1997年6月30日発売
もう二百年以上も前から、オーウェンズ家の女たちは町で悪いことがあると罪を着せられてきた。苔むした家、女たちが作る不思議な調合薬、不気味な黒猫たち。事故で幼親を失ない、伯母たちにひき取られたサリーとギリアン。学校では友達から“魔法使い”と恐れられ、イジめられ、孤立した二人はいつもこの家の“魔力”から逃れ、自由になりたいと願う。奔放な妹は家を出、慎重な姉は孤独な青春を送り、やがて結婚する。二人の女の子を産み、育てている姉の元に数年ぶりに妹が帰ってくる。しかし彼女の車には男の死体が積まれていた…。
エリート大学生が惨殺された。遺留品は名簿の一部と思える紙切れのみ。被害者は専門学校に通う息子の小学校時代の親友だったと知って、刑事は慄然とする。砂つぶのようにパラパラとして捉えどころのない若者、それを苦々しく感じている父親の世代。この二つの世代の狭間で暗躍する“裏情報社会の住人”。事件を解く鍵は、謎の言葉「羊ゲーム」にあった-。
桜田門外の変から4年ー守旧派に藩政の実権を握られた水戸尊攘派は農民ら千余名を組織し、筑波山に「天狗勢」を挙兵する。しかし幕府軍の追討を受け、行き場を失った彼らは敬慕する徳川慶喜を頼って京都に上ることを決意。攘夷断行を掲げ、信濃、美濃を粛然と進む天狗勢だが、慶喜に見放された彼らは越前に至って非情な最期を迎える。水戸学に発した尊皇攘夷思想の末路を活写した雄編。
1992年冬の東京。元IRAテロリスト、ジャック・モーガンが謎の死を遂げる。それが、全ての序曲だったー。彼を衝き動かし、東京まで導いた白髪の東洋人スパイ『リヴィエラ』とは何者なのか?その秘密を巡り、CIAが、MI5が、MI6が暗闘を繰り広げる!空前のスケール、緻密な構成で国際諜報戦を活写し、絶賛を浴びた傑作。日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞受賞。
CIAの『伝書鳩』とともに、父の仇である『リヴィエラ』を追っていたジャック。複雑怪奇な諜報機関の合従連衡。二重・三重スパイの暗躍。躍らされる者たち。味方は、敵は誰か。亡命中国人が持ち出した重要書類とは?ジャック亡き後、全ての鍵を握るピアニストは、万感の思いと、ある意図を込めて演奏会を開く。運命の糸に操られるかのように、人々は東京に集結する。そして…。
機械生命に追われ銀河中心のブラックホールを包む領域に進入した人類の末裔、ビショップ族。その一員トビーは仲間とはぐれ、時空を素材に造られたエスティ空間に迷いこんだ。さまよう彼の前に出現したのはナイジェルと名乗る謎の男。この男こそが人類として初めて機械生命と接触し、以来三万年余も人類を見守ってきたのだ。機械生命に打ち克つ鍵を求め、トビーはナイジェルと共に知識の源「銀河系図書館」に赴くが…。
一方、ビショップ族の長キリーンも、息子トビーの行方を探してエスティ空間を放浪していた。その途上、彼はマンティスと呼ばれる機械生命と遭遇した。マンティスによれば、どうやら機械生命は、キリーンの父を筆頭にした三世代のビショップ族の遺伝子に隠された情報を欲しているらしい。実はその情報こそ機械生命を破滅に導く切札だった…。
弁護士だったわたしはパートナーのロジャーにはめられ、今はしがないセールスマン。その彼の死体がわたしの部屋で見つかり、わたしは逮捕された。そこへ資産家のジーニーが保釈金を出すと言ってきた。かわりに、ロジャーに詐取され所在の知れぬ出資金800万ドルを取り戻すことが条件だ。ロジャー殺しにはこの大金が絡んでいるのかもしれない。わたしは無実を証明するため奔走するが…。
書きかけの原稿が2500枚を越えてもいっこうに収拾がつかず、途方にくれている作家のグラディ・トリップ。彼の長年の編集者でありながら、出版社のリストラでクビ寸前のテリー・クラブツリー。才能はあるがどこかズレてる、創作クラスの生徒ジェイムズ・リアー。三人の神童たちがスラップスティックに繰りひろげる、夜ごとのワイルド・パーティのはてに、一体どんな小説が書きあがるのか?奇才マイケル・シェイボンが、作家をめざすすべての人々に贈る、POPなメタフィクション。
「いくぞ!」一声かけて気合いを入れると、機首をぐいと押し下げ、20度の降下角度で緩降下を開始する。増速しつつ高度2000まで降下、そこから角度を45度まで上げて急降下に入る-という教科書通りのやり方だ。金星エンジンのうなりがみるみる高まり、冬の相模湾の冷え切った大気が音を立てて風防の脇を流れ去る。「900…800…700…600!」の声を耳にした瞬間、これまで聞いたことのない異様な音を耳にした。「超八八艦隊計画の装甲板破壊の失敗」にはじまる、大好評シリーズ第三弾もまた快進撃だ。
ボブ・ディランの夢、それは世界一の『殺し屋』になることだ。すみやかに、人知れず標的を始末する『エクスターミネーター』に。しかし、危険な闇の世界に、ボブの夢が公開されてしまう。ある日、殺しの仲介屋マルセルが、5万ドルの仕事を持ってボブの家に現れたとき、一つ、大きな問題があった。マルセルの標的は人間であり、ボブの標的はゴキブリだったのだ。が、ボブが否定すればするほど、それがプロの手口に見られてしまう。舞い込む殺しの依頼と、偶然に死んでいく標的たち。かくてボブのもとには、CIAからのリクルーターや、彼を排除しようとする世界トップランキングの暗殺者たちがやって来る-。
四年間の英国留学を終え、帰国してきた桜沢慎三郎を待っていたのは東京の街を騒がす“竜馬の亡霊事件”と、いまでは評判の高い探偵となった更紗(さらさ)こと真沙姫だった。伊藤博文ら、明治政府高官襲撃事件にからむ竜馬の亡霊の謎を解明するため、更紗は助手に指名した慎三郎とともに調査を始める。しかし、手がかりはいっこうに掴めず、逆に亡霊騒ぎは過熱するばかりだった。そんなある日、更紗は佐々岡男爵から海援隊の記録誌『海援隊史談録』を入手する。それには、これまで誰も知らなかった意外な事実が記されていた…。