2007年7月発売
一流商社をリストラされ北海道の故郷に帰ってきた川崎恭子。失意の彼女が目にしたのは、さびれた町の風景だった。若者は町を去り、シャッターを閉めた店ばかり。このままでは、町にも自分にも明るい未来はない。そんな恭子が地元の水産試験場で虹色に輝く不思議なししゃもと出会う。その味の素晴らしいこと。「虹色ししゃもで町おこしだー!」恭子は売り込みに奮闘するが…。
「ようするにチャンバラダンスなんだよ、お前の剣道は」剣道エリート、剛の香織。「兵法がどうたらこうたら。時代錯誤もいいとこだっつーの」日舞から転身、柔の早苗。相反するふたりが出会ったー。さあ、始めよう。わたしたちの戦いを。わたしたちの時代を。新進気鋭が放つ痛快・青春エンターテインメント、正面打ち一本。
20歳にして人生最悪のときを迎えた俺。残された時間は、バンド仲間と姿をくらました最愛の恋人を見つける。東京から沖縄、そして日本の最南端へ。疾走感たっぷりに繰り広げられるロードノベル。
新聞記者をやめ、新たに雑誌にかかわる大示が半生をふりかえる。少年期をへて、六〇年代、政治の季節に青春を迎えた大示のかたわらにいたのは盟友・河井だった。大示が思いをよせる田中早苗は、河井へひきよせられる。三人の運命が絡み合う中、政治の季節最後のクライマックス=東大・安田砦の陥落が迫る。
これが正真正銘、本物のモンスターのつくり方だ、デイヴィ。生と死の間で引きずりまわして、苦しませて、怖がらせるー町へ越してきた少年スティーヴンのいうままに粘土男に生命を与える儀式を手伝ったデイヴィ。その直後に憎んでいたけんか相手が死んだと知って、とんでもない怪物をつくり出してしまったと気づき…。善と悪の境目を問いかける、現代版『フランケンシュタイン』カーネギー賞、コスタ賞(旧ウィットブレッド賞)受賞作家、最新作。
友右衛門が市中引廻し、斬首のうえ晒し首にされた。「おとっつあんは無実なんです」お弓の悲痛な叫びに、親子と親しい青柳剣一郎の胸は痛んだ。一度下された裁きは撤回されない。だが、もし冤罪だとしたら?奉行所で孤立しながらも再捜査する剣一郎。一方、お弓の兄も人殺しの濡れ衣を着せられる。兄の斬首執行が刻々と迫るなか、真相究明に剣一郎が奔走する。
父と娘のあいだに横たわる秘密と、人生の黄昏にある男女の濁りない情愛。ミス・カサブランカとよばれる独身教師の埋めようのない心の穴。反対を押し切って結婚した従兄妹同士の、平らかではない歳月とその果ての絆。-人生の細部にあらわれる普遍的真実を、驚くべき技量で掬いとる。北京生まれの新人女性作家による、各賞独占の鮮烈なデビュー短篇集。第1回フランク・オコナー国際短篇賞受賞!PEN/ヘミングウェイ賞受賞。ガーディアン新人賞・プッシュカート賞受賞。New York Times Book Reviewエディターズ・チョイス賞受賞。The Best American Short Stories2006収録。グランタ「もっとも有望な若手アメリカ作家」2007選出。
何かが記憶の底で閃いた。あの果てしなく深いプールの底で見たものは、こんな感じに似ていたっけ…。「それが、あなたを引きずり込んだものの正体?」結子は立ち上がって、白い木蓮を見つめながら言った。「その白い花のようなものは、向こうの世界に行きかけた僕を、そっとこちらに押し戻してくれたような気がするんですよ。あの花を見なかったら、僕は…」木蓮を木恋と書いた人…(『木蓮忌』より)。命こそ絶ゆとも絶えめ、定めなき世の常ならぬ仲の契りを。狂気と享楽、愛と幻想の世界へ。
内科医の月島は恋人の医師、真咲と別れた淋しさから、野性的な色香を漂わせた行きずり男と激しい一夜を過ごす。互いに素性も明かさぬままの一晩限りのエクスタシー…だが、それからほどなくして、月島はその男が近所に開業した整形外科医院の院長、氷室だと知ることに…。白昼の診察室…淫靡に張り巡らされた氷室の愛欲の罠に、月島はたちまち絡めとられていく。甘美な駆け引きに乱れるドクターたち。書き下ろし。
明治時代ー留学先のドイツで知人に騙され、闇市に売られてしまった公爵家次男の陸軍少尉、晴彦。彼を買ったのはサリジタール王国の第四王子ファイサルだった。狙った獲物は決して逃さぬ、黄金色の鷹の瞳をもつ王子ファイサルは、その夜のうちに晴彦を自国へと連れ去る。妾妃としての屈辱的な責めの数々に、自尊心を打ち砕かれながらも晴彦は…。内紛に揺れる灼熱の王国…狂い咲く妖艶エロス書き下ろし。