたら止まらない『黒い薔薇』につづくノンストップ・サスペンス。
ルネッサンスの都、十五世紀フィオレンツァ。ヴェロッキオ工房にヴェネツィア政府からの依頼が舞い込んだ-それさえ運命だったのだろうか。運河と、橋と。石畳の街でアンジェロは出会う。愛する少女に、そして-彼に。少女のために初めて己れの力を認め、天使でいてもいいと思った。だがその命を握る者がいる-彼の魂が共に堕ちよとアンジェロを呼ぶ。「私は、君さ」と微笑う。その意味は、そして天使の恋が呼び醒ますのは。いま、天使という存在が地上に生まれてきたことの意味が明らかになる-入魂の超大作。
天使の力をもってエウジェニアを癒したアンジェロだったが、その力は心にまでは及ばなかった。ケルヴィーノに捕われたアンジェロを生に繋ぎとめるのは、エウジェニアへの想いだけ。自らの心を肉体と切り離し、頑なに彼を拒む。だがケルヴィーノは同胞を求めていた、恋うように切望していた-少なくとも五百年の昔には神の従僕であった、堕天使は。「愛せないのなら、いっそ憎むがいい」-天使たちは痛みを孕んで天空に闘う。魂の孤独は癒されることはないのか。奇蹟は救いをもたらすか。超傑作、クライマックス。
タバコ業界のスポークスマンのニックことニコラス・ネイラーは、吹き荒れる嫌煙運動の嵐に立ち向かい、健康問題シンポジウムで、人気TVトークショーで、愛煙家の自由と権利を護るべく、日夜、論戦を繰り広げていた。チーズは血管を詰まらせる、それなのにどうしてタバコだけが責められるんだ。クッキー入りアイスクリームなんていう恐るべき食べ物があるというのに、タバコだけがやりだまにあげられるのはなぜ、なぜなんだ。タバコには、パーキンソン病の発症を遅らせる効能があるというではないか。それにですよ、タバコ無しのハンフリー・ボガートなんて、考えられますかあなた。愛煙家の味方ニックは戦っていた。アルコール産業のスポークスウーマンと、銃関係団体のスポークスマンとの三人で、自らを「死の商人」と称し、集まってはグチを言い合い、怪気炎を上げ、ストレスを解消しつつ…。彼はこの仕事が好きだった。それより何より、彼には家のローンがあった。ニックはしゃべりつづける。まるでナチスででもあるかのように人々に糾弾されようと、嫌煙活動家に殺されかけようと。そうなのだ、彼は拉致され、皮膚から少量ずつニコチンを吸収させるという、ニコチン中毒治療用のニコチン・パッチを全身に貼られ本当に殺されかけたのだ。FBIまで巻き込んでの、吸ったもんだの大騒動。腐敗した政治、メディア戦略、パワーゲーム…ワシントンの構造を痛烈に徹底的に揶揄する抱腹絶倒のタバコ小説。愛煙派も嫌煙派も絶対必読。