1997年4月20日発売
深夜、急激に変容する大都市新興地区が帯びる迷宮感覚ー。東京を思わせるTという大都市。夜ともなると昼間とは全く別個の存在となり、ごく少数の人しか知らない不思議な都市と化す。その闇と迷路の暗黒の世界を支配するのが「深夜の市長」。昼間の市長と市議会の対立するなか、次々と起こる怪事件。解決しようと深夜の街をかけまわる奇妙な男ー怪人市長の正体は!?幻想ミステリ傑作。
薩摩藩相続をめぐって、お由羅一派の意をうけた牧仲太郎の呪詛は、家督を継いだ斉彬のうえに及ぶが、その阻止を謀る仙波小太郎の追及も急である。一方、藩内上士と下士の対立はいよいよ熾烈化し、風雲児益満休之助ら改革派の策動は着々と基礎を固める。-南国薩摩のお家騒動に想を借りて、激動する幕末維新期の様相を、経済、因習、新旧勢力の対立と抗争など、重層的ダイナミズムの中に捉える意欲大作。
青年士官ハリーはなぜ電報を燃やしたのか。不審に思った上官は電報の送り主と内容を探り出す。そしてハリーの元に三枚の白い羽根が送りつけられる。つづいて婚約者からも同じ白い羽根が届く。軍務は解かれ、婚約も破棄-打ちひしがれるハリーは、名誉回復のために戦乱で騒然とするエジプトへ命を賭けて赴く-送りつけられたあの羽根はどうなるのか。イギリスで多くの歴史小説、冒険小説、探偵小説を著したメイスンの、この傑作中の傑作はいまも心躍る古典として生きている。
ぼくはいきなりジョージという名前にされてしまった。横田基地での奇妙な日々。朝鮮戦争のさなか横田基地に通訳としてつとめはじめたぼくは、不思議にのんびりした奇態な日日を送る。横浜で港外荷役の募集に応じるといきなり仁川の沖合に連れていかれた友人。牛浜の西部劇風のバラック呑み屋や新宿御苑のそばのドヤでの大騒ぎ。現在と過去を交錯させながら、ユーモア溢れるタッチで軽妙に描く自伝的小説。
脳死臨調のリーダー、帝都大解剖学教室の吉井教授が刺殺された。吉井と対立し、研究室を離れルポライターとなった相馬に刺殺事件の取材依頼が舞い込む。相馬は、かつての同僚・九条までが吉井の元を離れたことを知り、九条を探し、新宿の浮浪者街へ。そこで見たものは“エビス”と呼ばれる九条、そして彼を慕うトウトという不思議な少女であった。さらに九条が研究室時代に行なった実験の謎、吉井が死に際にとった不可解な行動の謎も浮上、事件は脳医学の闇の世界へと相馬を導く!!先端医学が持つ禁断の領域とは!?鮎川哲也賞受賞の気鋭が放つ、堂々の医学ハード・ミステリー。
中堅自動車会社の品質調査員・森崎邦男の目前で、婚約者・真由美の車が駐車場から転落、彼女と胎児は惨死。直後、傷心の森崎に友人の永沢が示した、駆動系の電子制御ユニット不具合のデータ。森崎はユニット製作会社のアブテックへ飛ぶ。その矢先、同社の瀬田課長が阿武隈峠から車ごと転落死。部長の真島も東北道で事故死する。森崎はアブテックの戸辺栞と共同調査に乗り出した。栞のパソコンに現われた奇怪な文章。十九歳の女性エンジニア・鞠子の奇妙な過去。しだいに明かされる一連の事故の背景。だがそのとき、栞の身には危機が迫っていた。
大学教授・芹沢がL.A.の高級住宅地・マリブの自宅で射殺された!第一発見者はロングビーチ郊外で調査事務所を開く日系人・杉岡。だが、彼はなぜか警察に連絡せずその場を去った。杉岡は前夜、元大リーガーが銃撃された現場に遭遇し、芹沢への封筒を託されていたのだ。その封筒の中に隠されていた悪夢の結晶とは!?地元警察からかけられた嫌疑を晴らすため、杉岡は元大リーガーと芹沢の周辺を洗う。そこに浮かび上がる、捜索を依頼されていたある日本人の影。