2001年2月15日発売
仲蔵狂乱仲蔵狂乱
「存分に舞い狂うてみせてやる…」江戸は安永ー天明期、下積みの苦労を重ね、実力で歌舞伎界の頂点へ駆けのぼった中村仲蔵。浪人の子としかわからぬ身で、梨園に引きとられ、芸や恋に悩み、舞いの美を究めていく。不世出の名優が辿る波乱の生涯を、熱い共感の筆致で描く。第八回時代小説大賞受賞作。
ラム氏のたくらみラム氏のたくらみ
イギリスにある小さな村、ハーズリー。そこで小さな郵便局の局長を務めるノリス・ラムは、五十五歳にして初めて恋に落ちた。人類が初の月面着陸を成功させた夜、ラムは運命的な光景に遭遇する-長年同じ村で暮らすヴィーダが、月光のなか、半裸で踊っていたのだ。その姿を目にした瞬間、ラムは彼女に心を奪われてしまう。ヴィーダは、裕福な建築家の息子で障害のある青年を、二十年のあいだ母親のような愛情をもって世話してきた。自分の気持ちを打ち明ける術を知らないラムは、そんな心優しいヴィーダのことを、木陰からそっと見守ることしかできない。この恋をけっして無駄にはしたくない-激しい情熱に突き動かされたラムは、勇気を奮い、初めて自分の手で運命を切り開く決意をした…。中年男性の切ないまでの恋心を詩のようにうたいあげ、心に深い余韻を残す名篇。
練塀小路の悪党ども練塀小路の悪党ども
相手が大名だろうが、何だろうが恐いものなし。ご存知、数寄屋坊主の河内山宗俊。練塀小路にある宗俊の屋敷には、彼を慕う悪党どもが、日毎、ゆすりたかりのネタを持ち込んでいた。大仕掛けの絵図を描き、真の悪人の弱みを握り懲らしめる宗俊。そんな男気あふれる彼の裏をかく、凄腕の奴も現れて…。色と欲に彩られた男女の、二転三転の成り行き。江戸情緒のなかに悪の美学が冴える。連作ピカレスク・ロマン。
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