1999年2月1日発売
首吊り女が産んだ奇跡の子。齢千年の巨樹はその未来を見通した。親も家も名も持たぬ「おまえ」を待つ、腐臭を放つ二十一世紀の日本。「おまえ」は盗みをくりかえし、白毛の老猿が語る謎の詩集に導かれ、個の自由を求めて流れゆく。だが、猛火と爆発を逃れつづけた「おまえ」の姿が捉えられる瞬間はついにやってきたー。強烈なスリルと暴力的な興奮が横溢する新世紀への黙示録。
自由を蹂躪され、窮地に立たされた「おまえ」を救ったのは大地震だった。そして、その地異は首都を壊滅させ、民衆の理性を奪い去った。独裁者はこの機に乗じた。愚民はわれ先に従った。「おまえ」は詩集を味読し、ナイフを振り下ろした。酒浸りの日々から復活すると、運命を海に託した。そして波間で裏切られた。憤怒を楽しむ「おまえ」は流れゆく者の使命を悟り、真の敵へと向かう。
夫婦と、息子ひとりの3人家族。どこにでもある、新興住宅地の平穏で幸福な一家だった。妻が妊娠したことで、新たなる喜びに一家は包まれる…はずだった。しかし、ある朝、夫が巻き込まれた小さな事件が思いもよらぬ展開を見せ、彼らの運命を大きく狂わせていくー。次第に追い詰められ、崩壊に向かう家族に、果して救いはあるのか?現代の不安を鋭くえぐった心理サスペンス。
偶然通りかかった、阿久津との思い出の場所。そこで私たちは出会い、恋に落ちたのだー。18年前に事故死した男との愛の日々を記憶によみがえらせたその日の晩、突然かかってきた電話の主は…。不思議で怖く、どこか懐かしい「異界」への扉を開く幻想小説8編。
他民族の支配を受けたことがないウアオラニー族。彼らはアマゾンで最も勇敢な部族と自負している。その領地内に石油が出た。エクアドル政府の協力を取りつけて油田開発を進める合衆国の石油会社。押し寄せる宣教団、環境保護活動家。勇士たちは槍と吹き矢を頼りに、自分たちの文化と熱帯雨林を守る闘いに立ち上がった。