2003年12月21日発売
重病の床にあった孫権が逝くと、圧倒的な軍事力を誇る魏は即座に軍を動かした。しかし呉はこの進出を阻み、准南に二十万の大軍を送る。攻防三か月、呉軍は猛暑のため撤退を余儀なくさせられた。三国の戦いは限りなく続く。蜀は魏に滅ぼされ、魏が司馬炎の晋に敗れ去る。そして、最後に残った呉も…長江の水だけが悠久の流れを見せる。
ナイロビの英国高等弁務官事務所に勤める外交官ジャスティンは、庭いじりをこよなく愛する中年男だ。礼儀正しく誠実な人柄で知られている。そんな彼のもとに、突然、最愛の妻テッサが、咽喉を掻き切られて全裸で発見されたという知らせが飛びこんだ。人類学者リチャード・リーキーの発掘現場に向かう車中で、何者かに襲われたのだ。静かな怒りとともにジャスティンは、真相解明に立ちあがる。
美しい若妻テッサは、死の直前まで、熱心に救援活動をしていた。ジャスティンは生前の行動を克明に追うことから事件の全貌を解明しようと決意する。それはテッサの問題に、彼自身が向き合うことだったー第三世界に対する医薬品供与の恐るべき実態、官僚と多国籍企業の癒着、それを告発するNGO。いったい世界はどうなっているのか。冒険小説の巨匠ル・カレの到達点ともいうべき最高傑作。
静かな辺境の町に、二十数年ものあいだ民政官を勤めてきた初老の男「私」がいる。暇なときには町はずれの遺跡を発掘している。そこへ首都から、帝国の「寝ずの番」を任ずる第三局のジョル大佐がやってくる。彼がもたらしたのは、夷狄(野蛮人)が攻めてくるという噂と、凄惨な拷問であった。「私」は拷問を受けて両足が捻れた夷狄の少女に魅入られ身辺に置くが、やがて「私」も夷狄と通じていると疑いをかけられ拷問に…。
午後十時、ブルームは国立産婦人科病院に立ち寄り、談話室の宴会で、出産を芸術家の創造にたとえるスティーヴンに注目する。男子出産とともに舞台は酒場から夜の町へ。途中、電車に轢かれそうになったブルームは、幻覚に襲われる。やがてスティーヴンにも幻覚が現れ、母の亡霊を見てシャンデリアを叩き割る。ブルームは、スティーヴンを介抱しながら、その姿に死んだ息子ルーディを重ねる。(第14挿話、第15挿話)。
ブルームは、馭者溜り(喫茶店)へスティーヴンを連れて行き、モリーの写真を見せて紹介する。午前二時、二人は音楽談義に興じながら、ブルームの家に向かい、ココアを飲んで、別れる。ブルームが眠りについた後、モリーは考える。Yesで始まる長い回想と独白は、やがてこれまでの人生、自分が知る限りのブルームの人生におよんで行き、ブルームを許しつつも多義的で混沌としたYesで閉じられる。(第16挿話〜第18挿話)。