1998年9月発売
判事のデボラの前から姿を消していた男たちが突然帰郷したー彼女の過去に影を落とすアレンと、自分の土地に買収話が出たデボラの兄アダム。思いがけぬ再会にデボラは動揺する。そんなある日、地主であるアレンの叔父が殺害された。さらに数日後、第二の殺人が起き、デボラとその一族は事件の渦中に…意外性と滋味に満ちた、アガサ賞最優秀長篇賞受賞作。
1963年11月。イージー、43歳。美貌の女教師アイダベルから雑種の小犬を預ってくれと頼まれたイージー。愛犬が夫に殺されそうだとの懇願に引き取ってみたものの、いっこうになつかない。しかも勤め先の学校の農園で男の死体が見つかった。そのしゃれのめした格好の男の死体はアイダベルの義兄ローマンだという。そして、小犬を引き取りに来ないアイダベルを自宅に訪ねたイージーを待ち受けていたのは、アイダベルの夫ホランドの死体のみだった。誰が二人の男を殺害したのか?さらにアイダベルはいったいどこへ?J・F・ケネディ暗殺時の60年代のアメリカ黒人社会をリアルに描く、ハードボイルド小説の白眉。
パトリック・チャンスはロンドンの証券会社に勤める営業マン。新しい屋敷は手に入れたし、美しい妻とのあいだに生まれた娘は可愛くてたまらないし、人生は順風満帆…なのではあるが、ここにちょっぴり頭の痛いことがある。営業成績があと一歩で目標額に達しないのだ。この目標さえ達成すれば、10万ポンドという超破格の特別手当てが獲得できるというのに-そこでパトリックが強引に計画したのが、週末のテニス・パーティだった。屋敷に友人たちを招いて優雅にテニスを楽しみつつ、手練手管の限りをつくして金融ファンドを売りつけようというわけだ。かくして、社会階級も金銭感覚も人生の目的もまったく違う四組の男女が、ひとつ屋根の下に集まった。思わぬ危機に青ざめている資産家夫婦、貧窮生活に苦しむ学者とその妻、厚顔不遜な実業家とその娘。しかもそこに思わぬ闖入者まで加わって…いかにも英国的な棘のあるイジワルが炸裂する、ブラックな笑いに満ちた悲劇喜劇。
治承四年(1180)八月、伊豆で目代屋敷を襲い、平家への反撃の狼煙を上げた頼朝は、源氏ゆかりの者や坂東武者を束ね、鎌倉で京の清盛を伐つ準備を着々と整えていた。その頼朝の蜂起を鈍らせていたのは、弟・義経が身を寄せていた奥州の支配者・藤原秀衡の動向。秀衡は頼朝にとって、後方でじっと見つめている羆だった。その間隙をつくように、木曾で義仲が挙兵、入洛!決戦の火蓋が切られた!血で血を洗う源平の戦い!源氏の棟梁の座をめぐる骨肉の争いに、ついに奥州の眠れる羆・秀衡が動きだした…。
旅行先の島根県松江市のホテルで、画壇の巨匠・月原龍生が失踪した。同じころ、出雲大社内で男の肉体の一部が発見される。さらに島根県各地のスサノオを祭る神社から次々と同じ男のバラバラ死体が。鑑識によって死体は月原と判明。だが、ホテルは月原が外出できない特殊な状況に…。何故、ヤマタノオロチの如く月原は解体されたのか?そしてスサノオの意味は?月原の妻・芳乃の調査依頼を受けた探偵・大道寺綸子は、かつて月原をオロチと呼んだ男の存在を知り、真相を追うが…。