1998年11月30日発売
赤道直下の島の入江には黒々とした不思議な生物が棲んでいた。現地では山椒魚に似た姿から、魔物と怖れられていたかれらだったが、じつは高い知能をそなえていたのだ。自然の中で生きる無垢な山椒魚が現代文明と出会ったとき、その内面に生じた重大な変化とは?チェコが生んだ偉大な文学者カレル・チャペックが、人間社会と山椒魚の出会いを通じて人類の本質的な愚かさを鋭く描き、現代SFの礎となった名作。改訳決定版。
授業料免除を掲げ、優秀な学生を集める全寮制の人気医科大学イングラム。新入生のクイン・クリアリーは、ある日妙なことに気づく。医療は受ける人の社会的価値で差をつけるべきだ、とクラスメイトがみな同じ考えをもち始めたのだ。そして、彼女と同じように疑問を抱いたボーイフレンドが、突然姿を消してしまう。いったい何がこの大学に起きているのか?理想的なキャンパスに隠された、恐怖の真実。戦慄の医学サスペンス。
アメリカ最大の陸軍基地フォート・ベニング。法務課のカーラ・ギドリー少佐とその恋人ヌカネン軍曹は、ある嵐の夜、基地内で女性の少尉の死体を発見した。その女性は当初、溺死と思われたが、首にナイフで刺された小さな痕があったことから、憲兵隊が殺人事件として捜査を開始する。そんな折り、カーラは捜査の協力を命じられ、彼女は基地の暗部に踏み込んでいく…。ひねりの効いたプロットで描き出す力作サスペンス。
憲兵隊の捜査の結果、ヌカネン軍曹の上官と、軍司令官の副官という二人の容疑者が浮かんできた。だが、カーラは独自の捜査でもう一人の有力な容疑者を探り出していた。その人物は彼女と浅からぬ因縁のある男で、彼は軍規違反にあたるカーラとメースの関係を知り、圧力をかけてきた。やがてカーラの友人の女性将校が殺される事件が発生、果敢に真相の究明を続けるカーラは驚くべき事実を暴き出す。映画化が決定した話題作。
ある事件が、酒に溺れたニューヨーク市警の刑事ホッカデイの目を覚ました。広告代理店に勤める妻の上司が惨殺死体で発見されたのだ。現場の状況から彼の密かな趣味が判明し、ホッカデイは街で続発している殺人事件との関係を探りだす。が、手掛かりがつかめぬうちにさらなる殺人が!不屈の刑事魂で醜悪な事件に挑む男の姿を情感豊かに描くシリーズ第四弾。
ニューヨーク州の片隅の小さな町、オーリリアスは、奇怪な事件の連続に悩まされていた。娼婦のように町中の男と付き合っていた女性が殺され、その左手が切り取られていた。町の大学に過激な社会主義者が赴任、数人の学生がシンパとなり、内紛や外部とのいざこざを繰り返す。町の学校に、連続して爆弾が仕掛けられ、警官隊が出動する。そして…一人の少女が行方不明になるという事件が勃発した。行方不明の少女の服と、卑猥な言葉を書きつらねたメモ、そしてマネキン人形の左手が警察へ送りつけられ、住人たちの不安は、頂点に達したかに見えた。だが、二人目の少女が消えた。事件は、まだ始まったばかりだったのだ!ミステリ作家としてばかりでなく、詩人としても知られる著者が、満を持して放った自信作。英国推理作家協会賞、ブラム・ストーカー賞にノミネートされた、異色サスペンス。
1985年、熾烈を極める北アイルランド紛争のさなか、王党派の闘士マイケル・ライアンは、軍資金獲得のため、大胆不敵な計画を立案した。アイルランド海をはさんで対岸のイングランド湖水地方で、五千万ポンドの金塊を運ぶ輸送車を襲撃し、海峡を越えて北アイルランドへ持ち帰ろうというのだ。マイケルは、姪のキャサリンとともに、腕の立つ船員キーオーを仲間に引き入れ、着々と計画を進める。だが、キーオーは、じつは対立するIRAのスパイだったのだ。さらに、海峡を越えるために雇った船員たちも金塊の横取りを狙い、味方のはずの王党派も横槍を入れようとする。四面楚歌の状況で、しかしマイケルの作戦は、見事成功したかに見えた…。そして10年後、行方不明になっていた金塊が、ふとしたきっかけで表舞台に再浮上した。現在では一億ポンドの価値を持つ金塊をめぐって、10年ぶりに帰国したマイケル、王党派、IRA、さらにはアメリカのマフィアまでが争奪戦に乗り出してくる。事態を憂慮した英国は、グループ・フォアのファーガスン准将に、金塊回収を命じた。だが、指令を受けたトラブル解決要員ショーン・ディロンには、誰も予想もしていなかった秘密があったのだ!冒険小説の王者ヒギンズが描く、裏切りと謀略の応酬。息つく間もない騙し合いのすえ、最後に笑うのは誰か。
西新宿にある東和信用金庫が三人組の男に襲われた。行員三人が射殺され、現金一億八千万円が強奪される。事件を追う新宿西署の暮林刑事は、三人組の一人が中国人・張狼元であることをつきとめ、張が情婦の石原ひろみと暮らすアパートを張り込んだ。が、ひろみが張を殺してしまったのだ!ひろみの境遇に同情した暮林は、彼女のために部屋を借り、愛欲に溺れる…。一方、三人組のもう一人、李冲虎を割り出した歌舞伎町分室だったが、その背後に、香港黒社会の巨魁・蛇駄逵の影がちらつき始めた…。
日本を震撼させた“金大中拉致事件”は、いまや当時のKCIAの手になったことが明らかになっているが、命をとりとめた金大中は永い牢獄生活を経て、韓国の大統領となっている。一方、事件の陰で当時の日本の政党と韓国政府との間で何らかの闇取引が行われたといわれている。本書は、日韓両国の間に横たわる巨大な闇の部分に翻弄された一日本人と東証一部上場のある会社の消滅の物語である。
日本経済最大の危機、金融崩壊が迫っている。長期信用銀行は、公的管理という道でどうにか解決をみたが、それが決定した後日、日本リースが倒産した。もくろまれた長銀の不良債権放棄が不可能になったからである。その背景にあるのは、銀行がかかえる表向きの不良債権の額をはるかにオーバーする膨大な量の“飛ばされた”不良債権である。本書は、それが何故生じたのかという最大の疑問に答えてくれる。
精神の国境で不安と絶望をシュールに描く。世紀転換期から、一次大戦、ハプスブルグ帝国崩壊を経てチェコ共和国の成立へ。ドイツ民族主義、チェコ民族主義、反ユダヤ主義、シオニズム等、様々な時代潮流が烈しく渦巻き、衝突した「論争の町プラハ」に、「ドイツ系ユダヤ人作家」として生きた、カフカの生涯を、広大なパースペクティブの下に、豊富なディテールを駆使して綿密に描く重厚なカフカ評伝の誕生。