2009年12月15日発売
終戦の夏、父はなぜ洪水の川に船出したのか?母が遺した「赤革のトランク」には、父親関係の資料が詰まっているはず。それらを手がかりに、父のことを小説に書こうとする作家・長江古義人。過去を持つ若い劇団女優との協同作業を通じて、自らの精神の源流としての「深くて暗いニッポン人感覚」を突きつけられる長江ー。そして、やがて避けようもなく訪れる、壮絶で胸を打つクライマックス!初めて書かれる父の肖像と水死。
あいつの人生が終わり、僕たちの長い旅が始まった。中学二年でいじめを苦に自殺したあいつ。遺書には四人の同級生の名前が書かれていたー。背負った重荷をどう受け止めて生きればよいのだろう?悩み、迷い、傷つきながら手探りで進んだ二十年間の物語。
権の魔に魅入られた者の業は深い。将軍家斉の父一橋治済、執政から外れた松平定信、御三家の一角水戸徳川家。将軍位簒奪を狙う暗闘は熾烈を極める。幕政の闇を知る奥右筆組頭立花併右衛門と危地を潜ってきた柊衛悟に、破格の婿入り話が。二人の絆もこれまでか!?人気沸騰シリーズ第五弾。
海軍軍医総監に登りつめた高木兼寛は、海軍・陸軍軍人の病死原因として最大問題であった脚気予防に取り組む。兼寛の唱える「食物原因説」は、陸軍軍医部の中心である森林太郎(鴎外)の「細菌原因説」と真っ向から対決した。脚気の予防法を確立し、東京慈恵会医科大学を創立した男の生涯を描く歴史ロマン。
正徳の治で幕政を主導するのはまだ先のこと。五代将軍綱吉の世、若き日の新井伝蔵(白石)は浪人ながらも政への野心を燃やしていた。そんな中、二つの仕官話が舞い込む。願ってもない好機だが、眉間の「火字」が不穏にうずく。そこには九年前の事件の真相が隠されていた。小説現代長編新人賞奨励賞受賞作。
1921年、コンチネンタル探偵社を辞めたサム・スペードは、サンフランシスコに自身の探偵事務所を構えた。さっそく持ち込まれた依頼は、密航を企てている息子を止めてほしいという銀行家からのもので、調査するうちにスペードは、折しも発生した金貨盗難事件に巻き込まれていく。さらにスペードのもとには、プールで変死した男に絡む黒い噂、美しい中国人女性からの謎めいた依頼など、いわくありげな事件が次々と舞い込んでくる。そんなある日、スペードは旧知の同業者で汚れ仕事を得意とするマイルズ・アーチャーと再会。二人はパートナーを組むこととなり、かくして“スペード&アーチャー探偵事務所”が誕生することとなった!ハメットの研究家としても知られるゴアズが、文体、雰囲気、時代背景にいたるまで原作の世界を見事に再現。ハードボイルドの金字塔『マルタの鷹』のルーツを描く話題作。
男が刺し殺された。さっそく探索に取りかかった文之介と勇七は、人探しのために上方からやってきた旅篭の客だと突きとめる。他方、沼里の凄腕用心棒里村半九郎は、暖簾分けされたばかりの商家に雇われて、上方訛りで話す平田潮之助を守っていた。しかし、何者かにたばかられ、かどわかされてしまう。同じころ文之介は、人を探しに大坂から下ってきたという怪しげな男を見つけたが…。書下し長篇。
老中・松平定信は、御台所・篤姫から呼び出しを受け、最近、将軍・家斉の様子がおかしいと相談をされた。彼は腹心の部下である北町奉行所の隠密廻り同心・鏑木十左に探索を命じる。早速、大奥に潜入した十左は、家斉を誑かそうとする女中を見つけ、追い詰めた。しかし自害されてしまい、手がかりが消えたかに見えたが、その女の身体には…。書下し痛快時代小説。