2006年7月25日発売
タマタマが風呂の排水口に吸い込まれたら、突然家に現れた弁天さまに迫られたら、ませた女子中学生に性教育を行なったら。その結末は…とてもここには書けません。男と女、男と神様、時には男と機械の間ですら交される、無限の可能性と歓喜に満ち、嫌らしくも面白おかしく、しかも滑稽にして神聖で、猥褒だが奥床しい行為。人間の過剰な「性」を描く悲喜劇の数々。新発掘短篇「睡魔の夏」も収録。
東京の地下鉄で男が刺殺された。男の身元は不明だが、死ぬ直前に「セコ」という謎の言葉を残し、伊勢で購入した赤福餅を持っていたことが判明する。伊勢市へ向かう十津川警部と亀井刑事。そこではカルト宗教団体の不可解な土地買い占め騒動が起こっていた。捜査が進むうちに、十津川は恐るべき陰謀が進行していることに気づき…。捜査一課史上最大の作戦が幕を開ける!超弩級サスペンス。
アルプスの山奥で孤独に暮らすおじいさんのもとに、孫娘ハイジがやってきた。無垢で、優しさにあふれた天真爛漫な少女は、出逢う人すべてに幸せと奇蹟をもたらす。暗い過去を背負うおじいさん、人見知りの山羊飼ペーター、盲目のおばあさん、そして車椅子の少女クララー。大人たちの都合や意地悪に振りまわされながら、悲しみに負けず、思いやりの心を忘れないハイジの姿は、世界中の人々に愛され続けている。不朽の名作。
聖遷暦1213年。偽りの平穏に満ちたエジプト。迫り来るナポレオン艦隊、侵掠の凶兆に、迎え撃つ支配階級奴隷アイユーブの秘策はただひとつ、極上の献上品。それは読む者を破滅に導き、歴史を覆す書物、『災厄の書』-。アイユーブの術計は周到に準備される。権力者を眩惑し滅ぼす奔放な空想。物語は夜、密かにカイロの片隅で譚り書き綴られる。「妖術師アーダムはほんとうに醜い男でございました…」。驚異の物語、第一部。
侵掠したフランス軍壊滅の奇策、「読む者を狂気へ導く玄妙驚異の書物」は今まさにカイロの片隅で、作られんとしている。三夜をかけて譚られた「ゾハルの地下宮殿の物語」が幕を閉じ、二人めの主人公がようよう登場する頃、ナポレオンは既にナイルを遡上し始めていた。一刻も早く『災厄の書』を完成させ、敵将に献上せねばならない。一夜、また一夜と、年代記が譚られる。「ひとりの少年が森を去るー」。圧巻の物語、第二部。
栄光の都に迫る敵軍に、エジプト部隊は恐慌を来し遁走した。『災厄の書』の譚りおろしはまにあうのか。奴隷アイユーブは毎夜、語り部の許に通い続ける。記憶と異界を交差しながら譚りつむがれる年代記。「暴虐の魔王が征伐される。だが地下阿房宮の夢はとどまらないー」。闇から生まれた物語は呪詛を胎み、術計は独走し、尋常ならざる事態が出来する!書物はナポレオンの野望を打ち砕くのか??怒涛の物語、第三部完結篇。
瀬戸内海の小島をレジャーランドにするためにヘリを飛ばし下見に来た男二人は、セラピー施設に治療のためと称して入院し一週間を過ごすことになった。しかしすでにそこには女二人、男一人の患者ークライアントがいた。五人は投薬と催眠術を使った治療で、こども時代へと意識は遡る。三分の二は笑いに溢れ、最後の三分の一は恐怖に引きつる。鬼才・中島らもが遺した超B級ホラー小説。
青年よ、旅に出よー。大学生の「僕」は、学園祭で講演に来た「花村」という作家にそそのかされて、北への独り旅に出かけた。旅先の下北半島で「僕」は様々な光景に出会い、成長していく。一方、作家である「私」は沖縄をさまよっている。ユタと出会い、色街を歩き、娼婦たちと関わり…。北へ、南へ、旅を続ける男たち。神宿る風景を素描し、「私小説」を擬態した傑作短編集。
1945年のバルセロナ。霧深い夏の朝、ダニエル少年は父親に連れて行かれた「忘れられた本の墓場」で出遭った『風の影』に深く感動する。謎の作家フリアン・カラックスの隠された過去の探求は、内戦に傷ついた都市の記憶を甦らせるとともに、愛と憎悪に満ちた物語の中で少年の精神を成長させる…。17言語、37カ国で翻訳出版され、世界中の読者から熱い支持を得ている本格的歴史、恋愛、冒険ミステリー。
謎の作家フリアン・カラックスの過去が明らかになるにつれて、ダニエルの身に危険が迫る。一方、彼は作家の生涯と自分の現在との不思議な照応に気づいていくのだが…。ガウディ、ミロ、ダリなど幾多の天才児たちを産んだカタルーニャの首都バルセロナの魂の奥深くを巡る冒険の行方には、思いがけない結末が待っている。文学と読書愛好家への熱いオマージュを捧げる本格ミステリーロマン。
ニュージャージーの私立高校生アリスは、自分の暮らす世界になんの疑いもなく毎日を送っていた-ある夏、幼なじみで運命の人だと信じていたマシューがメキシコで行方不明になるまでは。深い悲しみに打ちのめされるアリスだが、卒業へと向かう日々をマシューを愛したひとたちと過ごすうちに、ほんの少しずつ変化がおとずれる。大切なひとのために生きつづけること、喪失感の果てにきざす光があるということ、罪をゆるすということ…アリスは死と愛についてひとつひとつ学んでゆく。繊細に、そして驚くほどのリアリズムで著者が描くのは、悼みと勇気、愛と超越、誠実さと記憶が織りなす青春の物語、時におかしみを漂わせ、時に胸を突き刺すそのみずみずしい語り口は、読む者の心を深く震わせる。
行方不明になった娘は、無惨に殺されていた!事件を追う母親・日野朔子は、「メル友に会いに行く」という言葉と残された携帯電話からある男にたどりついたが…。思いもかけぬ、第二の事件が発生する!現代の歪んだ“道具”と人間関係の中に描き出された親子の絆とは?著者、五年ぶりの最新長編推理、堂々の刊行。
覇王・信長に金を無心する役を押しつけられた公家、隠居せぬ血気盛んな老父、いい人だけど無意味な篭城を続ける我が殿…。歴史的大事件の陰に密やかに咲いた、まことに億劫な出来事に振り回される男たち。解決方法はあるのか?小気味良い展開と洒落な人物描写。読後爽やかな快作。