2001年5月31日発売
禁忌は、破るためにある。進まない改革、唐・新羅の侵略の恐怖。理想に胸を焦がした権力者は、焦燥と妄想の狭間で、弟を憎み、そして妹を欲した。既得権益に淫する勢力に立ち向かう困難さと、革命者の孤独と猜疑心を描いた気迫の歴史大作、ついに最終章へ。
エルシードが凶刃に倒れた!ヴァレリー、リチャードがともに膠着状態の均衡を破ろうとした折りも折り。イスラムにとって、人ならぬ神ーエルシードの不在は大きい。しかし、これ以上戦が長引けば聖都は飢えに苦しみ、徒に戦闘意欲を失う。この戦いに勝利し、休戦交渉を有利に運ばなければ、イスラムに未来はない。決意を秘めた戦いが始まった。
戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理ー非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。
品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々-過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。
過去を持たず、空虚な存在として生まれた精神科医ジャックモール。その精神分析は、他者の欲望・願望を吸収して自己を満たすために施される…本書は、軽みとペシミズムが同居するいつもながらのヴィアン風味を保ちながらも、後者により比重のかかった著者最後の長篇小説である。ジャックモールのうつろで行き場のない姿を、発表後50年経った現在を生きる若者に重ね合わせてみるのも、決して無謀な試みとは言えないだろう。
打ちのめされても絶望しても、生きていれば愛にめぐりあう。学業を途中で投げだしたウブな乙女が男だけの修羅場に乗りこんで…彼女が花火だと思ったのは戦場の砲火だった。平和に慣れきった目に映る、まさかの連続。這いつくばって逃げ延びた彼女に残されたものは…。ぎりぎりの愛の強さと純粋さ。あなたの知らない世界がここにある。増えつづけるダニエル・スティールファン必読の傑作。