2007年発売
塾は今や巨大産業として、莫大な利益を産む教育機関だ。利益が望めるところに犯罪も生まれる。神奈川県の進学塾に、自殺した教師の名で脅迫メールが届いた。何かと世間体を気にするその塾は、内密に事を済まそうと、ある人物に解決を依頼する。その人物とは、かつてキャリアとして将来を期待された警察官だった。しかし、彼はどす黒い組織に反発し、ある事件をきっかけに、潔く身を退いたのだった。事件を調べるうちに、また新たな事件、そして忌まわしい過去が暴かれていく……。 本格ミステリーの次代の担い手として期待される新人・青木知己、初の単行本化。
晴明の呪、博雅の笛が京の闇に響くときー若き陰陽師・安倍晴明と雅楽の名手・源博雅が龍神、幽鬼、獄卒、怨霊たちが引き起こす怪事件を鮮やかに解決する大人気シリーズ。全9篇を収録。
林冲、戦陣を放棄し、妻の救出に向かう 林冲は、妻を救出するために勝手に戦線から離脱した。そこに待ち受けていたものとはーー。一方、廬俊義と柴進の身元が割れ、官軍に包囲された。鄧飛がふたりの救出に向かう。(解説/馳星周)
信じたい、離れても思いは変わらない、と かれんとの時間を持ちたくて一人暮らしを始めた勝利だが、かれんは介護福祉士を目指すという。応援したいが離れて暮らさねばならない勝利の心は複雑。一方、両親の猛反対にあったかれんは…。
旅をめぐる48のショートショート集 珍妙なステップを踏みながら〈刑罰としての旅〉を続けるならず者18号。「眉毛犬ログ」が世界中を旅したあと目指した先は? ユーモア溢れる、48の旅をめぐる小さな物語。(解説/いしいしんじ)
牧場主の娘バナーは、結婚式の最中、花婿となるはずのグレーディの裏切りを知る。結婚式がとりやめになったその夜、彼女は両親の幌馬車隊時代からの友人ジェイクに、抱いてほしいと迫った。それは悲しみのあまりの衝動だったのか、小さい頃から慕っていた彼への愛のためだったのか。けれど、彼にはほかに愛する人が…。『夕暮れに抱擁を』で大好評を博した主人公の娘バナーのひたむきな愛の物語。
堀口剛蔵の弟、参蔵は生来の嘘つき、それも他人のために虚言をはく、という性癖を持てあましながら、漂うように戦後を生きてきた。参蔵は剛蔵の妻・美那に思いをよせる。美那は自死した剛蔵を許さない気丈な女だが、やがて自らも悲劇的な末路をえらぶ。悲しみはどこまで続くのか。
大正十四年・上海。副領事に着任したばかりの花園伯爵家次男の麻尋は、ダンスホールでヤクザの幹部、陳に襲われかけたところを凄腕の殺し屋、紅仁に助けられる。日本で兄嫁との醜聞に傷つき、死ぬつもりで魔都・上海へとやってきた麻尋だったが、この闇色の瞳をもつ偉丈夫、紅仁との出会いが少しずつ彼を変えていく。そんな折、麻尋に執着する陳に再び囚われて…。危険に艶めく快楽の浪漫。書き下ろし。
新米巡査、鷹夜の恋人は、高校生でありながらホテルまで経営するスーパー御曹司の要。二人は人違い拉致事件が縁でムフフな関係になってしまったわけで…。そんな鷹夜はただいま覚せい剤の密売ルートの潜入捜査中。にもかかわらず、オレ様気質全開の要の要請で、修学旅行に護衛として付き添うことに…。旅先で、要の下半身の暴走を押しとどめる術はなく…。エロスとパワーのWビーム炸裂。書き下ろし。
崇史は、俺が十五ん時の子供だ。今は別々に暮らしている。奴がノートに殺害計画を記していると聞いた俺は、崇史に会いに中学校を訪れた。恐るべき学校襲撃事件から始まった暴力の伝染ー。ついにその波は、ここまでおし寄せてきたのだ(表題作)。混沌が支配する世界に捧げられた、書下ろし問題作「ソマリア、サッチ・ア・スウィートハート」を併録したダーク&ポップな作品集。
三百勝目前のマウンドで、無死満塁のピンチに苦しむ老投手スタルヒンを救うため、南洋の秘術の封印を解いた男の物語。川端賞受賞作「枯れ葉の中の青い炎」をはじめ、唐突な夫の申し出に、妖しく変化する妻の日常を描く「ちょっと歪んだわたしのブローチ」、消えたラピスラズリをめぐる雪山小屋の対話劇「水いらず」など、虚実自在の語りで小説の愉しみを存分に味わえる名品六編。
少し遅れた時計を好んで使った恋人が、六年前に死んだ。いま、小さな広告代理店に勤める僕の時間は、あの日からずっと五分ズレたままだ。そんな僕の前に突然現れた、一卵性双生児のかすみ。彼女が秘密の恋を打ち明けたとき、現実は思いもよらぬ世界へ僕を押しやった。洒落た語りも魅力的な、side-Aから始まる新感覚の恋愛小説。偶然の出会いが運命の環を廻し、愛の奇蹟を奏で出す。
かすみとの偶然の出会いは、過去の恋に縛られていた僕の人生を大きく動かした。あれから二年、転職した僕の前にひとりの男が訪ねてきた。そして、かすみとその妹ゆかりを思い出させずにはおかぬこの男が、信じられない話を切り出した。物語は、驚愕のエンディングが待つside-Bへ。今日と明日をつなぐ五分間の隙間を破り、魂震わす極限の愛が生まれる。
献残屋を営む箕之助は、町内でも色っぽいことで評判の小間物屋の家つき娘・おトシが新しい婿を迎えるという話を聞く。しかし過去に一度入った婿は半年もしないうちに亡くなり、不穏な噂がながれてもいた。箕之助はおトシの母親に探りを入れ、裏で悪事を企む男の存在を知る…(「入り婿殺し」)。また、浅野内匠頭切腹事件の後、忠義から事を性急に進めようとする浪士たちを、箕之助らが身を呈して諌めんとする忠臣蔵秘話(「忠臣潰し」)などを収めた好評シリーズ第四弾。