1999年発売
タナーの飲み友達のトムが、謎の自殺を遂げた。その直前、彼はタナーの留守番電話に“血の痕跡をたどっている”と伝言を残していた。救急隊員として誇りを持っていたトムが、なぜ自殺を?あの伝言で彼はタナーに何を伝えようとしたのか?数々の疑問を抱いて調査に乗り出したタナーの前にやがて血液製剤に絡む企業の陰謀が浮かびあがるー親友の死の真相を探るため、知性派探偵タナーが大企業の悪に独り立ち向かう。
エレベーター専門の電機メーカー、ニュートン社の営業課長・水城寛太郎は、実家のラブホテル「カサブランカ」のフロントという夜の顔を持つ。ある日、総務部の女主任・万田百合絵に誘われ、濃密な情事の後で驚くべき事実を聞いた。水城が一番信頼し、可愛がっていた部下の前田美矢香が、援助交際をしているという。さらに、社長の檜垣達之助が株主代表訴訟を起こされるらしい。水城に与えられた特命は。
十六歳の少女・森下麻沙美との愛人関係を解消して半年、紀本晋一郎はしきりに麻沙美との日々を懐しんでいた。そんなある日、紀本のもとに麻沙美から突然連絡があり、会うことになった。麻沙美は、その場に中学生の妹・亜沙美を伴ない、妊娠してしまった亜沙美の堕胎の費用を出してほしいというのだ。五回だけ紀本に抱かれてもいいという。青い性に再び溺れる紀本だったが…。会心の長篇官能ロマン。
南町奉行に就任し、天保の改革を推し進める鳥居耀蔵の命を受けた内与力・明智惣五郎は、深川、浅草一帯の裏人宿の存在と組織を探索していた。裏人宿の元締めは、執拗で周到、強靱な惣五郎の首に千両の賞金をかけるが、徐々に迫る惣五郎に危機感を募らせる。一方、阿片を主原料とする秘薬「テリヤーカ」を武器に、大店の後添いや大奥にまで魔手を伸ばすMという人物が浮かび上がる…。書下し痛快時代長篇。
近江の豪家の下僕・茂助は、朋輩の治作が主人に殺され、そのいいなずけだったまきが主人に囲われた事を知る。茂助のなかに貧しさと富貴の徒に対する憎しみが生まれた。主家を出奔した茂助は、やがて洛外に居を定め、貧乏公家に数寄を習うとて、復讐の大勝負に出るー。極限まで虐げられた男がしっぺ返しに生涯を賭ける表題作ほか、哀しく逞しい民の姿を描く傑作時代小説集。
江戸。幕閣は公然と賄賂を取り交わし、行政治安は紊乱を極める田沼時代。御家人として世を捨てた暮らしの斑塔十郎は、自害を願う女と出遭う。仔細ありそうなその女は、塔十郎の情けによって思いとどまったと見えた。だが、大商人山崎屋の寮に田沼意知が訪れた夜、女は全裸で殺されるー。ニヒルな塔十郎の剣が、圧政に苦しむ庶民を助けて悪を斬る!傑作時代長編。
テキサスの若き経営者にふりかかった放火の容疑。だが、アリバイを証明できるのは情熱の一夜のあと、姿を消した謎の美女だけだった…。ラブ・サスペンスの女王が放つ、全米で100万部突破の話題作。
●恩田陸氏推薦ーー「『ユージニア』の構想のきっかけになったのは、この作品です」 ●若竹七海氏推薦ーー「読みはじめたら最後、仕事は手につかないし、眠れないし、食べられない。」 クロックフォード──どこにでもありそうな平和で平凡な町。だが、ひとりの少女が殺されたとき、この町の知られざる素顔があらわになる。怒りと悲しみ、疑惑と中傷に焦燥する捜査班。だが、局面を一転させる手がかりはすでに目の前に……! 警察小説の巨匠がドキュメンタリー・タッチで描き出す《アメリカの悲劇》の構図。MWAグランドマスター賞受賞第一作。解説・若竹七海
いつもの暮らしのそこここに、ひっそり開いた異世界への扉ー公園の砂場で拾った「雛型」との不思議なラブ・ストーリーを描く表題作ほか、奇妙で、ユーモラスで、どこか哀しい、四つの幻想譚。芥川賞作家の初めての短篇集。
ぶらりぶらりと歩きながら、語らいながら、静かにうつらうつらと時間が流れていく。鎌倉・稲村ガ崎を舞台に、父と息子、便利屋の兄と妹の日々…それぞれの時間と移りゆく季節を描く。平林たい子賞、谷崎潤一郎賞受賞の待望の文庫化。
殺人犯の汚名を着たまま獄中死した、婚約者の父の再審請求をしてくださいー。サラ金会社の社用で霧多市を訪れた、弁護士の宗像光生は、飲み屋のママ雅代からとんでもない依頼をうけた。サラ金の顧問という、弁護士として落ちぶれていた宗像は、雅代の度重なる懇願に負けて引き受けてしまうが…。二十年前の事件を追って、北海道から九州、四国を駆ける宗像の辿り着いた真実とは!?木谷ミステリーの最高傑作。
太平洋戦争末期、空襲で家を焼かれ、家族とともに路頭に迷いかけていた“僕”は、縁あってある裕福そうな邸に住み込ませてもらうこととなる。邸には上品そうな女主人と病気の娘の二人が住んでいるだけで、夜になるとどこからともなく悲しげにすすり泣く声が聞こえてくるのだった…。戦争という時代の狂気を背景に驚くべき事実が明かされる表題作の他、“女”シリーズ六篇を含む、幻想の物語全十一篇を収録。
妻が失踪した!新鋭建築家・隅田にとってそれはあまりに突然の出来事だった。まして知る由もなかった。彼の周囲で、不死を求める者たちが暗躍していることを。シュリーマンが発掘したクロノスの壺、古代の巨石信仰、犬神信仰、狼男伝説、吸血鬼伝説ー世界各地に残るこれらの伝承には、ある恐るべき事実を解く鍵が潜んでいるというのだが…。歴史の闇を縦横無尽に駆けるSF伝奇ロマンの傑作。
けだるくて退屈な夏休みのある日、高校生の僕は、友人の紹介で風変わりな少女・アキ子と出会い、そして彼女に惹かれていったー未来への不安、焦燥感、同級生の死、切ない恋心。誰もが通り過ぎて来た、青春のやるせない日々の一ページを鮮やかに描いた、青春小説の最高傑作。