2006年9月25日発売
東京は異常な街に変貌していた。ヒートアイランド現象によって熱帯と化し、スコールが降りそそぐ。外国人が急増し、彼らに対する排斥運動も激化していた。そんな街に戻ってきた青年トウタと中学生ヒツジコ。ふたりは幼いころ海難事故に遭い、漂着した無人島の過酷な環境を生き延びてきたのだった。激変した東京で、ふたりが出会ったものとはー。疾走する言葉で紡がれる、新世代の青春小説。
かつて母親に殺されそうになり、継母からも拒絶されたヒツジコは、世界を滅ぼそうと誓う。見た者の欲望を暴走させるダンスを身につけた彼女は、自身の通う女子高で、戦闘集団「ガールズ」を組織するー。一方トウタは、友人レニの復讐を手伝うため、東京の地下に住む民族「傾斜人」の殲滅を決意した。トウタとヒツジコの衝動が向かう先とは…。崩壊へと加速する東京を描いた、衝撃の長編小説。
神田祭の宵宮、金沢町の小町娘お春が殺された。神輿の賑わいに紛れた下手人を追う銭形平次捕物控「赤い紐」。越後屋の娘と人気役者路三郎が消え、駆け落ちかと思われた矢先、さる屋敷蔵から路三郎の助けを呼ぶ声が…。退屈する若さまが、鮮やかに謎を解く若さま侍捕物手帖「お色屋敷」他。藤沢周平、坂口安吾、村上元三など実力派六人の捕物帳、豪華競演!選者池波正太郎が創作秘話を語る対談解説収録。
秋野智之は、部下の森村茜が担当する顧客に謝罪するために彼女とともに先方を訪ねた。その帰りみち、智之は彼女に、頑張ったねと声をかけるだけでなく、そっと抱きしめてあげたくなった。自分がもっと若くて、きらきらと輝いていたあのころの自分だったら…。人生の予定が狂うほどの恋などするつもりはなかった。秋野智之44歳、城南銀行五反田支店次長、妻と3人の子あり。リアリズムの名手が、理性では抗えない人間・人生の不可思議を描く。
地獄を覗かされ、日本を捨てた国際犯罪者・仙田。外国人犯罪を撲滅するため、限界を超えようとするエリート警官・香田。どん底からすべてを手に入れようとする不法滞在の中国人女性・明蘭。自ら退路を断ち突き進む男女の思惑と野望が一気に発火点に到達した時、孤高の刑事・鮫島が選ばざるを得ない「究極の決断」とは?理想と現実、信念と絶望、個人と社会、正義の意味、そしてこの国のありようが、骨太かつスピーディな物語に溶解していく。ターニングポイントとなるシリーズ最大の問題傑作、光文社初のハードカバーで登場。
1930年代なかばのスイス・ジュネーヴ。国際連盟事務次長の要職にあるギリシア・ケファリニア島生まれのユダヤ人ソラルと、大貴族ドーブル家の血筋を引く完璧な美女アリアーヌ。抜群の政治センスと類稀なる美貌とでその地位を築いたソラルは、社交界の貴婦人たちを虜にする現代のドン・ファンであり、ブラジルのレセプションで見初めたアリアーヌにも危険な恋を仕掛ける。「一つ賭をしませんか。もし三時間以内にあなたが恋に落ちなかったら、あなたのご主人を部長に任命しましょう」。ホロコーストの暗雲忍び寄るヨーロッパで、死の予感を秘めながら繰り広げられる反時代的な恋愛劇。人間の愛と欲を赤裸々に描いたその物語を縦糸に、アリアーヌの夫アドリアン・ドゥームが国際連盟で過ごす怠惰な一日、アドリアンの養母アントワネットのスノビスム、ドゥーム家の人々がソラルを招待するディナーの準備、国際連盟情報部長が開くカクテル・パーティー、女中マリエットのモノローグ、ソラルの故郷からきた5人の親類の狂騒など、魅力的なエピソードが織り込まれ、二人の恋は運命の深みへとはまっていく…。アカデミー・フランセーズ小説大賞受賞の恋愛大河小説。