1996年4月発売
女性検屍局長ケイ・スカーペッタ難事件に挑む。バージニアの州都リッチモンドに荒れ狂う連続殺人。被害者の女性たちは残虐な姿で辱められ、締め殺されていた。被害者のあいだに関連はなく、捜査は難航、全市は震え上がっていた。美人検屍官スカーペッタは、最新の技術を駆使して捜査を続けるが…。ミステリー界の女王衝撃のデビュー作。超ベストセラー、検屍官シリーズ第1作。
浅見家では正月にカルタ会が催される。その席で浅見光彦はカルタ界の女王朝倉理絵に辛勝した。勝敗を分けたのは理絵が執着した一枚の札。理由は彼女の父親が三年前に“末の松山”の松の下で殺されたからだった。しかも事件は未解決のままで、父の手帳に書き込まれた「白浪、松山を越ゆ」が唯一の手がかりだという。真相を追って浅見は宮城県へ赴くが、そこでは十二年前にも歌枕にまつわる殺人事件が発生していた。古歌に封印された謎を手操って名探偵浅見光彦がふたつの難事件に挑む。旅情ミステリー。
賀茂由香里は、人の強い感情を読みとることができるエンパスだった。その能力を活かして阪神大震災後、ボランティアで被災者の心のケアをしていた彼女は、西宮の病院に長期入院中の森谷千尋という少女に会う。由香里は、千尋の中に複数の人格が同居しているのを目のあたりにする。このあどけない少女が多重人格障害であることに胸を痛めつつ、しだいにうちとけて幾つかの人格と言葉を交わす由香里。だがやがて、十三番目の人格「ISOLA」の出現に、彼女は身も凍る思いがした。第三回日本ホラー小説大賞長編賞佳作。
大化の改新のあと政権を保持する兄天智天皇の都で、次第に疎外される皇太弟大海人皇子。悲運のなかで大海人の胸にたぎる想いは何か。額田王との灼熱の恋、鬱勃たる野心。古代日本を震撼させた未曾有の大乱の全貌を雄渾な筆致で活写する小説壬申の乱。吉川英治文学賞受賞作。
鉄剣を磨き、馬を養って時に耐える大海人皇子はついに立った。東国から怒涛のような大軍が原野を埋めて近江の都に迫り、各地で朝廷軍との戦いがはじまる。激動の大乱のなかの息詰まる人間ドラマの数々。歴史学をふまえて錯綜する時代の動きをダイナミックにとらえた長篇。
一緒に暮らさないか、キンケイドはそう言ってくれる。しかしアリーンは迷っていた。もちろん愛してはいるけど…そんなある日、判事一家が惨殺される事件が発生。目撃者は一人の少女。だがショックからか口がきけない。続いて第二の殺人が。手口は同じだが被害者に共通項がない。やがて彼女のもとに、殺人予告めいた詩が送りつけられてきた。なぜ、わたしに…。新シリーズ第二弾。
それはオコナー上院議員にとって、再選をかけた選挙戦のさなかの出来事だった。雑誌記者である愛人が自宅アパートで殺害され、しかも自らがその第一発見者となる。死亡推定時刻、折悪しくある人物と密かに接触していたために、アリバイは成立しなかった…。弁護士を経て政界に入り、つねに前進をつづけてきた議員。事件は思いがけず、人生の綻びを浮かびあがらせることになる。
毎朝、今日こそ逮捕されるという思いで目が覚める。選挙戦がいかに苛酷であろうとも、絶えず心をよぎる。彼女は本当に愛してくれていただろうか。殺人の真相を掴みたい上院議員は、やがて自分とその周囲の人間を見つめ直すことこそ避けて通れない道であると気づく。見えていなかった過去、目を背けていた現実。単なる政治家の枠を超えて理想を追い求める男を巧みに描いた物語。
ガンプからあなたへ贈る心にしみる人生のメッセージ。全世界で社会現象になった90年代のヒーロ、フォレスト・ガンプ。成長したリトル・フォレストを見つめる父の愛。忘れられないジェニーとの魂の交流。
異形異端の怪剣士・丹下左膳は、今宵も血刀を振るって大江戸の闇に哄笑する。二刀はふたたび仇敵同士の手に引き裂かれたのだ。左膳に与するは奥州中村六万石、栄三郎に力を貸すのは剣侠・蒲生泰軒。血腥い魔風を孕む刀争奪の死闘に、大岡越前の裁きや如何に。『新版大岡政談』として発表されるや、強烈な虚無的イメージで丹下左膳を一躍不滅のヒーローにした、大衆小説屈指の雄編、佳境へ。
秘峰八ケ嶽を舞台に、姫をめぐる兄と弟の愛の確執と惨酷な結末が、果てもなく続く一族の血塗られた歴史の発端だった。憎悪は憎悪を呼び、復讐は復讐を生む。山窩族と水狐族に分れて争う末裔たちの呪詛と怨嗟の叫びは、時空を越え、いま大江戸の夜に凄然と谺する。近代劇作の手法もとりこんだ卓抜な構想力と無類の空想力で妖美幻想の世界を拓き、国枝三大伝奇長編の一つと評される豊饒な成果。
瀕死の状態になってゆく美少女を救うために、ともに故郷へ帰り、南方の医学を学ぼうと決意する顔回。物狂いの様相を呈する費の奇襲攻撃に驚愕する孔子。顔回の動揺と孔子の活躍。古代中国のシャーマンたち、孔子とその弟子たちを鮮やかに描く、超大作歴史小説。中島敦記念賞受賞。
中学生のボクは、成績優秀でいわゆる優等生だった。クラスのいじめられっ子を救済したこともある。ところが、一カ月の入院生活がボクに気持ちの変化をもたらした。退院すると、かつてのいじめられっ子を、今度はこのボクがいじめるようになってしまったのだ…。少年の日常を通して、いじめ問題を、いじめる側から描いて警鐘を鳴らす現代教養小説。
待望の春の甲子園出場決定。倉田高校2年・桂木葉子の父親は、24年前エースとして甲子園に出場。そして今、母校の監督として再びその土を踏もうとしていた。しかし、野球部員が暴行事件に巻き込まれ、出場停止の瀬戸際に。葉子は真相究明に乗り出したが、その矢先、事件の鍵を握る男が殺された…。本格推理の名手が描く、傑作学園ミステリー。
京南大学大藤教授邸の新年パーティで惨劇が起きた。殺されたのは、現代の“和泉式部”と称される野川いずみ。同席した“清少納言”藤原彰子、“紫式部”嵯峨紫とともに助教授の椅子を争っていた。さらに同大学の有力教授が密室内で毒殺…。大学の人事をめぐる暗闘が、連続殺人の動機。『枕草子』を手に、キャサリンと浜口一郎の名コンビの、華麗な推理が冴える。
薬師寺小雪は才媛の誉れ高い29歳のピアノ教師。自宅のある神戸のニュータウンで殺人事件が。犯行当時、鳴っていたチャルメラの音色がいつもと違うことに気づいた小雪は…(「哀しきチャルメラ」)。そしてあの大震災。次々と起こる事件に、小雪は持ち前の向こう気の強さと正義感、行動力で立ち向かう。神戸在住の著者が自らの体験も投影させた異色ミステリー。
大学紛争後の荒廃したキャンパスで、英文学科教授ケイト・ファンスラーと地方検事補リード・アマーストの婚約披露パーティーが開かれた。その席上、社会人学部の廃止を強硬に主張していたカドリップ教授が倒れ、エレベータの不可解な事故も手伝って教授は息をひきとった。だが、調査がすすむにつれて、「事故」は次第に殺人の様相を帯びてくる。そして、あらゆる証拠があからさまにケイトの方を指さしている…。プロフェッサー探偵ケイトの人気を決定づけた魅力編。