2000年2月25日発売
19世紀末、パリ。華やかなオペラ座の舞台裏では、奇怪な事件が続発していた。首吊り死体、シャンデリアの落下。そして、その闇に跋扈する人影。“オペラ座の怪人”と噂されるこの妖しい男は、一体何者なのか? オペラ座の歌姫クリスティーヌに恋をしたために、ラウラはこの怪異に巻き込まれる。そして、運命の夜、歌姫とラウルは、まるで導かれるように、恐ろしい事件に飲み込まれていくーー。
ジャズは、この男から始まった。少年サッチモを虜にした、ニューオリーンズの天才コルネット奏者、バディ・ボールデン。爆裂するコルネットを手に、狂気の淵へと疾走した苛烈な生涯を、妻や友人を語り手とする挿話、インタビュー、詩的断章等によって再現する。伝説と史実を巧みにコラージュした、『イギリス人の患者』(ブッカー賞)の作家によるドキュメント・ノヴェル。
1950年6月25日に勃発した朝鮮戦争が、作者と民族の運命を変えた。高校三年で人民軍に動員され、国軍の捕虜となって釈放後に越南した作者は、その切実な体験をもとに、戦争という極限状況下で出会った北と南の人びとのイデオロギーでは割り切れない人間本来の姿を活写する。統一への希求を結晶化した現代韓国文学の代表作。大韓民国芸術院賞・大山文学賞受賞。
南北戦争末期、負傷した南軍の兵士インマンは、故郷ノースカロライナに残してきた恋人エイダの許へ戻ろうと脱走した。危機と困難に満ちた旅の末、エイダとの再会を果たした主人公だったが…。アメリカの大自然を背景に、美しく詩的な言葉で描かれた、悲恋の物語。
究極の和菓子を目指し奈良、京都と辿るあすかの人生行路は、同時に一人の青年との愛を育む道程でもあった。幾多の障害を乗り越え、愛を成就させた時、あすかは求め続けていた和菓子を手にしていた。
人が脅されて怖がっている。苦しんで、悩んで、最後に自分を殺してしまう。それしか方法がない状態に追い込まれる。いじめは遊びじゃない、いじめは犯罪なんだ。「イントゥルーダー」「スピカ-原発占拠」に続く、衝撃の問題作。
メリータはイギリスから船旅で独り未知のマルティニーク島へ渡った。父の死後、義母に遠方へ追い払われ家庭教師として働くことになったのだ。雇い主のヴェソンヌ伯爵は妻を亡くしその後、従姉のマダム・ブワセによって伯爵邸と農園の実権を握られていた。だが、メリータに勇気づけられた伯爵は奴隷たちの難問にも取り組み始める。そんな二人の様子に嫉妬するマダムは挑発や攻撃を仕かけ続けた。いがみ合う大人達に、伯爵の一人娘であるローズマリーも怯えていた。ある夜、森からの奇妙な太鼓に誘われたメリータは、秘密の儀式に遭遇する。
1942年3月、台湾空襲に参加した極東米軍のB-17はあり得ないものを目撃した。単翼低翼で、機体は小さい。それは、メッサーシュミットBf109の勇姿!すべては、41年6月の「事件」から始まったのだった。世界を震撼させ、歴史の歯車を狂わせた「事件」…。陸軍大臣・東条英機はいらついていた。ドイツとの意思の疎通がはかれないのだ。駐独大使からも内容のある報告はなかった。ドイツ大使館に呼び立てられ、大使自らの出迎えを受けた東条に、正体不明の不安がこみ上げる。果たして東条を、そして日本の運命を左右するものとは?気鋭が斬新な発想で描く本格シミュレーション戦記。
ユーモア・ミステリーの傑作!ジャパニーズが殺された!バスルーム、血痕と弾痕、そしてネクタイのしみ-。密室殺人のナゾにロス警察のリチャード・クーが挑む。
急な辞令でデスクワークから建設現場へ異動になった浩一郎は、あらっぽい連中のなかで戸惑うばかり。なかでもひときわ若いとび職人の祭は、特に反抗的だ。子供のような祭にバカにされて少し悩む浩一郎だが、あるとき足場で具合の悪くなったところを助けたことから、祭はうってかわって浩一郎になつくようになる。そして浩一郎の部屋で、ままごとのような同居がはじまり。
少年の息づかいが聞こえてくる、山村での甘酸っぱく、ほろ苦い青春、そして日々の生活。ベストセラー作家が描く文学史にのこる“スペイン版スタンド・バイ・ミー”。--「この小説はドン・キホーテ以来受け継いできたスペイン文学の伝統を引き継いだものである。主人公に立身出世を望む父。その主人公も金持ちの娘ミカに憧れ、年が十も違うのに結婚さえ望む。これらを理想主義の象徴とすれば、この村に止まり、ガキ大将ローケの下に庇護されて、楽しく子供として過ごし、やがてはソバカスだらけのウカ・ウカをお嫁さんにしようか、という現実主義、この二つが主人公の心の中で絶えず戦いながら、最後にウカ・ウカによって、現実主義と理想主義の統一を暗示する構成になっている。また、悪童三人組が繰り広げるいたずらの数々、ガキ大将ケーロの逞しさはピカレスク小説の祖『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』を彷彿させるものがある。」(訳者あとがき)