1999年7月発売
1985年、呼人は12歳だった。友人たちとともに未来は光り輝いていた。ところが呼人だけ身体も心も12歳のまま、決して成長しなかった。「大人になるって、どういうことなんだろう?」呼人は自分自身を見つけるため、赤ん坊のときに別れた母親探しの旅に出た。
父は、一高でバンカラを演じ、療養所では悩めるインテリ青年となり、経営者にまで昇りつめた会社では偽悪家・変人・趣味人を気取った。そして晩年、「緩慢なる自殺」を図る。戦争と結核に行く手を阻まれ、それでもなお、自分の可能性を求め続け、最期まで苦闘する父。時代に、運命に、抗い続けたひとりの男を描く長篇小説。
5歳児ほどの小さな身体。異星人みたいなへんてこな声。ぼくの親友オウエンは、神が遣わされた天使だった!?宿命のファウルボールによる母の死。前足を欠いたアルマジロの剥製。赤いドレスを着せられた仕立用人台。名人の域に達した二人組スラムダンク。-あらゆるできごとは偶然なのか?それとも「予兆」なのか?映画「サイモン・バーチ」原作。
名門プレップ・スクールの学校新聞編集長として活躍するオウエンと、なにかと彼に頼りっきりのさえないぼく。ヴェトナム戦争が泥沼の様相を呈しはじめるころ、オウエンは小さな陸軍少尉として任務につく。そしてぼくは、またもや彼のはからいによって徴兵を免れることになる。椰子の木。修道女。アジア人の子供たち。-オウエンがみる謎の夢は、二人をどこへ導くのか?映画「サイモン・バーチ」原作。
わたしは司書、影のような。彼は少年、巨人症の。初めて会ったとき、彼はまだ十一歳。悠然としたとびきりのノッポの少年、実はその体の中では、ある病が進行中だった-いきなり全米図書賞にノミネートされた、実力派新人の処女長編。
夜の張りこみのさなか、ライアンとグレゴリーは、棺を運ぶ葬列さながら、三つの人影がドラム缶を川に沈める光景に遭遇した。夜が明け水底を探ったが、見つかったのは古びたゴミバケツだけ。ところがその中から、失踪していた悪徳警官の白骨死体が転がりだす。ニューヨーク市警組織犯罪部の対照的なふたりの刑事が、湾岸地区に埋もれた犯罪を追う。哀歓のにじむ警察小説第一弾。
「これは殺人じゃないわ。処刑よ」リディアは宣言した。姉を自殺に追い込んだ憎き恐喝者が、いま残された家族の前で息絶えたのだ。彼らは死体を処分しようと画策するが、事件は早々に警察に知られてしまう。一方、通報を受けたニューヨーク市警のヴァルクール警部補は着実に彼らの跡を追う。だが、事件は意外な相貌を見せ始めるのだった。知られざる名手のサスペンス溢れる大表作。
夜毎、人間の欲望を吸い上げ、妖しく輝く魔都、新宿歌舞伎町。金と暴力が支配するこの街に、一人の少年が足を踏み入れた。その瞬間から、歌舞伎町の闇は、大きく揺れ動き始める。肉が裂け、血がしぶく激烈な闘いの果てに何が残るのか。それは、あなたの目で見届けるしか無い。新宿系自作自筆屋顕一が贈る衝撃のバイオレンス超人アクション。
主人公は1933年生まれ。その容貌から「ウサギ」と呼ばれる彼、ハロルド・アングストロームは、男の本性に忠実な、典型的な中産階級のアメリカ人だった-。『走れウサギ』(1960)からスタートし、『帰ってきたウサギ』(1971)、『金持になったウサギ』(1981)、『さようならウサギ』(1990)と四つの作品で書き継がれた、欲望と悔悟に彩られた「ウサギ」の生涯。20世紀後半の激動の歴史を背景に、執筆期間30余年、5000枚に描かれた人生の真実。本書は、最初で最後の4部作一括刊行となる。井上謙治全訳。
極端な家母長制社会の惑星ストラトス。遺伝子工学の発達により、男性がほとんど排除され、女性のクローンが覇権を握る閉鎖的な惑星上では、短い夏の間、クローン技術によらずに生まれてくる子供たちがいた。そうした変異子の一人として、生まれ故郷から離れていくべく運命づけられた内向的な少女マイアは、快活な双子の妹ライアとともに冒険の旅にでる。だが、二人の行く手には想像を絶する苛酷な運命が待ち受けていた。
マイアとライアがそれぞれ乗りこんだ二隻の船が嵐に遭い、うちライアの船が消息を絶った。一人残されたマイアはさらなる孤独な旅を続けていく。鋳物工場での重労働、仲間の裏切り、そして監禁…。だが、マイアの身に襲いくる試練はそればかりではなかった。鬱々とした独房生活を送るうち、やがてマイアは、宇宙からの「訪問者」をめぐる陰謀の渦中へと巻きこまれていく!巨匠ブリンが雄渾の筆致で綴る感動のSF巨篇。
元俳優の警備員スコット・エリオットは、映画監督ドルリーから、撮影現場の警備の依頼を受けた。再起をかけて、自作のリメイクを撮影中だったドルリーだが、その現場で謎の事故が相次いでいるのだという。彼の才能に嫉妬したものの仕業なのだろうか?エリオットは、犯人探しに乗りだすのだが…1950年代の古き良き時代のアメリカを舞台にした、傑作ハードボイルド。アメリカ私立探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
ユーゴスラヴィア連邦は分裂し、ボスニアでは内戦が勃発した。かつて民族融和の象徴であった首都サラエボは、包囲するセルビア人勢力と、クロアチア人、ムスリム人が鉾を交える最前線と化す。街には砲弾が撃ち込まれ、高台からは狙撃手が無差別に市民を銃撃してくる。そのサラエボの一画にある高層アパートで、腐乱した女性の他殺死体が発見された。だが、現場は戦闘の激しい地区で、警察といえども近づくことが出来ない。戦闘の激化とともに弱体化したサラエボ市警は、すでにその組織の大半が崩壊し、機能を停止しかけていた。だが、刑事部長のロッソ警視はあきらめなかった。そんな状況でも、法と秩序は守られねばならない。部下は動けず、鑑識もなく、写真班もいない。電話もコンピューターも使えない。検死すらも困難だったが、彼は敢然と捜査に赴いた。だが、事件の裏には思いもかけぬ巨大な影がうごめいていた…。常識の通用しない戦場で展開される、捜査と闘いの四日間。かつて内戦下のサラエボに駐在した気鋭ジャーナリストが、その体験を活かして描く、異色の警察小説。
「朕に北顧の憂いなし」-太祖洪武帝にそう言わしめた朱棣(永楽帝)は父の武勇、才気を最も色濃く受け継ぎながら、四男ゆえに燕王として北平(北京)の地にあった。しかし溢れる野心は、彼をその地位に甘んじさせてはおかなかった。朝廷は建国の元勲が次々と粛清され弱体化していた。朱棣は遂に叛旗を翻す。靖難の変の始まりである…。
雪の一夜が二人の義兄弟の運命を変えた。一人はモンゴルの大草原で戦場の勇者に、もう一人は金国の王室で育てられるが…。宋末元初の激動期を描く大河ロマン!武侠小説の金字塔、ついに登場。
ロンドンの下町-カード・プレイの天才エディ、腕力で鳴らすベーコン、切れ者トム、潔癖症のソープの4人組。エディは、ポルノ界の帝王として知られるギャングのハチェット・ハリーとのカードの大勝負で、50万ポンドの借金を作ってしまう。借金返済の猶予は1週間。一攫千金を狙う4人は、麻薬の売人ドラッグ一味がマリファナ工場から奪ったドラッグと金を横取りしようとするが…。果たして、最後に笑うのは誰か?二転三転また逆転、UK発ジェットスクリュー・クライム・ストーリー。