2000年3月発売
1967年3月、プラハ。チェコスロバキアは共産主義の抑圧から脱し、経済改革と自由化への気運を高めつつあった。そのさなか、堀江亮介はビーナスのようなカテリーナ・グレーベと出会った。だが、亮介は日本国大使館員、カテリーナは東ドイツ人の反体制活動家。東西対立の最前線の地では、禁断の愛だったー現役外交官が自らの体験をもとに描いた、国際ラブ・ロマン。
1968年4月、プラハ。カテリーナがナビゲータを務める国際放送番組『ミレナとワインを』のオン・エアが開始された。反響の大きさに周辺諸国は警戒を強める。この一件が引き金になり「プラハの春」も、亮介とカテリーナの愛も、破局へのカウントダウンを刻みはじめるー時代の奔流に呑み込まれ、歴史の闇に葬られた、美しくも哀しい愛。
私立探偵・鴨田英作のもとに、名器ストラディバリを護衛して欲しいという依頼が舞い込んだ。所有者は世界的に有名なヴァイオリニスト、辻真理。ところが、彼女の凱旋祝賀パーティ当日に事件が発生した。辻真理が演奏を開始した途端、“ダーン”という大音響が響き、最上席の中央の紳士が夥しい血を流して倒れたのだ。凶器は被害者の胸ポケットにあった小型ピストル。果たして自殺か、それとも…。鴨田英作と犯罪捜査用スーパーパソコン『ゼニガタ』が活躍する表題作他、警視庁のキレ者・フグハラ警部の名推理を描いた作品を収録した傑作短編。
放送局に入社した武田光司は、型破りの伝説的な営業マンとして実績を上げた。だが、サラリーマン生活にあきたらず、友人の勧めで独立を果たし、自転車の輸入販売を始める。当初は失敗が続いて苦悩するが、持ち前の明るさと根性で踏ん張り、たび重なる困難を乗り越えていく。やがて販路として開拓したイトーヨーカ堂の信用を得て、その成長と共に事業を拡大、ベンチャー企業を見事に育て上げる。夢の実現に全力で立ち向かう男のロマンと、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊会長をはじめ、人との得難い出会いを描いた力作長編。
関ケ原の合戦に勝利をおさめ征夷大将軍となった家康は、念願の江戸幕府を開くと厳しい政策と大名支配により盤石の体制を築き上げる。圧倒的に不利な状況のなか、豊臣秀頼を戴いた大坂方は最後の大勝負に出るが…。偉大なる父・家康の背中に息子・秀忠は何を見たのか。徳川政権の継承という壮大なドラマは佳境へ-。
高校を卒業して地元で働くなずなは、高校の先輩・村井健人と結婚。ところが結婚式の最中に、突然ひとりの女性が乱入し花婿を連れ去ってしまう。妊娠3カ月だったなずなは、子供を産むことを決心するが…。子連れヤングママが繰り広げる笑いと涙の肝っ玉奮闘記。
ホークスヘッド伯爵は、首相から内密にパリでの情報収集を依頼された。ロンドンから馬車で発った道中事故に遇い、若い娘に助けを求められる。バプティスタと名のった彼女は駆け落ちした母を憎むあまりよく似た娘を虐待する実父に耐えられず、逃亡を図ったという。仕方なく同行させたものの激しい雷雨に予定外の汚い宿に入る。その後、一行は強盗に襲われるが夜中に目覚めたバプティスタが襲撃計画に気づき、難を逃れた。半世紀を越えて読みつがれてきたロマンス界の女王、豪華絢爛、清純なヒストリカル・ロマンス。
昭和十六年十二月八日の宣戦布告前に、マレー半島上陸を目前にした陸軍第二五軍の輸送船団が、英空軍の哨戒機に発見された。この情報により英極東方面軍司令官のマウントバッテン卿は、戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋艦レパルスを出撃させる。一方、米太平洋艦隊司令長官のキンメル大将も真珠湾に停泊中の戦艦群を洋上待機泊地であるハワイのラハナイへ移動させた。日本陸軍の輸送船団に迫るP・O・Wとレパルスに対し、井上中将率いる第四艦隊の戦艦群と水雷戦隊が急行する。一方、米太平洋艦隊には敵戦艦群の漸減攻激としての南雲機動部隊が、さらに打撃部隊の連合艦隊主力戦艦群が出撃した。
愛についてずっと考えてきた。母の恋愛はあまりにも不可解だった。それでもよく考えてみようと思う。いや、考えなくてはならないのだ。カナダの文学賞を多数受賞したネオ純文学。次世代を担う新鋭作家が実験的手法で描く不可思議な愛の世界。
戦国の世に終止符を打つ徳川政権誕生、その前夜。勇猛無比の武将本多忠勝の娘稲姫と、西軍の知将真田昌幸の息子にして徳川につく信幸の結婚。疾風怒濤の歴史のうねりを生きる人間ドラマを、止まった蜻蛉(とんぼ)が切り落とされる名槍「蜻蛉切り」の数奇な運命に託して描ききる大作。