1998年10月20日発売
残虐で淫蕩悪辣な帝王を討つのが正義か、忠を尽くすのが正義か…そんな人間たちの思惑を越えて行われる天の「封神計画」とは?紂王を惑わし悪政の限りを尽くす妖妃妲己。天命に従って商を討つ姜子牙(太公望)、滅びゆく王朝に殉じて戦う大師聞仲。ただ一人、逆らい続ける申公豹。想像力豊かに繰り広げられる妖怪、仙人たちの戦い。欲望と怒り、陰謀と憎しみ、友情と恋…人々の運命を巻き込んで、天の運がめぐる…。
明治五年のマリア・ルス号事件では自ら特別裁判を開いて中国人奴隷を解放し、また賤称廃止、娼妓解放に尽力するなど、大江卓は政治家・社会事業家として独自の足跡を残した。誰もが出世栄達を望み、派閥争いに汲々としていた時代に大勢順応の生き方を嫌い、頑として己れの信念を貫き通した彼の人間としての魅力に迫る。
明けがた5時、ブルーリアが、死んだ。ハイファでモルヒネ注射を打たれて、3時間後に意識不明のまま病院にかつぎこまれてから、1週間後のことだった。白い、こまかな雪が降っていた。ゲルティは窓のほうに目をやって、うれしそうな顔をした。「ねえ、スイスそっくりよ」そういって、彼女は微笑んだ。「イスラエルにも雪が降るなんて、今まで知らなかったわ」…深夜の精神病院でアルバイトをする主人公と、美しく謎めいた女性患者ブルーリアとの密やかな交感を描く表題作のほか、「パレルモの人形」「国境の少年」「薬剤師と世界救済」「真夜中の物語」など、英国統治下の古都エルサレムを舞台に、静謐な日々の記憶の底に潜む悲哀や喜びを、不思議なユーモアを交えて綴る珠玉の短篇の数々。イスラエルを代表する作家シャハルの傑作を精選した本邦初の作品集。仏メディシス賞外国文学賞受賞。
九月のある夜、月光に浸された南イングランドの田園のコテージで、年老いた女性が息をひきとった。村の学校の元教師エミリー・デーヴィスの死の知らせは、フェアエーカー村ゆかりの人々の間に静かに波紋を広げてゆく。記憶の中から浮かび上がる思い出の出来事の数々。エミリー先生の勇敢な精神と暖かい教えは、村を離れた昔の教え子たちや、土地に住む友人たちの心のうちに生きつづけていた。二つの大戦を生き抜いた女教師の姿を通して、二十世紀初頭から今日までの英国田園生活のパノラマが、詩情豊かに描き出される。簡潔な文体による写実。全編に溢れるユーモアと機知。英国を代表する田園作家ミス・リードの佳品を名訳で贈る。
自殺志願の男が思わぬ事件に巻き込まれる…三百三十人は殺されたのか?墓地でいきなり始まる銃撃戦。やがて見えてくる偽装工作。何かが隠されている!底知れぬ巨大な何かが!犯罪の臭いを嗅ぎつけた男を待ち受ける摩訶不思議な出来事…人類の文明を揺るがす先端研究の謎が明かされ、天国を見る者と地獄に落ちる者…崩れて行く足元と、誰も信じられない孤独…まさか!まさか!のドンデン返し。