2004年発売
張り詰めた東京での生活に疲れ、すべてを捨てて上海に留学した有子。しかし、どうにも断ち切れぬ思いは、70年前、この地で生き、同じ思いを抱えた大伯父の幽霊を呼ぶ。枯れた玉蘭の花とともに…。交錯する二つの思いは時を越え、“過去”と“現在”を行き交う。人は恋愛の果てに何を得るのか。
コウコは、寝たきりに近いおばあちゃんの深夜のトイレ当番を引き受けることで熱帯魚を飼うのを許された。夜、水槽のある部屋で、おばあちゃんは不思議な反応を見せ、少女のような表情でコウコと話をするようになる。ある日、熱帯魚の水槽を見守る二人が目にしたものはーなぜ、こんなむごいことに。コウコの嘆きが、おばあちゃんの胸奥に眠る少女時代の切ない記憶を呼び起こす…。
ある朝バケツ一つだけを持って商店街に佇んでいるのを発見された女の子。14歳という自分の年齢以外何も語らず、施設に入れられたが-リリカルで洗練された語り口で綴られる現代のピーターパンの孤独。もう一度、子ども時代をやり直すとしたらあなたはどこから始めるだろうか?ドイツ新進作家、衝撃のデビュー作。
人を殺め、金を奪い、男を追って満州までやってきた美貌の女郎。大連、奉天、新京、ハルビン…。昭和初期の大陸を舞台に繰り広げられる、めくるめく愛憎劇。
彼がいなければ世界はないのに、どうして彼のいない現実を生きなければいけないのだろう(『お縫い子テルミー』)。アルバイトをして、ひと夏の経験を買った。ぼくは来週の木曜日、十一歳になる(『ABARE・DAICO』)。誰かに明日を翻弄されても、自分らしく強く生きてゆく。心優しき人々に出逢える、二つの物語。
十歳の双子の姉妹が、母親を亡くして初めて迎える夏のこと。屋根裏部屋で、二人は帽子でない帽子“スペシャリストの帽子”を手に入れた…世界幻想文学大賞受賞の表題作ほか、既婚者としか関係を持たないルイーズと、チェリストとしか関係を持たないルイーズー二人のルイーズを描くネビュラ賞受賞の「ルイーズのゴースト」など、米ファンタジイ界最注目作家が軽妙なユーモアにのせて贈る第一短篇集。
もと新聞記者クィラランの親しい友人であるバンバ夫妻がブラック・クリークで宿屋を始めた。クィラランはココと共に陣中見舞に訪れるが、宿屋になっている建物が地元では幽霊屋敷として恐れられているという噂を耳にする。真相を暴こうとクィラランが調査に乗り出した直後、行方不明だった同宿の客が川で死んでいるのが発見され、宿泊客たちに容疑がかけられるが…混迷する事態にココの鋭い爪は真実を捕らえられるか。
セックス中毒の僕は、医大をドロップアウトし、植民地村ダンズボロでエキストラのバイトをしている。カウンセリングに通い、なんとかセックス中毒から抜け出そうと悪戦苦闘しているけど、知り合った売春婦や教師やナースたちの誘惑をやっぱり断りきれない。しかも不幸は重なるもので、母親がいかれてしまって毎月3000ドルの入院費を払わなきゃならなくなった。世の中うまくいかない。しかたなく、僕は毎晩レストランに出没し、「ある演技」をして金を稼ぐことを思いついたんだけど…アメリカ文学界のホープが描く、型破りで切ない、愛と友情とセックスと親子の物語。
移民に溢れかえる“夜の都”東京。巨大都市の膨大なエネルギーを支える“特殊物質”が危険なカルト教団に狙われた!滅びの美神が舞い降りた。大薮春彦賞作家が拓くエンタテインメントの新たな地平。
夫を交通事故で亡くし、ホームレス状態におちいった29歳のミシェル。最愛の子どもたちまで冷酷な義父に取り上げられてしまう。何とか子どもを取り戻したい彼女は、「90日で100万ドル」稼ぐ約束を義父と交わす。さあ、どうする?ミシェルはいかにして不可能を可能にしていくのか。
時代は米ソ冷戦真っ只中、強力なKGBとCIAは、鉄のカーテンを挟んで活発な情報戦を繰り広げていた。一方ポーランドの惨状に心を痛めたローマ教皇は、密かに親書を認めたー政府が抑圧を続けるなら、自分は国民のために教皇の座を捨て、祖国に戻る。教皇の挑戦状にクレムリンは動揺する。ロンドンではCIAの若き分析官ライアンが、英SISに招かれてソ連の経済分析を行なっていた…。
KGB本部地下で、通信将校ザイツェフはどうにも容認できない作戦が進行していることに気付いた。罪のないローマ教皇の命を、なぜ奪わなくてはいけないのか?彼は通勤途中でいつも出会うアメリカ人に近づく。CIAに違いないと睨んだからだ。アメリカ本国ではライアンに期待を寄せるCIA長官が、彼に極秘任務を与え、ライアンは妻キャシーにも言えない作戦に従事することになった…。
製薬会社に勤める恋人、匡と同棲中のひなただが…最近、匡は忙しくてすれ違いばかり。そんなある晩、ひなたはバイト先のレンタルビテオ屋で痴漢に遭遇。しかも、数日後また夜道で襲われかけたところを偶然、元カレの康生に助けられ…。温かい匡の腕に抱かれたくて…でも逢えなくて…ふと揺れてしまうひなたの心。ほろ苦甘い大人の関係は思わぬ方向へと…!?じんわりやさしくショコララブ。
真夏のある日、美形妖魔、司野の営む骨董屋・忘暁堂に、一人のエグゼクティブ然とした金髪男性が…。なんと司野に英国貴族から、家に憑いた霊を落としてほしいという依頼がきたのだ!初めての海外出張に当然、下僕兼お食事係の正路も同行することになったが…。築二百年の屋敷をめぐる謎…正装しての本格ディナー…とドキドキの連続で…。
冥府の淵に咲く花“あやめ”。その甘い馥りが妖しく誘う。腐敗していく“鰈”の重さ。酩酊と覚醒のレールを地下鉄は走る。白い肉の深部の“ひかがみ”。その魔がすべてを食らい尽くす。生と死の間に存在する恍惚のエロス。その果てのない闇に迷いこみ、帰途を絶たれた三人の男。
冬休み、夜行列車の旅に出た少年が巻き込まれる誘拐事件(『その石を消せ!』)。幼なじみの少女の行方を追って西伊豆へ向った少年の冒険行(『まぼろしの遺産』)。窮地の兄を救う弟の活躍(『白い時間を追え』)。西村ミステリーの原点がここにある。