2006年12月発売
障害レースの最高峰、チェルトナム・ゴールド・カップが行なわれる当日、元騎手の調査員シッド・ハレーは競馬場を訪れ、建設会社を経営する上院議員ジョニイ・エンストーン卿から仕事を依頼された。持ち馬が八百長に利用されている疑いがあるので、調べてほしいというのだ。彼は調教師のビル・バートンと騎手のヒュー・ウォーカーが怪しいという。ハレーは依頼を引き受けるが、その直後、競馬場の片隅でウォーカーの射殺死体が発見された。この日、ウォーカーとバートンが罵り合っているのを多くの人が目撃していた。そしてウォーカーは前夜、ハレーの留守番電話にメッセージを残していた。レースで八百長をするよう何者かに脅されていたらしく、「言うことをきかなければ殺す」と言われたという。やがてハレーは思わぬ経緯でウォーカーの父親から息子を殺した犯人を突き止めてほしいとの依頼を受ける。さらに知人から、ギャンブル法改正によって発生する不正についての調査も任される。こうしてハレーは三つの依頼を抱えることになった。そんな折、警察はバートンをウォーカー殺害容疑と八百長の疑いで逮捕する。彼は証拠不十分で釈放されるが、やがて事件が起きた。そのバートンが自宅で拳銃自殺をしたというのだ。どうしても彼が自殺したとは思えないハレーは、調査を進めていく。だが、卑劣な敵は、ハレーの最大の弱点である恋人のマリーナに照準を定め、魔手を伸ばしてきた!『大穴』『利腕』『敵手』に続き、不屈の男シッド・ハレー四たび登場!巨匠が六年の沈黙を破って放つ待望の競馬シリーズ最新作。
ボストン郊外の私立ハイスクール、ダウリング校で発生した乱射事件。スキーマスクで顔を隠し、二挺ずつの拳銃を持った二人の少年は七人の教師や生徒を射殺し、人質をとって図書室にたてこもった。警察の包囲と説得の末、六時間後にそのうちの一人で生徒のグラントが投降。いつのまにか姿を消していたもう一人、同校生徒のジェレド・クラークも、すぐにグラントの自供により逮捕された。そのジェレドの祖母がスペンサーを訪ねてきた。孫の容疑を濡れ衣と主張する彼女はスペンサーに、事件を調査し、ジェレドの無実を証明してくれと依頼する。現場を訪れ、地元警察と接触し、弁護士と話すうち、スペンサーの嗅覚が小さな疑問を嗅ぎあてた。少年たちの動機や凶器の拳銃の入手経路を誰も追及していないのだ。それどころか、警察も弁護士も少年たちの両親さえも、さっさと事件に幕を引きたがっている。事件の背後に何かが隠されているのか?追及をはじめたスペンサーの前に、まずは地元警察が立ちはだかり、さらには…スーザンもホークも不在のなか、単独で事件に挑む孤高の騎士スペンサー。ますます好調のシリーズ最新作。
2037年、国連平和維持軍の英国人ビセサ、アメリカ人ケイシー、アフガニスタン人アブディカディルは、パキスタンとアフガニスタンの国境地帯をヘリコプターで監視飛行中、ゲリラの攻撃を受け、見たこともない砦の近くに不時着する。そこは、1885年の大英帝国領インドのジャムルド砦だった。砦には、英国将兵のほか、アメリカ人記者ジョシュ、のちに大作家となる若き英国人記者キプリングがおり、百万年前に絶滅したはずの猿人までが捕まえられていた。さらに、紀元前4世紀のアレクサンドロス大王の軍団が砦に迫りつつあった。いっぽう、2037年に国際宇宙ステーションからソユーズ宇宙船で帰還中の宇宙飛行士たち、ロシア人のムーサとコーリャ、アメリカ人セーブルは、通信途絶のため地上からの支援が受けられなくなっていた。やむをえず自力で着陸した三人が到着したのは、チンギス・ハンの支配する13世紀のモンゴルだった。地球は恐るべき天変地異「断絶」により、200万年にわたるさまざまな時代と土地がキルトのようにつぎはぎされていた。しかも、その異変とともに出現した無数の銀色の球体“眼”が、すべてを観察しているかのように空中に浮かんでいる。この“眼”の正体とは…そして「断絶」はなぜ起こったのか?英国SF界の新旧ふたりの巨匠、クラークとバクスターが、『2001年宇宙の旅』に始まる「宇宙の旅」シリーズを新たな角度から描く「タイム・オデッセイ」シリーズ第一弾。
地獄を滅ぼし、人間たちを粛正する目的で大天使ガブリエルが仕掛けた罠が思わぬ方向に転がり出す。人間、小天使、超能力者、悪霊が入り乱れた戦いに突入する、多次元空間ファンタジー。
重度の障害をもつ美樹、ともに生きようとする悟。彼女を救おうとするあまり、すれちがっていく二人-障害者の夢と現実を描いた小説「薬」と、著者自身の障害について綴ったエッセイ&詩集「私の自立生活」を収録した命の作品集。
傾きかけた町工場の息子、神崎弘人(亀梨和也)は、横浜のジュエリーショップのお嬢様、月丘菜緒(綾瀬はるか)と出逢う。冷たくかじかんだ弘人の心は、菜緒のまっすぐな笑顔に溶け、ふたりは、ひそかに恋を育んでいく。そんなある日、ふたりを引き裂く事件が起こってしまう。もう二度と会えなくなったふたり。弘人と菜緒の、たったひとつの恋の行方は-。
男は父の遺した絵を探していた。必ず惨劇を呼ぶ魔性の「土の絵」。その旅の途中に男は、不思議な力を持つ女・戊と出合う。謀らずとも探し求める絵と同じ名を持つ美しい女と男は、彼女の弟を捜す旅を共に始めるがーー
天性の才能を駆使し、堂々たる舞台女優となった46歳のジュリア。彼女は、美男俳優で劇場経営者でもある夫や、20年来プラトニック・ラブを捧げ続ける貴族に囲まれていたが、たまたま劇場の経理を担当した23歳の青年トムに夢中になる。そして、トムの心が新人女優に傾いたのを知ったときジュリアは…。人生と芝居が妖しく交錯する巧みなストーリー・テリング、モーム円熟期の傑作長編。
ハーヴァード大の図像学者ラングドンはスイスの科学研究所長から連絡を受け、ある紋章についての説明を求められる。それは失われた秘密結社の伝説の紋章だったー。
隠居した旧友三人の前職は、町方同心、旗本、商人とさまざまだ。気力体力ともに自信がある彼らは手頃な隠れ家を手に入れて、江戸市中の厄介事に首を突っ込んでいった。まだまだどうして、世の中の役に立つかもしれない。そんな思いの彼らの前に、今日も奇妙な事件が舞い込んだ。なんでも、深川のはずれの森に裸の女が現われる、というのだ。
昇華する反逆の賦、裂帛の北方水滸、第三巻。 楊志は、二竜山の賊に破壊された村から孤児を拾い、楊令と名づけた。そして賊の討伐に向かうがーー。一方、少華山の史進は、頭目として活躍していたが、心に弱さを抱えていた……。(解説/逢坂 剛)
江戸時代の広告代理店、広目屋「藤由」の香冶完四郎がおなじみ仮名垣魯文とともに、攘夷の暗雲垂れ篭める横浜へ。万国の人間が集う開港まもないこの地で起こる、不可思議な幽霊騒動や殺人事件。日本を食い物にしたいいじんの仕業か、それとも攘夷派の企みか。それぞれの文化がぎこちなく交じり合い、思惑がからみ合って起こる難事件のトリックを、見事な推理と剣さばきで、完四郎が解き明かす。
関ヶ原の敗将で、大名に復帰した例は宗茂以外にはない。大友宗麟の二人の忠臣を実父、義父とし、幼少時より合戦の心構えを厳しく教え込まれた宗茂は、その人柄を見込まれて立花道雪の養子となる。豊臣家への恩義を忘れず、関ヶ原の合戦では石田三成に味方して敗れるが、その後徳川秀忠に重用され、柳河藩の藩主に返り咲く。人間として筋を通した武将の、感動の生涯。
1934年、ドイツ。ナチスのエリート養成機関「ナポラ」に入学をはたした13歳のカールは、厳しい規律と訓練の続く寄宿生活の中で、エルヴィンというかけがえのない親友を得る。そしてエルヴィンのいとこである親衛隊所属のヘルマンへの憧れ。選ばれし少年たちの輝かしい日々の先には、希望と夢があるはずだった。
1942年、フランス。親衛隊所属となり過酷な戦いを強いられてきたカールは、束の間の休息を得ていた。一方、ヘルマンはソ連軍に捕らえられ捕虜として屈辱の毎日を送っていた。それでも「戦争」は続く。「ヒトラー・ユーゲント」の時代を生きた男たちの、心の軌跡をたどり、運命に翻弄されゆく姿を描く長編ここに完結。
あれほど憧れ続けた兄貴の背中を追いかけて、18歳の夏休み、僕は何もかも放りだして街を出た。兄貴の残した年代物のキャデラックに免許証。抜けるような夏空。ミニスカートにタンクトップの謎の美女・杏子ちゃんが、旅の相棒。個性あふれるヒッチハイカーたちと一瞬の出会いを繰り返しながら、僕は、ひたすら走り続ける!バカだからこそ、突き進める。真面目だからこそ、迷わない。-究極の青春小説。
ナチスに蹂躙されたポーランドを離れ、ニューヨークでひっそりと暮らすレオは80歳。だが、彼が60年前に書いた小説も人知れず海を渡って生き延び、幾多の人生を塗り替えていた。その小説の登場人物に因んで名づけられたアルマは14歳。夢見がちな彼女は、母に宛てられた手紙を覗き、小説に登場するアルマはいまなお存在すると信じ込む。自分の名の由来を突き止め、母や弟を救うための冒険は、彼女をどこに導くのかー。