2000年発売
天変地異や変事を扱う陰陽寮の頭、弓削是雄は当代一の術士と衆人より目されていた。彼は陰陽師の紀温史、蝦夷の淡麻呂、陸奥で山賊の女頭目であった芙蓉…と多士済済の者たちを配下に従え、忙しい日々を送っていた。そんなある日、羅城門に人の倍以上も背丈がある鬼“長人鬼”が現れた。一方、是雄は関白からの急な呼び出しがあり、「淡路行き」の命を受けるが…。是雄たちが怪異の謎に挑む、妖かしの新物語。
どこにでもある新興住宅街のアパートで、その前代未聞の事件は起った。血まみれの現場には、臓器を取り出され、全裸となって変わり果てた美人OLの姿があった。しかも臓器の一部を持ち去られてー。いったい被害者の身に何が起ったというのか?やがて、彼女を執拗につけ狙っていたものが、次々に浮かび上がるが…。鬼才・友成純一の描く戦慄のストーカー世界、書き下ろし。
徳川家康は南光坊天海ら密教僧に命じて、新たなる領地となった江戸を霊的防御都市とするべく開発、その力で豊臣家に成り代わって天下人たらんと目論んでいた。その動きに気付いた石田三成は、陰陽師半井を借り受け、家康の野望を粉砕するべく妨害工作を開始する。江戸と京都で繰り広げられる密教僧と陰陽師との法力合戦の勝敗はいかに!そして現代まで続く江戸ー東京の繁栄の源となった風水の秘密とは。
有田順二は通勤電車で「痴漢」の濡れ衣を着せられた。起訴された有田は争い続け、無罪が言い渡されたが、結局その間に職を失い、妻と離婚した。有田は心身ともに荒廃していった。そんなある日、飲み屋で熊谷という男に「雑談クラブ」へ誘われた。そこは心に深い傷を負った被害者たちの憩いの場であった。そんな折、有田を含む四人の常連たちの加害者たちが、相次いで死傷した…。心に傷を背負った人間たちを描くホラーミステリーの傑作。
前半生の遊蕩、後半生の漂泊、望郷の念にかられながらの客死…。放浪詩人柏木如亭の生涯をあとづけつつ、その詩の魅力を語る評伝風評論。遊里吉原と女、旅で訪れた信濃・越後・西国・東海道の各地、身近な食物などを題材に、江戸時代後期の漢詩の日本化を体現しつつ、時代からは隔絶した生き方をした詩人を考察する。
半人前の落語家は半人前なりにアタマを抱え、オタオタする。師匠のハッキリしない病状、芸人の勲章と命取りになりそうなキズ。憧れ、夢見て門を叩いたはずが、厚〜い壁にぶちあたり、いまもくすぶっている。談志の高弟が噺家の世界を描く書き下ろし短編、全五篇。
誘拐犯の目的は、カネではなかった。脅迫状にはただ一言。「ハンマークラヴィーアを弾け。しかも、完璧に」-。突然変更されたプログラム。紛糾する音楽祭。苦悩するピアニスト。2回目の本番が近づく…。このベートーヴェンの長大な難曲のどこかに、謎を解く鍵が?札幌とロンドンを舞台に華麗に展開する音楽ミステリー。
米軍が密かに建設したサモア諸島の基地を叩き、圧壊深度での激闘に耐え、見事に初陣を飾った伊号第400潜水艦。トラック環礁に帰還直後、連合国側が開発を焦る、新型爆弾の原料・ウラニュウムの採掘基地を撃滅せよ、との命令が下る。だが、基地のある場所は、氷山がひしめき、ブリザードが吹き荒れる南極であった!いっぽう、日本軍の動きを察知した米軍は最新鋭の駆逐艦を南極に派遣。“眼下の敵”伊号第400潜水艦に向け、激烈な爆雷戦を仕掛けるが…!圧倒的迫力で、氷海での想像を絶する戦闘を描く大人気シリーズ、好評、書下ろし第二弾。
東大駒場キャンパスには七つの迷宮がある。その全てに足を踏み入れたとき、明らかになる真相とは!?新興宗教サークル『思索と超越研究会』に所属する東大生・葛城陵治は、朝の勧誘活動中に不思議な女性と出会う。彼女・鈴葦素亜羅はいくつもの宗教をかけもちして天才的な勧誘活動を行なう、人呼んで〈勧誘女王〉だった。彼女の独特な考え方に戸惑いつつ惹かれる葛城。やがて素亜羅も入会した葛城たちのサークルは、駒場寮での死体発見に始まる奇怪な事件の連鎖に遭遇する!新本格推理の雄・小森健太朗が母校・東京大学を舞台に巻き起こす怪事件。この迷宮に、出口はあるのか。
銀河の二大勢力、スコーリア王圏とユーブ帝圏それぞれの王位継承者、スコーリア女王ソズとユーブ皇子ジェイブリオルが、ともに謎の死を遂げてから十数年。だが、かれらの死は偽装だった。許されぬ恋の果て、未探査惑星へ逃亡したふたりは、誰にも知られることなく暮らしていたのだ。しかし、銀河を揺るがす激動の波は、ついに幸せに暮らすかれらのもとへも及んだ…美貌の王女にしてサイボーグ戦士ソズ、待望の再登場。
スコーリア王クージ、ユーブ皇帝と相討ち!衝撃の報せに銀河は震撼した。混乱のさなか、ジェイブリオルはユーブ帝圏によって拉致され、傀儡皇帝となることを強いられる。いっぽう、愛する兄クージと伴侶をともにユーブ帝圏の手で奪われたソズは、スコーリアへと帰還し、王位に就くことを宣言した。兄の復讐と夫の奪回を誓う彼女は、ユーブに対して全面戦争を挑むことを決意するが…華麗なる「スコーリア戦史」第三弾。
銀行の金庫室に長年眠っていた大量の録音用蝋管。それは大恐慌下の1934年、検察官トム・フレッシュアワーが遭遇した事件の記録だった。当時、彼はアマチュア考古学者レイニーとともに遺跡発掘品収集家の首なし死体が発見された事件を捜査していたのだ。真相を追う彼らの前に次々と発生する凄惨な殺人と発掘品盗難。その末に浮かびあがる驚くべき事実とは?情感溢れる筆致でサスペンスフルに描く、アメリカ図書賞受賞作。
経営難に陥った学園に校長として赴任したホーソン。性的虐待や薬物濫用で傷ついた子どもが通う学園を再建すべく、彼は改革に乗り出すが、反発する教師たちとの対立は深まっていく。そんな折り、放火で妻と娘を失った彼の悲惨な過去が何者かの悪意で暴かれ、ある教師の部屋が侵入者に荒らされる事件が起きる。やがて、ホーソンのもとに亡き妻をかたる女性から執拗な電話が!その時から、校内を死の影が覆っていく…。
首吊りにされた猫の死骸、学内の臨床心理士の自殺。さらに、プールでは首を鋭利な凶器で刺された男子生徒の死体が発見された。季節は酷寒の冬を迎え、学内で不穏な空気が高まっていく。そして吹きすさぶ雪で学園が外界と隔絶した時、女子生徒に魔手が迫り、ホーソン自身にも危険が!心に癒せぬ傷を負った人々が織りなす、悲哀に満ちた人間ドラマ。『死せる少女たちの家』の著者が、人間の心理を抉った渾身のサスペンス。
まいった。大学教授で作家のグレイディは危機に瀕していた。書いても書いても原稿が完成しないのだ。そのうえ妻には逃げられ、愛人からは妊娠を告げられる始末。そこへ破滅型の担当編集者クラブツリーがやって来て、事態はさらに混沌としてきた。ひょんなことから、彼はクラブツリーと変わり者の教え子ジェイムズと共に狂乱の週末を過ごす羽目に…書くことに取り憑かれた人々の狂騒をシニカルに描く、ポップ・ノヴェル。
ジョージ・マクティアは、番組制作会社のプロデューサー。16,575ドルという破格の週給を得る彼は、苦労のすえ、新番組の契約をとりつけた。妻のリジー・ジンバリストは、ソフトウェア会社の社長。自社株を売却するため、マイクロソフトと交渉を重ねている。家族で過ごす時間が限られた二人は、Eメールを交わして子供たちとコミュニケーションをとる。慌ただしい一日のあと迎える二人だけのわずかな時間。秘密はいっさい持たないけれど、互いのビジネスには干渉しない-これが夫婦の信条だ。そんな二人に衝撃が走る。ジョージの母の事故死、リジーの父の容態の急変。二人は会社で用意してくれたジェット機で、斎場から病院へと駆けつける。そして、心を休める暇もなく、次の仕事に奔走するのだった。帰路、ホテルの部屋で一人悲しみにふさいでいたジョージは、夫婦で共有しているコンピューターを立ち上げた。誤って開いた妻のファイルには、彼の上司のファーストネームが。突然持ちあがった妻の不倫疑惑。彼の日常を揺るがすこの事件は、世紀の変わり目までつづく混乱の序章にすぎなかった…。舞台は2000年2月28日から2001年年明けまでのニューヨーク。時代の最先端に立つ夫婦を通し、現代社会の断面が鮮やかに描かれる。21世紀を迎えるまでを現在進行形で体験できる画期的小説。