2003年9月1日発売
完全な遊戯完全な遊戯
『太陽の季節』で既成文壇に敢然と挑戦した著者の、同時期の傑作を集めた短編集。不良少年たちが、精神を病む女を弄び、海に突き落とすまでの無軌道ぶりを描く表題作。賭場の若い女の豪胆な賭け方に魅せられた男が語る「乾いた花」。鱶の化身のような女と少年の交流を幻想的に描いた「鱶女」など5編。他に弟・裕次郎の出世作となった映画「狂った果実」の原作を特別収録する。
生きる歓び生きる歓び
作家に拾われた瀕死の子猫は、いっしょうけんめい生き延びた。死のぎりぎりの瀬戸際で「生」に目覚めた捨て猫の命の輝きを、抑えた筆致でやさしく描いた「生きる歓び」。作家・田中小実昌への筆者の関わりと想いを綴った異色の追悼小説「小実昌さんのこと」。生の中の死を見つめ、死の中の生を感じ取る。世界を肯定するための、新しく困難な文学の試みが結晶した短編二作を収録。
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