2001年2月発売
もどろきもどろき
祖父の営んでいた京の米屋の店先で、みずから命を絶った父-。「もどろきさん」、京都と滋賀県境の還来神社をめぐって、祖父・父・私、三代の記憶と現在が交錯する。さまざまな時代を生きた人びとの、語られなかった言葉、「デッド・レター」の行方は。
暗黒街のハリ-暗黒街のハリ-
英国がまだ戦争の痛手から立ち直れず、不景気と不安が社会を覆っていた1960年代。ロンドンの裏社会でのしあがった一人のギャングがいた。「拷問好き」と綽名され、詐欺、麻薬密売、ポルノ販売、買収、脅迫、さらには殺人にいたるまで、悪いことならなんでもこなし、いまやかのクレイ兄弟と覇を競うまでになった男、ハリー・スタークス。だが、手下たちにも見えにくい意外な顔を、ハリーはまた持ちあわせていた。オペラを聞き、チャーチルを尊敬し、有名人には弱く、愛した青年たちや母親には優しい。その真の姿を知る者はどこにもいない。度胸と奸知と暴力を武器に、次々と敵を消し、金を掻き集め、やがて時代が彼を必要としなくなるまで、ハリーは暗黒街を駆け抜けていく…激動の時代を背景に、一人のギャングが、いままさに伝説となってゆく。
自白の風景自白の風景
菊山事件-妹をレイプした男を刺殺したとして起訴された矢代昌宣は、警察での自供を翻し、終始無実を訴え続けながら、控訴審中に獄死した。それから十八年。弁護団は、現在も冤罪事件として再審請求に向け活動を続けている。そんななか、事件の裁判長だった滝川実が、ひき逃げされて死亡した。容疑者として逮捕されたのは、現場近くに住む元警部で、かつて矢代を自供に追い込んだ堀内利勝だった。堀内は苛酷な取り調べの末、自供するが…。菊山事件の復讐のために誰かが仕掛けた罠なのか?傑作長篇ミステリー。