2006年8月30日発売
19歳の歩太と27歳の春妃のせつなく激しい恋を描いた『天使の卵』から12年。そして『天使の梯子』から2年。29歳の妹・夏姫が回想するエモーショナルな懺悔。哀しくて、エロティックな青春の詩。
東京・下町の解体工事現場から白骨死体が三つ。そして大家である徘徊老人の撲殺事件。真夏の下町を這いずり回ること二カ月あまり。中年の毒気を撤き散らす滝沢の奇妙な勘働きと、女刑事・音道貴子の大脳皮質は、「信じられない善意の第三者」でようやく焦点を結んだ。名コンビは狂気の源に一歩ずつ近づいてゆく…。
スミシー・アイドは43歳。体重126キロ。昼間は兵隊フィギュアの製品管理で退屈な時間を過ごし、夜は酒と紫煙とジャンクフードに身を浸して漫然と日々を送っている。そんなある日、両親が自動車事故で死亡。葬儀を済ませ、遺品を整理していた彼は、父に宛てられた一通の手紙を開封する。それは、20年以上も消息を絶っていた姉ベサニーの死亡通知だった。こうしてスミシーは、いっぺんにひとりぼっちにー。放心状態の彼は、実家のガレージで少年時代の自転車を発見する。タイアの空気が抜けているのに気づいた彼は、ガソリンスタンドに向かう。それが、姉の眠るLAにいたる大陸横断旅行のスタートとなることも知らずにー。心を病んで奇行に走りつづけた姉。そんな彼女に振り回されながらも温かく幸せだった家庭。記憶をたどりながらひたすら西へとペダルを踏みつづけるスミシーを、優しくも残酷なアメリカの人々はどう迎えるのか…。
セルゲイ・ブーニンは孤独だった。22歳で結婚に破れて以来、どの恋にも空しさと悲哀がつきまとう。ソ連崩壊後、政治の世界に足を踏み入れ、遂に大統領にまで昇りつめたが、真の愛は手に入らない。だが、政敵との闘いの日々、移植手術を受けた彼の心臓の「持ち主」と名のる謎の女性が現れると、運命は過去と交錯し、大きく動き始める。
マリアムには娘も知らない過去があった。イランの都市マシャドの邸宅に要人の娘として生まれ、ある出来事をきっかけに、父によってイギリスへと送られたのだ。英国人青年を夫とし、平穏な家庭を築いてきたマリアム。だが40年を経て、かたく封印してきた懐かしくも忌まわしい過去を辿る旅に出る。遥かなる故郷と引き裂かれた恋人への思い。長い年月をともに過ごしながら残された夫の哀しみ。そして、揺れる母をみつめる娘のまなざし。イラン系英国人作家によるデビュー長篇。
われわれはまだ生きている。来たるべきわれらの思考の誕生にふさわしいささやかなものだけを携えて。鳥となって、自分の無から存在を引っ掴む。繰り返される筆舌に尽しがたい惨事。それを記録する詩人ダルウィーシュ。パレスチナからのこの声は記憶されねばならない。