2009年発売
父は、何を得て、何を失い、なぜ消えたのだろう?北海道を捨て、ナイチを捨て、家族を捨てた、でたらめな男。それが僕の父だったー。北海道と内地。父と息子。遠くて近い、ゆらぐルーツと奇妙な繋がりの物語。
「ねえ、たい焼を食べるときはどの部分から食べる?」学校の屋上から飛び降りようとしている静香に、場違いなことばを掛けたのは、たくさんのたい焼を抱える少女・明生だった。「わたし、たい焼で世界を救いたかったの…」。不思議な出会いから始まった関係はゆっくりと交錯し、やがてふたりの運命を大きく変えていく。
アイルランドの女子大生ブリーダの、英知を求めるスピリチュアルな“旅”とは。“旅”を導くのは、ふたりの師。恐怖を乗り越えることを教える男と、魔女になるための秘儀を伝授する女。ふたりから特別な“力”があると認められたブリーダだが、自分の道は自らの手で切り拓かねばならない。実世界との結びつきと、刻々と変容していく自分自身との狭間で、ブリーダの心は揺れるー。
法律を勉強するため上京した十八歳の青年フレデリックは、帰郷の途上、セーヌ河をゆく船の上で美しき人妻に心奪われる。やがてパリ暮らしを再開した彼は、一途に人妻を想いながら、夫の経営する新聞社や社交界に出入りをするようになる…。革命前後のパリで生きる夢見がちな青年と、彼をとりまく四人の女の物語。
美しき人妻アルヌー夫人、高級娼婦ロザネット、社交界の名花ダンブルーズ夫人、田舎で彼を待つ可憐なルイーズ。四人の女性に愛されながら、夢のような恋を求めてパリ暮らしを続ける青年フレデリックが、純真さとひきかえに少しずつ成長していく…。『ボヴァリー夫人』とともに名訳で贈る小説の最高峰。
恋人に別れを告げるために訪れた海辺の宿で起こった奇跡を描いた表題作「月下の恋人」。ぼろアパートの隣の部屋に住む、間抜けだけど生真面目でちょっと憎めない駄目ヤクザの物語「風蕭蕭」。夏休みに友人と入ったお化け屋敷のアルバイトで経験した怪奇譚「適当なアルバイト」…。珠玉の十一篇を収録。
妹が失踪したと、絹枝という女が犯罪学の権威・畔柳博士を訪ねてきた。折しも博士は、とある会社の怪しい従業員募集の新聞広告に犯罪の匂いを感じていた。絹枝の話では、妹・芳枝はそこに応募したとしか考えられない。博士の悪い予感は当たり、芳枝はすでに惨殺されていたー。好みの女性ばかりを狙う、卑劣な殺人鬼・蜘蛛男とは何者か?そして彼の正体を暴き立ち向かう、明智小五郎の作戦とは!?-。
警視庁捜査一課第二係は継続捜査係である。迷宮入り事件を粘り強く捜査する特捜刑事・香月功は、休暇で登った奥秩父・甲武信岳で、男女の死体を発見した。当初は豪雨下の遭難死と思われたが、香月は不審を抱き、単独捜査を開始した。やがて、死体発見現場を捜索中、精巧なニセ札を発見。香月は容疑者を捜し戦中にドイツから持ち込まれたザンメル印刷機を追うが…。警察小説の金字塔「顔のない刑事」シリーズ第3弾。
実業家の中山憲之は、謎めいた脅迫電話に悩まされていた。3人の女性から次々と「責任を取って欲しい」という内容の電話がかかってくるのだが、中山には全く身に覚えがない。そんな矢先、脅迫電話をかけていたと思しき女性の1人が死体となって発見された。十津川警部が捜査に乗り出すが、中山も謎を追い、長野県の所別温泉に向かう。十津川と中山がそれぞれ事件を調べると恐るべき陰謀が明らかになり…。傑作長編ミステリ。
房総の海に浮かぶ小島・美瀬島。浅見光彦の父・秀一は21年前、当地で海難事故に遭った。生贄送りの因習があるこの島で九死に一生を得た彼は、朦朧とした意識の中「こんなに続けて何人も送ることはない」「そうだな、来年に回すか」と囁く声を聞き、その翌年、心臓発作で落命した。光彦は父の死の謎に興味を抱き、現地へと向かった。そこで接触してきた男は、風光明媚なこの地で起きた連続失踪事件の究明を浅見に託し、姿を消したー。
美貌の日本舞踊茜流家元・茜ますみの愛人たちが、次々に不審な死を遂げた。茜流の弟子で銀座の料亭のはりきり娘・八千代は、恋人で歌舞伎の音羽屋の御曹子・能条寛とともに事件の真相を追う。残された「黒い扇」の謎、茜ますみの過去、複雑に絡み合う人間関係の底流に蠢く情念と怨念…。昭和30年代の日本舞踊界、歌舞伎界、花柳界など、華麗な世界を舞台に展開するロマンミステリーの傑作が、文字の読みやすい新版で登場。
日系ブラジル人医師の津村は、北京の国際医学会で知り合った北朝鮮の医師に技術を伝えて欲しいと請われ、招聘医師として平壌産院に赴く。北園舞子は、職場の会長で在日朝鮮人の平山の付き添いとして、万景峰号に乗船する。一方、舞子の友人で韓国人の李寛順は、とある密命を帯びて「北」への密入国を敢行する。三者三様の北朝鮮入国。だが、彼らの運命が交錯する時、世界史を覆す大事件が勃発する。衝撃のサスペンス巨編。
ロンドン留学中の夏目漱石が心を病み、自分をシャーロック・ホームズだと思い込む。漱石が足繁く通っている教授の計らいで、当分の間、ベーカー街221Bにてワトスンと共同生活を送らせ、ホームズとして遇することになった。折しも、ヨーロッパで最も有名な霊媒師の降霊会がホテルで行われ、ワトスンと共に参加する漱石。だが、その最中、霊媒師が毒殺されて…。ユーモアとペーソスが横溢する第一級のエンターテインメント。
“シティ・エクスパンダー4”の生みの親、開発部部長の津久井智男はライバル企業と通じていた!?疑惑を残したまま姿を消した津久井。「事件」の責任を問われ、社長退任を突きつけられた桐生は、わずか2日で解決を迫られる。なぜ「事件」は起きたのか?犯人はいったい誰なのか!?「水の通う回路」とは?大ヒットシリーズ『千里眼』『催眠』の著者入魂、サスペンスの大傑作。
妻が妊娠をかくしたまま自殺した。ショックで隠遁生活を送る秋山に、元上司から奇妙な依頼が来た。「一晩で500万、カジノで負けてくれ。」その日から、妻に似た謎の美女、やくざ、闇社会の大物などが現れ、執拗に付けまわされる。謎を解く鍵は、ゴッホの名画「ひまわり」だったー。直木賞・乱歩賞受賞第1作。名作『テロリストのパラソル』に並ぶ、疾走感溢れる展開と緻密な構成が秀逸なミステリの傑作。
16歳の少女・綾は、父親を不慮の事故で亡くし、スイスの寄宿学校に留学することになった。寄宿舎での1日目、不思議な睡魔に襲われた綾は意識を失う。そして気がつくと、なんと1888年のロンドンで「アン」という名で暮らしていたのだ!街は、殺人鬼(切り裂きジャック)の影に怯えていた。以前からこの事件に興味をもっていた綾は、自分の手で捕まえると意気込むのだがー。時空を超えて繰り広げられるミステリー。
岩手県にある鷲尻村。長く無医村状態が続いた当地に、待望の医師が赴任した。その直後、彼は何者かに襲われ帰らぬ人となった。巨熊に襲われたと噂される彼の代わりに新たに赴任した滝本。だが、着任早々、彼は連続殺人事件に遭遇することになる。先祖の祟りに縛られたこの地で、彼らを襲うのは熊なのか、それともー?横溝正史ミステリ大賞を受賞し、21世紀の横溝正史が誕生と各方面から絶賛されたデビュー作、待望の文庫化。
ある地方都市のマンションで、男女の死体が発見された。遺体は暴力団藍原組組員とその情婦。だが、藍原組では以前から組員が連続不審死を遂げていた。しかも、「ガネーシャ」と名乗る人物から「睡眠を差し出せ」という奇妙な脅迫メールが…。一方、街の下に眠る暗渠には、“王子”他6名のホームレスが社会と隔絶して暮らしていた。奇妙な連続殺人は彼らの仕業なのか?ふたつの世界で謎が交錯する超本格ミステリ。
前世紀初頭、ヨーロッパの小国ソヴュール。極東の島国から留学した久城一弥は、聖マルグリット学園の図書館塔で奇妙な美少女・ヴィクトリカと出会った。彼女の頭脳は学園の難事件を次々解決してゆくが、ある日ヴィクトリカと一弥は豪華客船に招待され、そこで本物の殺人事件に遭遇してしまう。やがて彼ら自身に危機が迫ったとき、ヴィクトリカはー!?直木賞作家が贈る、キュートでダークなミステリ・シリーズ。