1999年2月10日発売
強靱な旅順要塞の攻撃を担当した第三軍は、鉄壁を正面から攻めておびただしい血を流しつづけた。一方、ロシアの大艦隊が、東洋に向かってヨーロッパを発航した。これが日本近海に姿を現わせば、いま旅順港深く息をひそめている敵艦隊も再び勢いをえるだろう。それはこの国の滅亡を意味する。が、要塞は依然として陥ちない。
作戦の転換が効を奏して、旅順は陥落した。だが兵力の消耗は日々深刻であった。北で警鐘が鳴る。満州の野でかろうじて持ちこたえ冬ごもりしている日本軍に対し、凍てつく大地を轟かせ、ロシアの攻勢が始まった。左翼を守備する秋山好古支隊に巨大な圧力がのしかかった。やせ細った防御陣地は蹂躪され、壊滅の危機が迫った。
各地の会戦できわどい勝利を得はしたものの、日本の戦闘能力は目にみえて衰えていった。補充すべき兵は底をついている。そのとぼしい兵力をかき集めて、ロシア軍が腰をすえる奉天を包囲撃滅しようと、日本軍は捨て身の大攻勢に転じた。だが、果然、逆襲されて日本軍は処々で寸断され、時には敗走するという苦況に陥った。
本日天気晴朗ナレドモ浪高シー明治三十八年五月二十七日早朝、日本海の濛気の中にロシア帝国の威信をかけたバルチック大艦隊がついにその姿を現わした。国家の命運を背負って戦艦三笠を先頭に迎撃に向かう連合艦隊。大海戦の火蓋が今切られようとしている。感動の完結篇。巻末に「あとがき集」他を収む。
ある日、突然浦添のスナックに豚が闖入してきた。豚がもたらした厄を落とすため正吉(しょうきち)と三人の女たちは真謝島に向かう。ひたむきに生き、ときにユーモラスな沖縄の人々の素朴な生活を生き生きと描き、選考委員の圧倒的支持を得て第114回芥川賞を受賞した表題作。ほか一篇「背中の夾竹桃」を併録。
わたしたちの故郷って、どこだろう?全ての女性たちに、社会の矛盾の中でもがき苦しむ子供たちに、彼らとともに変革の時代を生きようと志す男性たちにも…深い絶望を超えた光を投げかけた干刈あがたの小説世界!新たな希望への旅路に、ようこそ。
ジェシカ・オパール・クレヴァリングは、かつてはクレヴァリング家の所有だったオークランド館の主ベンと親しくなり、ベンの息子ジョスとの結婚を強いられる。彼は孔雀とあだ名される誇り高い男だった。ベンは鉱山での事故がもとで、鉱山の株式と「グリーンフラッシュ」と呼ばれる最高のオパールを二人に遺して世を去った。名目だけと約束して結婚した二人はオーストラリアへ渡る。シドニーで孔雀荘と呼ばれる屋敷の女主人となったジェシカは、会社にとけこみ、オパールの知識も深めていくものの、一方いつかジョスに殺されるのではないかと不安につきまとわれるのだった…。
主エル・ランティと大天使たちが誓った真実のユートピアとは?新興宗教の誕生から救済までを高橋信次師の正法に学び、師の教えを広めるべく本を出版してきた著者が、初めて挑戦した異色小説。