2008年発売
芝三丁目で献残屋を営む箕之助はある日、辻屋という一膳飯屋の嫁姑の諍いが町の噂になっていることを知る。そんな折り、金杉橋の近くの河原に男の死体が転がっているのが発見される。箕之助は辻屋の内情に踏み入るうち、嫁姑の仲違いが世間の目を欺くための芝居であり、その事件があくどい金貸しに義理の息子を殺された辻屋のあるじたちの復讐だと気づく。箕之助は用心棒の日向寅治郎らの協力を得て、町人には許されぬ仇討ちを最後まで密かに成就させるが…。
奇妙な相談を受け、シャーロック・ホームズが愛した街・ロンドンへと誘われた病院坂黒猫と櫃内様刻。次々と巻き起こる事件の謎解き合戦が始まった!これぞ世界に囲われた「きみとぼく」のための本格ミステリ。
「こりゃ誤植だ。旅のお手伝いじゃなくて“安らかな旅立ちのお手伝い”だから、うちは」小林大悟が求人広告を手にNKエージェントを訪れると、社長の佐々木から思いもよらない業務内容を告げられた。NKは「納棺」-遺体を棺に納める仕事を、大悟は妻の美香に打ち明けられなかった。戸惑いながらも働きはじめた大悟は、佐々木の納棺師としての真摯な姿勢を目の当たりにする。さまざまな境遇の死や別れと向き合ううちに、この職業への矜持が大悟の心に芽生えていくのだが…。人の生と死をユーモアと感動で描き、笑って泣いたあとには大きな愛が胸に届く物語。
自転車で坂を登ることに情熱を傾ける高校生、テルこと野々村輝は日の大亀ヶ丘高校の自転車部に入部する。チームのエースは鳩村大輔。高校生ながら国内の主要大会で入賞する実力者だ。自転車ロードレースは、エースを勝たせるために他の選手が全力でアシストする。テルは鳩村と競いながらも、チームのための走りに少しずつ目覚めていく。テルの得意な山岳コースを舞台にした石渡山ロードレースで、テルと鳩村はライバル鳳帝高校のエース・ユタと抜きつ抜かれつのデッドヒートを。最後に勝つのは誰なのか。テルの姉・さゆりの視点で描いた青春が熱いノベライズ。
事故で愛妻を喪い、失意の只中にあるうだつの上がらない大学講師の松嶋は、物故作家の未発表手記を入手する。絶望を乗り越え、名を上げるために、物故作家の自殺の真相を究明しようと調査を開始するが、彼の行く手には得体の知れない悪意が横たわっていた。二転三転する物語の結末は?著者渾身の傑作巨篇。
18歳当時、5人の女性を強姦した上で殺し、死刑判決を受けた希代の殺人鬼・穂積壱郎。その穂積を取材し浮上を図る事件記者の加瀬。厚い壁の中で保護され、死刑への恐怖心をまったく抱かない殺人鬼に復讐することは可能なのか?綿密な取材に裏打ちされた迫真の描写で死刑制度に新たな光を当てるサスペンス。
だんなさん、高校生の娘とともに大塚に暮らす主婦・小鳩さんは、19年前に離婚した元・夫と偶然再会する。彼は昔と変わらず、唐突に変わった歩き方を始めるのだった…。近いようで遠い、夫婦という関係の機微を描く表題作のほか、ちょっとヘンな男と女をユーモア溢れる文体でつづる、おかしくてせつない三つのストーリー。
「かごめ歌」を聞いた若い女性が失踪、現場には必ず「銀の鱗」が残されている…という怪事件が続発。その事件に巻き込まれた楓とともに謎の解明に乗り出した鬼太郎たちは、千年の時を経て蘇った悪霊が原因であることをつきとめる。鬼太郎は、自分に課せられた運命を乗り越えて、楓を、人間を守ることができるのか…。
たまらん坂、おたかの道、そうろう泉園ー実在する奇妙な土地の名前が、初老期に差しかかった男達の心に漣を立て、探索とも長い散歩ともつかぬ武蔵野行へと誘う。日常と皮膜一枚で隔たった異境で彼らが出会う甘やかな青春の残像、人も自然も変貌する現実の苦味を、清澄な筆致で描く連作短篇集。『時間』『群棲』など、時間と空間の交点に、深い人生の味わいを醸し出す黒井文学の豊かな収穫。
高校の同級生だった女性から手紙が届き、四十年ぶりに再会して登った浅間山での一日。青春の輝きに満ちていた彼女だったが…。文芸時評で絶賛された表題作をはじめ、稜線を渡る風が身の内を吹きぬける、山歩き短篇集。
早苗は成績重視・結果主義の剣道強豪高へ、香織は個人主義から部に忠義を尽くし始める。ふたりの武士道の時代(研究中)が幕を開けたー。新進気鋭が放つ痛快・青春エンターテインメント、正面打ち二本目。
高校受験に失敗し引きこもりとなった友樹は、精神科医の東山と出会い立ち直ろうとしていたが、友人の起こした事件に巻き込まれ犯罪者の烙印を押されてしまう。一方、友樹を救えなかった東山も無力感に苛まれていた。新たなプロジェクトへの参加を決意した東山とパティシエ修業を始めた友樹。過去と決別すべく立ち上がった二人の運命は?衝撃の医療ミステリー。
戦史の研究に没頭している孫武は、戦争に勝つには勝つだけの理由があり、負けるには負けざるを得ない理由があることを知った。呉楚の確執が続く古代春秋時代の中国。楚への復讐に憑かれた伍子胥の計らいで呉の将軍となった孫武は、独自の機略で楚軍を打ち破り続ける。孫子の兵法で名高い孫武を描く歴史小説。
「兵法家と兵学者は違う」孫武の時代から約150年後、後孫にあたる孫〓(ぴん)は〓(ほう)涓の影響で兵法のおもしろさに目覚めた。やがて魏につかえ大将軍となった〓(ほう)涓を訪ねた孫〓(ぴん)だが、その才能に嫉妬し恐れた〓(ほう)涓の残酷なたくらみに嵌ってしまう。かつての友への復讐と兵法家としての意地を賭けた最後の戦いが始まる。