2007年発売
献残屋を営む箕之助は、町内でも色っぽいことで評判の小間物屋の家つき娘・おトシが新しい婿を迎えるという話を聞く。しかし過去に一度入った婿は半年もしないうちに亡くなり、不穏な噂がながれてもいた。箕之助はおトシの母親に探りを入れ、裏で悪事を企む男の存在を知る…(「入り婿殺し」)。また、浅野内匠頭切腹事件の後、忠義から事を性急に進めようとする浪士たちを、箕之助らが身を呈して諌めんとする忠臣蔵秘話(「忠臣潰し」)などを収めた好評シリーズ第四弾。
恵美押勝が討伐されて一年近くー。淳仁天皇を廃した孝謙上皇が帝位に返り咲き、再び内裏に訪れたかに見える平穏。その裏には、女帝を誑かし、陰で政治を操る怪僧・弓削道鏡の存在があった。黄金眠る陸奥に食指を伸ばし、帝位さえ脅かし始める飽くなき道鏡の欲望、その阻止を図る牡鹿嶋足、物部天鈴らの奇計妙策の数々…。蝦夷の存亡と誇りを懸けた、新たなる戦いを描くシリーズ第三弾。
2006年に小説誌等に発表された数多くの短篇ミステリーの中から選ばれた15篇。2006年推理小説界の概況、ミステリー各賞の歴代受賞リストも付いた、50年を超える歴史を誇る国内唯一無二の推理年鑑です。
妻の小さな過去の秘密を執拗に問い質す夫と、夫の影の如き存在になってしまった自分を心許なく思う妻。結婚三年目の若い夫婦の心理の翳りを瑞々しく鮮烈に描いた「愛撫」。幼い子供達との牧歌的な生活のディテールを繊細な手付きで切り取りつつ、人生の光陰を一幅の絵に定着させた「静物」。実質的な文壇へのデビュー作「愛撫」から、出世作「静物」まで、庄野文学の静かなる成熟の道程を明かす秀作七篇。
昭和17年6月、ミッドウェイ海戦。日本機動部隊が空母4隻を失う大敗を喫するなか、空母・飛龍の奮戦により米空母・ヨークタウンを大破させた。ヨークタウンを撃沈せよー緊急電報を傍受した潜水艦・伊168は、ハワイへ帰投するヨークタウンに追いすがる。7隻の駆逐艦に守られた米空母を単独で撃沈した、戦史に残る戦いの全貌とは。
吉原の引手茶屋の子持ち後家、おぬいと深い仲になり、内証勘当された老舗太物問屋美濃屋の跡取り息子、信太郎。子供も授かった二人に救いの手を差し伸べたのは、他ならぬ父、卯兵衛だった。日々の暮らしの中で培ってきた「きずな」が彼らの人生を大きく変えていく、大好評シリーズ第四弾。
14歳の秋。生まれて初めての恋。相手は20代後半の絵の先生。ちょっとずつ、ちょっとずつ心の距離を縮めながら仲良くなっていくふたりに、やがて訪れる小さな奇蹟とは…。毎日を生きる私たちに、ひととき魔法をかけてくれる、美しい魂の物語。かわいらしいイラスト満載で、心がぽかぽか温まる宝石のような一冊です。
色男・瓢六が、北町奉行所の同心・篠崎弥左衛門とともに、江戸の町の難事件を鮮やかに解決する捕物帖シリーズ第二弾。晴れて無罪放免となった瓢六だが、お袖と熱々の平和な日々も長くは続かない。わけありの母子を匿ったり、瓦版を作ったり、そして今度はお袖が牢に入れられる…!?痛快無比の時代小説。
勤めていた大学に辞表を出し、寂れた島に仮初の棲み処を求めた迫村。月を愛でながら己の影と対話し、南方から流れついた女と愛し合い、地下へ降りて思いがけぬ光景を目にし、現実とも虚構ともつかぬ時間が過ぎていく。この自由も、再生も、幻なのか?耽美と迷宮的悦楽に満ちた傑作長篇。読売文学賞受賞作。
遠い昔の思い出や、幼い頃に聞いたお伽噺、切ない恋の記憶…。夢のかけらのような32篇の小さな物語を、ファンタジックなイラストで彩った、宝石箱のような絵本。ミステリーの書き手としても注目される著者の原点である、詩人、童話作家としての素顔の垣間見える作品集。
日本人作家・彦坂和彦のところへ、ロシアの女性・カチューシャから電話がかかってきた。彦坂は、彼女がかつて日本に留学していたとき身元保証人になっていたのだった。「脅迫されている父をヨーロッパへ亡命させたい」とカチューシャは言った。政府を批判するジャーナリストたちが、ロシアでは何人も暗殺されていた。カチューシャの父親を助けるために、彦坂はロシアへ向かう。二人が会っていると、ロシア連邦保安局の襲撃者が迫ってきて…。
北海道、東北、山陰と舞台を変えて、“望郷の殺人者”を追う十津川警部班の捜査行に終わりはない。表題作をはじめ「十津川民謡を唄う」「北の空 悲しみの唄」「北への殺人ルート」の四編、珠玉の旅情ミステリーの傑作を一挙収録。西村京太郎ワールドを心ゆくまで堪能する待望の一冊、文庫化なる。
月曜日、21時58分。KBB関東テレビの看板ニュース番組『デイウォッチ』プロデューサー降城卓に非常呼集がかけられた。彼が担当する金曜日の人気コメンテーターと女性アナウンサーのスキャンダルが週刊誌で報じられるという。一方でその晩、警官が青年を銃殺するという不可解なニュースが飛び込んできた。折りしも番組では、特集「日本の警察は大丈夫か」が放送され、警察に情報公開を求める山梨県知事が紹介されていた。すべてのエピソードが伏線となり、金曜日の放送へ向け、一週間ノンストップで真実が明かされていく、書き下ろし報道サスペンス小説の傑作。
「二〇〇一年のクリスマスを境に、我が家の紐帯は解れ」すべてを失った“わたし”は故郷に還る。そして「バスの走行音がジングルベルみたいに聞こえだした日曜日の夕方」二人の女児と出会った。神町ー土地の因縁が紡ぐ物語。ここで何が終わり、はじまったのか。第132回芥川賞受賞作。
吟味方与力の藤堂逸馬が北町奉行所に出仕すると、滅法いい女が待っていた。訴人の依頼によって代言などを行う公事宿『叶屋』の主人・真琴だった。水茶屋の女殺しで死罪は免れない下手人を詮議し直せと迫ってきたのだ。世の闇を見通す“梟与力”とやり手の女公事師、全面対決の顛末やいかに。
のぶちゃん、何かうまいもん作っておくれよー。夫との心のすれ違いに悩むのぶをいつも扶けてくれるのは、喰い道楽で心優しい舅、忠右衛門だった。はかない「淡雪豆腐」、蓋を開けりゃ、埒もないことの方が多い「黄身返し卵」。忠右衛門の「喰い物覚え帖」は、江戸を彩る食べ物と、温かい人の心を映し出す。