2003年5月発売
13歳で女工として海を渡り、日本へ。従姉の死。悲しみの帰郷。結婚。ふたたびの渡日…。いつも拠り所のない思いにかられながらも、現実を乗り越え、生き抜いてきたひとりの朝鮮人女性の物語。
浅見家の出来の悪い「坊っちゃん」として肩身の狭い思いをしているぼくは、おふくろの説教から逃れるように漱石や子規の足跡を辿る松山取材に出かける。途中、瀬戸大橋で出逢った「マドンナ」に痴漢と間違われて「イノブタ」警官に睨まれたりしたが、名跡を訪れて文豪たちを偲んだり、内子座で句会を覗いたりするうちに、そんな不快なことも忘れていた。だが、その「マドンナ」が殺され、しかも第一容疑者はぼくらしいー!?名探偵の浅見自身が軽妙に語る文学散歩ミステリー。
宝くじが当たった!! 賞金で夕食会を企てるも、片山は殺人容疑者とバスに同乗、晴美は現金強盗事件に巻き込まれ、石津は死体発見者に。果たして夕食会に全員集合はかなうのか?!
アメリカ・ペンシルベニア州で、夫婦の冷凍死体が発見された。五歳の息子は行方不明のまま、事件は迷宮入りする。一方、日本では、異常な兆候を示す少女がいた。数年後、恋人を亡くし、重度障害児施設に赴任した女医・志度涼子は、保護室に閉じ込められた少女に出会う。そして、運命の歯車は容赦なく回り始めたー。人類という種が背負った哀しい宿命を、壮大なスケールで描いたヒューマン・ミステリ。第二十回横溝正史賞正賞受賞作。
企業ヤクザの顧問を務める弁護士・小早川の事務所に、あらたな事務員として紀籐ひろこが採用される。その当時、小早川事務所は二件の交通事故の弁護を同時に引き受けていた。一件は謝罪の意思の無い加害者の弁護。もう一件は死亡現場に警察の見つけていない証拠の残された事件であった。素人同然のひろこは難航していた二件の糸口を見つけだす。才能あるひろこに次第に惹かれていく小早川であったが、身元を調査した結果は…。究極の女性を好きになった男の深き苦悩と愛情の物語。
恋人を死に追いやった連続殺人犯を射殺した瞬間、刑事・小林洋介は多重人格探偵・雨宮一彦へと変貌を遂げた。刑務所で彼を待ち受ける不可解な事件!
雨宮一彦に興味を抱いた伊園磨知が、彼をもとを訪れたとき、街では犯罪専門の非合法FM局が特別プログラムを開始した。次々と起きる猟奇事件の真実とは?
【サマセット・モーム賞受賞】 1874年の秋、監獄を訪れたわたしは、不思議な女囚と出逢った。ただならぬ静寂をまとったその娘は……霊媒。戸惑うわたしの前に、やがて、秘めやかに謎が零れ落ちてくる。魔術的な筆さばきの物語が到達する、青天の霹靂のごとき結末。魔物のように妖しい魅力に富む、ミステリの絶品!
トシオ・マナハン、13歳。フィリピン、セブ島のガルソボンガ地区に祖父と住み、闘鶏用の軍鶏を育てる日々だった。奥地の「虹の谷」には元新人民軍のゲリラ、ホセ・マンガハスがひとり住みついて闘い続けている。そこへ行く道はトシオしか知らない。日本から戻ってきたクイーンを谷に案内したことから、トシオはゲリラたちの内紛に巻きこまれていく。直木賞受賞の壮大な少年の成長物語。
トシオ・マナハン、14歳。セブ島で祖父とふたりで闘鶏用の軍鶏を育てている。ゲリラのホセ・マンガハスが住む「虹の谷」への道を知っていたことから暗殺、誘拐の硝煙の宴に巻きこまれていく。少年の夢。怒りと誇り。愛する者との別れ。慟哭の叫びを胸奥に沈め、少年は男へと脱皮して行く。第三世界の片隅から世界を睥睨する冒険小説、感動の巨編。直木賞受賞作。
昭和四十四年、京都。大学の新入生で、大の日本映画ファンの「僕」は友人の清家忠昭の紹介で、古き良き映画の都・太秦の撮影所でアルバイトをすることになった。そんなある日、清家は撮影現場で絶世の美女と出会い、激しい恋に落ちる。しかし、彼女は三十年も前に死んだ大部屋女優だったー。若さゆえの不安や切なさ、不器用な恋。失われた時代への郷愁に満ちた瑞々しい青春恋愛小説の傑作。
日本語に未来はあるのか!ラ抜き言葉、意味不明な流行語、間違った言葉遣い、平板なアクセント、カタカナ語の濫発…日本語の現状を憂う聴取者からの投書の山に、ディレクターは圧死寸前!?(「日本語の乱れ」)。その他、比喩の危険性、音声入力の可能性と限界、宇宙を蹂躙する名古屋弁など、言葉をテーマにした傑作12篇。
恋人のキタザワに誘われ、同居することになった南。ところが、そのマンションにはキタザワの遠い親戚マリコとその恋人サトシが住んでいた…。成り行きまかせで始まった男女四人の奇妙な共同生活を描く表題作ほか、別れの予感を抱えた若い夫婦があてのないアジア放浪に出る「かかとのしたの空」を収録。今を生きる若者たちを包む、明るい孤独とやるせない心をうつしだす作品集。
シリアルキラーJの襲撃により、意識不明に陥った刑事・胡田キョウジと、彼の婚約者でルポライターの向河原友梨。二人にはある“秘密”が-なんとキョウジの意識は、友梨に“憑依”していたのだ!キョウジの入院先で、小学生の幡野一輝が誘拐された。彼が姿を消した同時刻、キョウジも何者かに襲われる。そんなとき、新興宗教団体の教祖殺人事件が発生。死体の上半身だけが見つかった現場には、Jの犯行の足跡が…!教祖殺人事件の謎を追い、岐阜にある氷瀑・阿弥陀ケ滝を訪れた友梨だが、そこには“雪の密室”が待ち受けていた!二重三重に仕掛けられた謎また謎!“本格”と“トラベル”を見事に融合させた書下ろしシリーズ第二弾。
「おおっ、これは不可能犯罪だ!」歓喜の雄叫びを挙げ、小躍りする熱狂的マニア・黒星光警部。あの名作、この傑作が走馬灯のように脳裏を駆けめぐるが…。折原ワールドの「企み」が満載!人気シリーズ、待望の最新刊。
阿南隼人の従兄・渓輔が、妻と子供二人を道連れに無理心中をはかった。彼は事件の数ヶ月前から悪夢に魘されていたらしい。遺品を整理した隼人は、妙な書き込みのされたメモ帳を発見する。“たしかに彼女にどこかで会っている”“汚染された黒い空気”“顔に黒い痣ができている”-これらは、隼人が最近見る悪夢と共通する内容だった。ある日、彼のマンションに浦添香菜子という女が越してくる。初対面なのに「たしかに彼女にどこかで会っている」気がする隼人。やがて彼の恋人・山際理恵子も、同様の夢に苦しめられていることがわかり…。注目の新鋭が描く、戦慄と怨讐の書き下ろしホラー長編。
上杉景虎との邂逅。直江兼続の胸中で懐かしさと苦さが交錯する。袂を分かって以来、景虎は兼続と彼の主である上杉景勝を恨み続けている。突然面会を申し入れてきたのには、何か裏があるというのか…。確か、景虎は会津征討へと北進する徳川勢の一角に名を連ねていたはず。「恨み骨髄の我らに何やらお話があるとか」年を経ても変わらない景虎の凛々しい目を、兼続は正面より見据えた。「内府が兵を退いておるぞ。早くせねば、三河狸が逃げおおせてしまうわ」久しぶりに聞いた景虎の第一声は、「またとない機会」を兼続に告げていた。(家康、逃げるでない。天下が欲しくば我らと一戦交えよ)兼続は逸る気持ちを目前の男に気づかれぬよう、両の拳を握り締めた。