1999年9月発売
小さいながらも周囲から「あの軍鶏には手を出すな」といわれ、一目置かれているほどその戦闘力と勇猛さで知られる道玄一家・本家だが、年をとって欲惚けした親分・三木がある日突然、組を解散。当人は貸しビルのオーナー兼喫茶店の主人に収まってしまう。ところが、三木のため込んだ金とビルに中国マフィアが目をつけ、罠に嵌め陥れようと画策し始めた。心ならずも堅気になった子分達は、それを知って強大な中国マフィアに捨て身の戦争を仕掛けるが…。仁侠の誇りをかけた闘いが始まる。
西表の密林で発見の死体は失踪中の男?私立探偵・岩波をリーダーとする探検グループのメンバー真那津が、阪神大震災で母を亡くした少女・花をつれて神戸から帰京した。花の父親は妻子を捨てて石垣島へ愛人と出奔したらしい。沖縄へ飛んだ岩波だが、父親は三年前から再び失踪していた。彼の足取りを追って西表島へ渡った岩波たちは、島の密林で男の白骨死体を発見。遺体は花の父親なのか?彼の失踪の裏には何が…。
親友につきあって出かけたライブハウスで、真也は気の強そうな美少年・克充に「今夜僕と遊ぶ気、ない?」と誘われる。翌日学校で、数人の男性に襲われている克充を助けた真也は、再度克充からのアプローチを受けるが…。自らを尻軽・淫乱と蔑む克充。彼の心の傷に潜む「木村」という男の存在。恋に不器用な2人のセンチメンタル・ラブ・ストーリー。
いまはなにもしていず、夜の散歩が習慣の19歳の私こと子、おっとりとして頑固な長姉そよちゃん、妙ちきりんで優しい次姉しま子ちゃん、笑顔が健やかで一番平らかな‘小さな弟’律の四人姉弟と、詩人で生活に様々なこだわりを持つ母、規律を重んじる家族想いの父、の六人家族。ちょっと変だけれど幸福な宮坂家の、晩秋から春までの出来事を静かに描いた、不思議で心地よくいとおしい物語。
還暦間近の夫婦に、92歳の父と87歳の母を介護する日がやってきた。母の介護は息子夫婦の苛立ちを募らせ、夫は妻に離婚を申し出るが、それは夫婦間の溝を深めるだけだった。やがて母は痴呆を発症し、父に対して殺意に近い攻撃性を見せつつも、絶食により自ら命を絶つ。そして、夫婦には父の介護が残された…。老親介護の実態を抉り出した、壮絶ながらも静謐な佐江文学の結実点。
101日間の太平洋漂流の末たどりついた南の島から、孫太郎の数奇な半生は始まる。一奴隷としての苛酷な生活のなか、仲間は次々と倒れてゆく。奴隷女アニタとの恋、首狩り族との対決、さまざまな事件があり-やがて孫太郎の目の前に日本へと向うオランダ船が現れるのだが…今から200年程前、江戸時代半ばのことであった。
真犯人を捜し求めて二十年の歳月が流れた。犯人を突き止めた私は、再び深い苦悩にとらわれることになった。妻を殺したのは、結局私だったのかもしれない…。新天地ロサンゼルスでの、あの生涯最悪の一夜。リビングルームに眠る妻、首に絞殺の跡。警察の杜撰な捜査、日系社会の誹謗中傷。長く果てしない闇夜に私は二十年間さまよった。自らの体験にもとづいて、ためらい躓きながらも、何者かに導かれるように完成をみた感動の大作。
いつまでたってもモンスーンがやってこない暑い夏に、最初の雷雨とともに生まれた赤ん坊。長じて郵便局員になった彼は、仕事もいやだし生活もうんざり…。舞台はインド。人の手紙を開封しては、見知らぬ土地に夢を馳せる毎日。なぜだか郵便局長の娘の結婚式で尻丸出しで踊ってクビ。あげく突然グアヴァの樹に登る。なんの因果か聖者様と崇められて、とりまく信者に珍妙なる警句、これまたなぜだか起こる家族スパイ警察軍隊猿まで巻き込む大騒ぎの顛末は…?饒舌な語り。繊細な観察力。奔放な想像力。マサラな香りを漂わせる異色の文学の収穫。98年度ベティー・トラスク賞受賞。
眠らない大都会ニューヨーク。救急救命士の俺は、今夜も静かな夜は過ごせない。心拍停止、呼吸困難、薬物中毒、銃撃事件、交通事故…大都会の夜は、生と死のせめぎあいに満ち溢れている。かつては俺も、そこで人々を救い、それを楽しみ、そこに参加することに生きがいを感じていた。だが、黄色いレインコートを着た少女、ローズを救うことが出来なかった、あの夜からすべては変わった。死んだはずのローズが俺の行く先々に姿を見せ、俺にあの夜を忘れさせてくれないのだ。妻は俺を捨て、仕事のミスも多くなった。救急救命士の仕事は、もはや俺の生きがいではなくなってしまったらしい。そんなある夜、心臓発作を起こした老人の家に呼ばれた俺は、そこで不可解な体験をする…自らも救急救命士であった著者が、その実体験をもとに描き出す、生死と愛憎のドラマ。ニコラス・ケイジ主演、マーティン・スコセッシ監督で映画化の話題作。
日照りに見舞われた夏。干上がったダム底の廃校で肝試しの怪談「百物語」を行った悪童たちは、とんでもない怪物を呼び寄せてしまう!それから二十年、再び廃校に集った関係者たちを“復讐者”が一人また一人と屠っていく。犯人は誰か、その動機は?日本推理作家協会賞受賞作『沈黙の教室』から五年、叙述トリックの粋を凝らして恐怖と謎を紡ぎあげる入魂のダーク・サスペンス“教室シリーズ”第二部。