1996年発売
うつろな心を持てあますバークのもとに、昔のムショ仲間ヴァージルの妻が訪ねてきた。彼女が預かっていた少年が連続狙撃犯の容疑をかけられ、ヴァージルとともに逃亡したという。旧友の求めに応じて、バークはインディアナへと急いだ。そこで出会った謎めいた美女ブロッサムの助けを借り、バークは真犯人を誘いだす奇策を練ることになったのだが…少年の自立と家族の絆をモチーフに、シリーズに新境地をひらく注目作。
年老いた脱獄囚がアパラチア山脈近くの故郷へ向かっていた。保安官のスペンサー、保安官助手志願のマーサらが追い始めるが、その矢先、奇怪な事件が続発する。折りしも、二百年前の事件を調べるため、若い男が山道に踏み入るが…いくつもの運命が絡み合い、やがて緊迫の結末へ。アンソニー賞、アガサ賞、マカヴィティ賞の最優秀長篇賞を受賞した注目作。
クイン・クリアリーは医師になりたかった。しかし、家が裕福ではない彼女にとって夢がかなう唯一の道は、イングラム医科大学に合格することだった。イングラムは製薬会社関連の財団が設立した大学で、全米から選ばれた優秀な学生が、無料で教育を受けることができた。補欠ですべりこんだクインは、有頂天で新生活に飛びこんでいく。だが、彼女は奇妙なことに気づきはじめた。クラスメイトたちが、医学倫理を受け持つオールストン教授の理論とまったく同じ-将来、限りある医療資源を分配するのに、その人間の社会的価値によって差をつけるべきだという-考え方をするようになってきたのだ。正義感の強いクインは反発するが、彼女と同意見だったボーイフレンドのティムまで、オールストンの思考様式に染まりはじめた。クイン以外に、その考え方に疑問を覚える者がひとりもいないのはなぜか。やがて、寄宿舎のティムの部屋で盗聴器が発見され、彼の姿が消えた。いたれりつくせりの医学部のキャンパスをひそかにおおう悪夢-屈指のストーリー・テラーによる医学サスペンス。
1961年のロサンゼルス。ホワイトハウスには若きジョン・F.ケネディ大統領がいて、南部ではマーティン・ルーサー・キング牧師を指導者にして黒人解放運動が燃えさかっていた。ブラック・アメリカの新しい夜明けが叫ばれるなかで、黒人の私立探偵イージー・ローリンズは不動産投資に失敗し、破産状態に近かった。親友マウスも五年の刑期を終えて出所していた。四十一歳になったイージーにとって、この五年は悲惨な日々だった。親友が酒場の路地裏で人を撃ち殺すところを目撃した彼は、悪夢に悩まされた。しかも、可愛い子供がふたり残ったものの、妻のレジーナは自分のもとを去っていた。そんな彼のもとに、人捜しの依頼がもちこまれた。捜す相手はなんと“ブラック・ベティ”ことエリザベス・イーディ。イージーがテキサス州ヒューストンの少年時代に憧れ、はじめて異性にめざめさせられた年上の女であった。ベヴァリーヒルズの大富豪の家で働いていた彼女の行方を捜すことは簡単に思われたが、事は連続殺人へと発展していき…。セピア色のロサンゼルスを舞台に黒人の私立探偵イージー・ローリンズの活躍を描く人気ハードボイルド・シリーズ、『ブルー・ドレスの女』『赤い罠』『ホワイト・バタフライ』に続く第四弾。
ラッド・ポリス-犯罪者たちからは“死刑執行警察”と呼ばれて恐れられる超過激警察だ。法のもとでは裁けない巨悪に対抗するために秘密裏に警察内部に組織され、その存在は一部の者しか知らない。片桐達哉はラッド・ポリスのリーダーとしておとり捜査のために麻薬売人と接触していた。麻薬、武器売買の頂点には加賀ファミリーが君臨していた。末端組織をつぶした片桐の次の仕事は、ファミリーの情報を持ち逃げした公認会計士の身柄保護だった。敵は腕の立つ殺戮師を放ってきた。暗黒組織との壮絶な戦いが始まった。
「これが-桃花源か」白戴星は息を呑んだ。人の背丈よりも少し高いぐらいの木が幾本も幾本も、見渡すかぎり植わっていた。「桃」。ただ、その木には花も葉もなく、枯れた枝がむなしく空に突き出ているばかり。土地は、乾ききってひびもはしっている…今上帝の世継ぎ白戴星をつけ狙う殷玉堂、東京の双剣舞の芸人・陶宝春、落第挙人の包希仁たちの運命と彼らを追跡する劉皇后と宦官雷允恭一派の謀略をのせて、伝説の理想郷を前に彼らが目にしたものは。第一作より三年の歳月を経て遂に大団円を迎える井上祐美子の決定版。
ミッドウェー作戦で大敗した日本海軍は、南洋海域を内南洋を担当する第四艦隊と外南洋を担当する第八艦隊に分割した。ふがいない第四艦隊を休眠させ、真新しい第八艦隊に暴れさせる。それが軍令部の狙いだった。第八艦隊司令長官には、三川軍一中将が任ぜられた。三川は人格円満、戦略や戦術にかけても職人肌の実戦家で、軍令部の作戦にも忠実だった。その第八艦隊に出撃命令がくだった。ガダルカナル島に設営した日本軍の飛行場を米機動部隊が急襲したからだ。ここに海軍史上空前の海戦の火蓋が切っておとされた。
江戸始まって以来の大奇人にして博識無双の平賀源内先生。謎に包まれた事件に手も足も出ない神田の御用聞・出っ尻伝兵衛のたっての頼みで、おもむろに解決に乗り出すが、さて結末やいかに。オランダ渡りの知識や奇想天外の推理で、事件の核心に迫る源内先生の痛快無類の捕物帳、初の文庫化。
エースパイロットを夢見るイサム。自らが持つ“血の恐怖”におびえながらも懸命に生きるガルド。学園の歌姫から、宇宙のアイドルへの階段をのぼり始めたミュン。3人の男女を中心に織りなす青春群像を、みずみずしいタッチで描いた『マクロス』シリーズ異色作がノベル版で登場。
加賀百万石。藩祖前田利家は没し、利長が家督を継いでいた。最大の大名勢力である前田家を陥れるための幕府の陰謀は秀忠の次女の輿入れで始まる。幕府はお付人という形で公然と五百名の手兵を加賀城下に送り込んだ。利長の居城が付け火に遭い、混乱に乗じて数名の剣客が利長を襲う。-ついに利長は立ち上がった。百万石に命を賭けて徳川の野望に立ち向かった男を描く時代長編。
都会暮らしからレイドバックして、大阪西北端の山林に暮らす竜門卓。彼の生業は行方不明になった猟犬を探すことだった。そんな彼のところへ失踪した盲導犬の行方を突き止める仕事が舞い込んだ。依頼者は名家の令嬢。目の不自由な彼女にとって唯一の心の支えだった犬だ…感動的なラストシーンが用意された表題作はじめ、“男の贈り物”をテーマにした五編を収める短編小説集。
199X年度「ノーベル賞」には微かな腐臭がしたーイギリス医学界の重鎮が受賞した「医学・生理学賞」の周辺に不自然な死が多すぎるのだ。故あって、恩師の死因を探っていた青使医師・津田は、賞を巡る“論文剽窃”の疑惑と“見えざる凶器”の存在を知る。しかし真相を握る医学研究者は重度のアルコール依存症に陥っており…。現役医師にして山本賞作家が放つ、傑作サスペンス。
夏期合宿のため双葉山を訪れた親睦団体「TCメンバーズ」の一行。人里離れた山中での楽しいサマーキャンプは、突如出現した殺人鬼によって、阿鼻叫喚の地獄と化した。次々と殺されてゆく仲間たち…手足が切断され、眼球が抉りだされ、生首は宙を舞う。血塗れの殺戮はいつまで続くのか。殺人鬼の正体は。驚愕の大トリックが仕掛けられた、史上初の新本格スプラッタ・ホラー。
老父母と同居することになった森本代志男には妻の他に大学受験を控えた長男と高校生の長女がいる。穏やかな核家族に突如、闖入した老父母。寝たきりの老母タツは痴呆症が進み、妻に負担はのしかかる。子供たちも祖父母には冷たい目しか向けない。無力な自分に苦悩する代志男ー。そしてタツが扼殺される。家族を崩壊にまで至らせる老人介護の深刻な状況を克明に捉えた衝撃の問題作。
右足にダンスシューズ、左足はブーツという奇妙な死体が発見された。15年前にも同様の事件があり、犯人は捕まっていない。一方、TVプロデューサーのノーナは、デート相手を募集する個人広告の実態を探る番組を企画し、親友2人を実験に誘っていた。彼女たちは様々な相手と時を過し、結果を報告しあうが、宝飾デザイナーのエリンがあるデートのあと姿を消してしまう…。
ジンバブエで愛娘を殺された米国の女大富豪の依頼で、かの地に飛んだクリーシィ一行は、殺害者の黒犀密猟業者を斃すが、クリーシィの養子マイケルも深傷を負った。かたや香港では、黒犀の角から造られる回春剤の、発癌性を告発しようとした医師が惨殺されていた。両事件の背後には、香港の凶悪な犯罪組織の影が。クリーシィ達の緻密な討伐作戦が始まる…。緊迫するシリーズ第4弾。