2006年1月25日発売
お金持ちのエヌ氏は、博士が自慢するロボットを買い入れた。オールマイティだが、時々あばれたり逃げたりする。ひどいロボットを買わされたと怒ったエヌ氏は、博士に文句を言ったが……。
ある時代、電話がなんでもしてくれた。完璧な説明、セールス、払込に、秘密の相談、音楽に治療。ある日マンションの一階に電話が、「お知らせする。まもなく、そちらの店に強盗が入る……」。傑作連作短篇!
甲賀忍者、丸子笹之助は“信玄暗殺”の密命を帯びて甲斐に赴く。途中、常陸の鹿島に剣名の高い塚原卜伝を訪ね、その推挙を得て武田家に仕えることに成功する。だが、笹之助は信玄の侍女・久仁に熱い血潮をたぎらせ、密命と恋の板ばさみに陥る。上杉謙信との川中島大会戦前夜、笹之助に課せられた任務を知りつつ、それを許す信玄。その包容力と偉大さに感動した笹之助の背後に強力な甲賀忍者の群れが忍び寄った。
信玄暗殺に失敗した丸子笹之助は、忍者の掟に背き、信玄のために命をかけて働くことになったが・・。名将信玄の悲運と、笹之助の運命の絆を描いて感動を呼ぶ長編。
桜島行きのフェリーの上で、鹿児島選出の代議士秘書が刺殺された。十津川警部の部下・西本の見合い相手・木下ゆかりに容疑がかかる。ゆかりは見合いの翌日に「全部嘘です」というメモを残したまま、失踪していた。そして西本に「ゆかりに欺されるな」と忠告した男が、指宿で殺害される。西本の報告を受け捜査に乗り出す十津川だが、まもなく東京でも殺人が!南九州と東京を結ぶ、恐るべき陰謀の正体とは。
時は一九世紀。イギリスの片田舎で生を授かったオリバー・ツイストは、両親の顔も知らず貧民院に預けられ、貧困と厳しさに耐えて育っていった。やがて葬儀屋に引き取られるが、冷酷な人々の仕打ちは容赦ない。苦しみぬいた末、ついに彼は自らの足で、希望の町ロンドンへと向かう。そこでオリバーに救いの手を差し延べたのは、恐ろしい盗賊の一味だったー。無垢な少年の姿を通して、人間の良心と残酷さを描いた、文豪ディケンズ渾身の社会風刺小説。
「私を誘拐してください」小宮山佐緒理は潤んだ瞳で俺の手を握りしめたー。報酬は百万円、夫の愛を確かめるための“狂言誘拐”を頼みたいというのだ。便利屋の俺は完璧なプランを練り、見事に“誘拐”を成功させる。しかし、身を隠していた佐緒理が部屋で殺されているのを発見し…。偉才・歌野が放つ、誘拐ミステリーの白眉。
不自由な武家社会の中で、不測の事態を切り抜けてゆく人々を描く小説集。郡奉行の一人だった半右衛門は罪を犯した友人の逃亡を助けたために罰を受ける。その後の不遇と人間不信から立ち直る男を描く「田蔵田半右衛門」、種痘術を学び国元に戻った青年医師が、将来を約束していた女性の変貌と向き合う「向椿山」など、いずれも繊細な言葉と、静謐な筆致で紡ぐ短編八編を収録。
倉橋長五郎政重は、徳川家御先手組にあって、無敵の大業“鬼落とし”で知られた槍の名手。家康の名参謀・本多正信の次子にして槍奉行・倉橋長右衛門の養子だが、故あって秀忠公の近習を斬り捨て徳川家を出奔。意地と野心を胸に秘め、慶長の役に身を投じる。前田利家の密命を帯び朝鮮半島に渡った政重だが、そこは人心を捨てねば生き延びられない修羅場であった。
男と並んで愛誓うより、女と並んで笑いを取る、それが二人のしあわせなのだ!駆け出しの漫才コンビ、『アカコとヒトミ』。超貧乏で彼氏なし、初ライブは全く受けずに大失敗。おまけにセクハラ野郎の先輩芸人を殴り倒して大目玉。今はぜんぜんさえないけれど、いつかはきっと大舞台。体に浴びます大爆笑ー。夢と笑いとパワーあふれる傑作青春小説。第16回小説すばる新人賞受賞作。
緩慢に物狂っていく老いた父の背中に、自分の来し方を思いふと立ち止まる中年の男。生涯のどこかの辻で出会い交わり往き迷った男と女。女は受胎して子が産まれ、子は壮年となってまた幾つもの辻に差しかかる。-鋭い感性と濃密な文体で、日常の営みのなかに生と死と官能のきわみを描く十二の見事な連作短篇の世界。
亡くなった夫が、繰り返し話していた故郷の町。遺された妻は、夫が世話になった「その人」に会って、一言お礼を言おうと旅立った。彼女がそこで見たものは…。『セイジ』で多くの読者を感動させた作者の最新作品集。モノローグで語られる三つのバラードは、しみじみと心にしみわたる。