2000年発売
戦国の世に終止符を打つ徳川政権誕生、その前夜。勇猛無比の武将本多忠勝の娘稲姫と、西軍の知将真田昌幸の息子にして徳川につく信幸の結婚。疾風怒濤の歴史のうねりを生きる人間ドラマを、止まった蜻蛉(とんぼ)が切り落とされる名槍「蜻蛉切り」の数奇な運命に託して描ききる大作。
サックス奏者のナンは演奏中に出会った男を家に泊めた。が、目覚めて愕然とした。何者かに男が殺され、彼女のサックスの中に大金が隠されていたのだ。数日後、男の恋人が他殺体で発見され、ナンは殺人現場で聞こえたという謎の言葉“赤い鶏”の意味を探る…タフなストリート・ミュージシャン、ナン登場。注目の新鋭がジャズの旋律にのせて贈る新シリーズ。
満洲・大連で探偵事務所「大連新生公司」を開く草壁新生。若い中国人女性が彼のもとを訪ねてきた。名前は周莉。ダンスホールの美人ダンサーだ。奉天に行くと言って出かけたきり行方不明になった恋人の李雄の捜索を依頼に来たのだ。『満洲日報』記者の五十嵐の話によると、先日起きた張作霖爆殺事件の謀略に雇われた中国人のひとりが逃走中らしい。果たして李雄なのか?草壁は、周莉の勤めるダンスホールを張り込むが、支配人の惨殺死体を発見。そこへ李雄が姿を現した!歴史小説の気鋭、トクマ・ノベルズ初登場。書下し長篇歴史ミステリー。
二十年に一度の祭りの生神役として南の孤島を訪れた律子を待ち受けていた奇怪な呪文。何とも不思議な儀式と風習の中、神罰を受けたという謎の死体-成子様に逆らい呪殺されたという…。律子からの連絡を受け、朱雀と後木も島へ向かう。その名も『鬼界ガ島』。新たなる異界に挑む朱雀十五。シリーズ絶好調!孤島を血花に染める連続殺人の謎。朱雀十五が秘められた異界の扉を開く!書下し長篇新本格探偵小説。
週末に毛利家に宿泊した八人の男女。下宿人の新人小説賞受賞を祝ってささやかなパーティーが催されたのだ。翌朝、客のひとりが撲殺死体で発見された。凶器は中庭の傘立てに立て掛けてあった金属バット。容疑者として被害者の大学時代の友人が逮捕された。だが、八人にはそれぞれ一口では言えない心のぶつかり合いがあった。真犯人はこの中にいる!書下し表題作他五篇の傑作推理連作集。
日本の近代児童文学が誕生して130余年、その歩みは幾度かの浮沈を繰り返してきた。第2次大戦後、小川未明の詩的なメルヘンの世界を真似るだけの未明伝統を克服し、劇的でロマンに富んだ児童文学の必要を提唱した著者が、世紀末を迎えて再び沈滞する創作児童文学の再生の可能性を探る。
ただ、寄り添っているだけで家族でいられたらー夫の不在、子どもたちだけとの日々が、次第に「私」を不安定にさせていく。主婦としての平穏な暮らしの中でふと抱く漠とした孤独。現代家族の危うさともろさを浮かび上がらせた、著者のデビュー作。他4篇を収録。
デザイナーの卵・アマンダはあるとき母親から、出生時に産院で別の赤ん坊と間違えられたことがあると、聞かされる。見ず知らずの「間違えられた」相手に惹かれた彼女は、それが著名な画家ギャリスンの息子ソーンだと知る。「もしや私の本当の父親は…」ロマンチックな興味からギャスリン家を訪ねた彼女は、彼の莫大な財産をめぐる巧妙な殺人計画に気づくが、殺人者の魔手は彼女に伸びてきた!サスペンスの女王渾身の傑作。
登場いたしますは、せめて十年早く入門してりゃ…の遅れてきた落語家たち。対立候補を同時に応援させられる破目ンなるわ、お客求めてアフリカ遠征までするわ、アイドル歌手への道はきっぱりと捨てるわ、あげくにキテレツな女と運命的に遭遇しちまうわ。時流がわからネェ絶対に売れネェ、要するに談四楼の分身みたいな連中の、落後しそうに不器用な日日を、情熱的な軽妙さで語る。
わたしはハングルに感電したー。アメリカで出会った友人に影響され、雅美は韓国語に魅せられて、ついに留学を決意する。ところが文化の違いから、いらだちと挫折感を味わうようになって…。東京とソウルを行き来する青春の日々を新しい感性で描く『君はこの国を好きか』に、ふとしたことから、在日であることを自覚させられる男子大学生を主人公にした『ほんとうの夏』を併録。
女は毎日、まだみずみずしい花束を捨てていたー古典的探偵小説を連想させる殺人現場と、緻密な計画が意表を突く「花を捨てる女」、家出から戻った妻が別人だと親友が通報する「アイデンティティ」、次々と現れる遺言書に状況が翻る「三通の遺言」など、絶望に迷路から女たちが仕掛ける、繊細で大胆な殺人事件の数々。愛に迷う女たちの心のひだを鮮やかに編んだ推理短編集。