2009年発売
ビアンキさんはイタリア中を旅するセールスマン。彼は、毎日9時きっかりに電話でお話を聞かせる約束を、娘としていました…。ビアンキさんのお話には、おてんばなミニサイズの女の子をはじめ、びっくりキャラクターが数々登場。シュールな展開に吹き出し、平和の尊さに涙する、きらめく珠玉のショートショート!20世紀イタリアの傑作童話登場。
廓遊びを知り尽くしたお大尽を相手に一歩も引かず、本気にさせた若き花魁葛城。十年に一度、五丁町一を謳われ全盛を誇ったそのとき、葛城の姿が忽然と消えた。一体何が起こったのか?失踪事件の謎を追いながら、吉原そのものを鮮やかに描き出した時代ミステリーの傑作。選考委員絶賛の第一三七回直木賞受賞作。
1866年、世界の海で奇怪な海難事故が続発する。事実、多くの船が「謎の怪物」を目撃していた。紡錘形で細長いが、クジラよりはるかに大きく、時に燐光を発し、異常な速力をもっているという。調査に向かった軍艦もまた攻撃され、同乗していたアロナックス博士らは海に投げ出されてしまう。そして、博士らを救ったのも「謎の怪物」だったが、それはクジラではなく潜水艦ノーチラス号だった。
1869年、帆船チャンセラー号は、アメリカからイギリスに向けて航行中、予期せぬことから、大規模な火災を起こす。鎮火の努力もむなしく船は沈没。生き残った乗客と乗組員は筏に乗り込み、漂流を始めるが…自然の猛威、飢えと渇き、そして…。フランスの軍艦で実際に起きた事件をモデルとしつつ、極限状況における人間ドラマとして、迫真の筆致で描き尽くした傑作。
フラナリー・オコナーは20代半ばから亡くなるまで、アメリカ南部の農園で母とともに暮らした。難病と戦いながらも、午前中の数時間を必ず執筆にあてた。南部の人々を多く描いたが、その目は全世界を見捉えていた。O・ヘンリー賞を生涯で4度受賞し、短篇の名手と賞賛される。下巻は、死後刊行の短篇集『すべて上昇するものは一点に集まる』と後期作品2点、年譜、訳者あとがきを収録。
和人によるアイヌ民族迫害の歴史を、誇り高き部族長の裔・コシャマインの悲劇的な人生に象徴させ、昭和十一年、第三回芥川賞を受賞した、叙事詩的作品「コシャマイン記」を中心に、棄民されていく開拓民の群像と、そこでの苦闘に迫る「ナンマッカの大男」「ニシタッパの農夫」など、北海道を舞台とした初期作品九篇を精選。アイヌと下層農民を描くことで、民族的連帯を模索した稀有なる試み。
生涯、二万に及ぶ発句。稀代の俳諧師、小林一茶。その素朴な作風とは裏腹に、貧しさの中をしたたかに生き抜いた男。遺産横領人の汚名を残し、晩年に娶った若妻と荒淫ともいえる夜を過ごした老人でもあった。俳聖か、風狂か、俗事にたけた世間師か。底辺を生きた俳人の複雑な貌を描き出す傑作伝記小説。
清の八十翁・松齢の庭に突如咲いた一茎の黒い花。不吉の前兆を断たんとしたその時に現われたのは(黒色の牡丹)。人間稼業から脱し、仙人として生きる修行を続ける小角がついに到達した夢幻の世界とは(睡蓮)。作家「司馬遼太郎」となる前の新聞記者時代に書かれた、妖しくて物悲しい、花にまつわる十篇の幻想小説。
博多・香椎海岸で発見された、某省の課長補佐と料亭の女の死体。一見して疑いようのない心中事件と思われたが、その裏には汚職をめぐる恐るべきワナが隠されていた。時刻表を駆使した精緻なトリックと息をのむアリバイ崩し。著者の記念碑的作品となったトラベル・ミステリーが、風間完画伯の挿画入りであざやかによみがえる。
地方都市にある高校で、ウリをやっているという噂のために絡まれていた琉璃を、偶然助けた上級生の周子。彼女もまた特殊な能力を持っているという噂により、周囲から浮いた存在だった。親、姉妹、異性…気高くもあり、脆くもあり、不器用でまっすぐに生きる十代の出会いと別れを瑞々しく描いた傑作青春小説。
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。
江戸。安政二年。紙卸商の跡取り息子・ジスケは、六歳の時に奇怪な巨大猫・鮒丸が逃げて以降、運気が下がり続けていた。周囲の婦女子の目線を奪う眉目秀麗なる男に成長したものの、終には着の身着のままの夜逃げをする羽目に。橋の袂の川原で死を待つばかりと相成ったジスケだったが、千里眼で名を馳せた塵点寺の謎の和尚に寺男として拾われる。救われた命、仏門に捧げよう、と日々の勤めをまじめに続けていたが、鮒丸と再会。ある晩、猫が枕元で告げる。自分は極楽浄土で普賢大菩薩の孫となる妖怪である。ただちに一緒に旅に出ろ、とー。
64年の時を越えてアメリカから届けられた一枚の楽譜「真夏のオリオン」。過酷な時代の秘められたドラマがいま甦る。第二次世界大戦末期。米軍の本土上陸を防ぐため出撃した潜水艦イー77号の若き艦長・倉本孝行。それを追いつめる駆逐艦パーシバルのスチュワート艦長。甚大な損傷を受けたイー77号に残された酸素はあと1時間。「俺たちは死ぬために戦ってるんじゃない。生きるために戦ってるんだ」。倉本と乗組員の知力の限りを尽くした作戦が開始された。『終戦のローレライ』『亡国のイージス』の福井晴敏が4年ぶりにおくるエンターテインメント映画を完全ノベライズ。
紬屋の太吉が、女房お悦の着物を仕立てるために藤屋に出入りするようになった。不幸にしてお悦は亡くなるが、そんな太吉を妹お房は慕うようになる。しかし、桂助の養父長右衛門と太吉の父親である貞右衛門との間には、今まで知らされていなかった過去があった。お房の気持ちを知り、ある日貞右衛門に呼び出された長右衛門だが、行方不明になる。貞右衛門もいなくなり、目撃証言が出て長右衛門に殺害容疑がかかる。それは、桂助を次期将軍にしようという岩田屋の陰謀だった!養父を守るために立ち上がった桂助の苦悩を描く、書き下ろし人気シリーズの第七作。
上ゲ屋、保チ屋、目付…吉原を陰でささえる異能の男たち。妓を遊女に仕立て上げ、年季半ばで磨き直し、合間にあって妓の心を見張り、間夫の芽を絶つ。裏稼業を通して色と欲、恋と情けの吉原を描き切った鮮烈なデビュー作。
夫が単身赴任中の専業主婦。ブサイクな出張ホストと密会を繰り返す彼女の本当の望みとは…(『六日間』)。会社社長と長年、愛人関係を続けている育美。社長の妻を見舞う毎日で見つけたのは…(『愛のくらし』)。48歳の画家・鮎子。今は年下の彼とは別の男との情事に夢中。ただ、すぐ飽きてしまうのが常だった…(『猫をつれて』)。犬の散歩で偶然出会った若い男。怪我をした由未子の生活に入り込むが…(『バッドボーイ』)。定年退職間近の布沙子。愛人関係に区切りをつけ、苦手な後輩とも対決。そして、もう一つ「完璧な退職」のために計画してきたことが…(『パーフェクト・リタイヤ』)。オーバー40の女性たちの心情を鮮やかに描いた傑作短篇集。
周到に張りめぐらされた言葉が、不穏な予感を暴発させるーデビュー以来、日本文学の最先端を疾走し続ける阿部和重の危険な作品世界は、いまや次々に現実となっていく。今だからこそ読みたい初期の傑作6作品。3人のゲームクリエイターによる語り下ろし特別座談会“阿部和重ゲーム化会議”を巻末に収録。
冬の八ヶ岳山麓の別荘で、猪狩家の令嬢・静香が逆さ吊り死体で発見された。凄惨な密室殺人は別荘を恐怖の渦に巻き込み、そして第二の被害者が出てしまう…。一冊の日記帳によって明らかになる猪狩家の悲しく暗い過去。事件解決に挑む青年探偵・信濃譲二は完全犯罪を暴けるのか!?傑作長編推理第二弾。
警察組織からの落伍者たちを飼い殺しにしていると噂される動坂署。思いがけない転任に不貞腐れて署内で寝伯まりする雨森は、たまたま聴取した些細な傷害事件の被害者である女子大生の部屋を訪ねて死体を発見する。開署以来初めて捜査本部が置かれたものの、主導権を奪われた署員たちは秘かに動き出した。