2010年11月25日発売
諏訪湖で漁業を営む純朴な青年・田所修一は、下諏訪にできた近代的なカメラ工場と、そこで働く娘たちに憧れを抱いている。素人作家の大島十之助は、小説「愛の疾走」を執筆するために、そんな田所と工場で働く正木美代に恋愛させようと企むが、夫の小説道楽に反対している大島の妻が、策略を田所に打ち明けてしまう。仕掛けられた恋愛の行方は…。劇中劇の巧みさが光る、三島渾身のエンターテインメント小説。1963年初刊作品。
明治15年。年々文明開化の華やかさを増す東京を行く1台の古ぼけた辻馬車があった。それを駆るは元会津同心の干潟干兵衛。孫娘のお雛を馭者台の横に乗せて走る姿が話題を呼び、日々さまざまな人物が去来していく。ある日2人は車会党の恨みを買い、壮士らに取り囲まれてしまう。危機に晒されたお雛が「父!」と助けを叫ぶと、なんと無人の辻馬車が音もなく動き出した!そして現れたのは…?山風明治ロマネスクの最高傑作。
危機に陥ったとき、お雛が呼ぶと現れる干兵衛の息子・蔵太郎と妻・お宵の幽霊。2人に助けられながら、干兵衛はいつしか自由党壮士と明治政府の暗闘に巻き込まれていた。お雛との平穏な生活を望みつつも、会津藩士だった頃の自分を自由党壮士の姿に重ねて心揺れる干兵衛。そんな中“赤い盟約書”を巡って事態は急展開する!最後に干兵衛が選び取る運命とは…。激動する時代の波に翻弄される人々の悲喜を謳い上げた大傑作。
京子はビストロを経営する美しきギャルソン。だが幼いころ義父から酷い性的虐待を受けた彼女の中には、レズビアンでサディストのナオミや、淫乱で奔放やユカリなど、様々な人格が潜んでいた。さらに京子の周りでは、昔の恋人をはじめ何人もが謎の死をとげていて!?(彼らを殺したのはもしかしてーわたしも知らない、もう1人のわたし!?)そして再び京子に愛する男が現れたとき、彼女の内の邪悪な殺人鬼が蠢き出す…。
昼間は孫寧温として王府に勤め、夜は側室に戻るという二重生活を送っていた真鶴。ある日、尚泰王の子を身篭もったことが発覚。女として産むべきか、男として目を背けるべきか。悩んだ末、真鶴は母親になることを決意する。近代化の波が押し寄せ、王国は崩れようとしていた。数奇な運命を背負った母子の未来に、希望の虹は架かるのか!?忘れがたき雅博との恋の行方は!?嵐吹く波瀾万丈の人生が、いよいよクライマックスを迎える。
探偵小説好きの「僕」はひょんなことから英語の先生の家で書生として暮らすことになった。先生は癇癪もちで、世間知らず。はた迷惑な癖もたくさんもっていて、その“変人”っぷりには正直うんざり。ただ、居候生活は刺激に満ち満ちている。この家には先生以上の“超変人”が集まり、そして奇妙奇天烈な事件が次々と舞い込んでくるのだから…。『吾輩は猫である』の物語世界がミステリーとしてよみがえる。抱腹絶倒の“日常の謎”連作集。
四国から東京に戻った「おれ」-坊っちゃんは元同僚の山嵐と再会し、教頭の赤シャツが自殺したことを知らされる。無人島“ターナー島”で首を吊ったらしいのだが、山嵐は「誰かに殺されたのでは」と疑っている。坊っちゃんはその死の真相を探るため、四国を再訪する。調査を始めたふたりを待つ驚愕の事実とは?『坊っちゃん』の裏に浮かび上がるもう一つの物語。名品パスティーシュにして傑作ミステリー。
小さな雑貨卸売会社に勤める28歳の会社員。毎日、目の回るような忙しさだが、その奇妙な電話は、仕事中にかかってきた。「助けて…殺される」声の主は、中学高校で同級だった幼なじみの依子に違いない。山あいの小さな町にある小学校で教師をしているはずだが、一体何があったのか?閉鎖された町で続発する怪事件。その裏に隠された戦慄の事実とはー。赤川ホラー・サスペンスの秀作が新装版で蘇る。
ダメダメなあたしたちにも明日は来る。否応なくーコタツでとぐろを巻く童貞達にも、自己マン臭ぷんぷんの映研に反旗を翻す女子たちにも、クレバーに生きたい男子にも、つまんない周りとつまんない自分にうんざりの優等生にも、何かになりたくて何にもなれない彼女にもーそれでもあたしたちは生きてゆく。凹み、泣き、ときに笑い、うっかり恋したりしながら。ひたすらかっこ悪く、無類に輝かしい青春小説。
連邦政府首都ダカールでの死闘の末、バナージの前に立ちはだかった新たな敵。それは“ユニコーン”と酷似した“黒いガンダム”だった。『ラプラスの箱』をめぐる争いが沸点を迎える中、それぞれの思いに従って戦場を駆ける男たち、女たち。彼らの眼前で二機のガンダムが激突した時、未知の強大なエネルギーが膨れ上がり、世界の界面を揺らすかのように空を覆ったー。いよいよその真価を露にするSF巨編、クライマックス第7弾。
謎の修道院“ベルゼブブの頭蓋”から辛くも脱出したヴィクトリカと一弥は、豪華列車オールド・マスカレード号で、一路懐かしいソヴュールへ。そこで出会った乗客たちは、それぞれ奇妙な名乗りを上げる。“死者”に“木こり”、“孤児”に“公妃”。やがて起こった殺人事件、三つの嘘とひとつの真実、いや、もしかしたら、すべてが…?誰もが誰かを演じる仮面舞踏会の夜、深まる混沌にヴィクトリカの推理が冴えわたる。
実父・後醍醐天皇により鎌倉に幽閉された護良親王。その後を追ってきた千鶴子は、囚われの身である護良との生活を始める。幸せな一時に、やがて子を宿す千鶴子。だが、帝からの許しを待つ護良に届いたのは、非情な命令だったー。iらんど大賞2009最優秀賞受賞。
僕と他人が揃っても、『友達』にはならない。『ぼっち達』になる。空を自由に飛びたいわけじゃない。酸素とチョコレートの次ぐらいに、誰もが気軽に手にしているもの。友達。僕はそれが、欲しい。若手新鋭作家が贈る、『ぼっち』達の青春ストーリー。
かつて著者が勤めた札幌医科大学病院に入院しながら、「短歌研究」第一回五十首詠募集の特選となり、颯爽と中央歌壇に現れた新星・中城ふみ子。歌集『乳房喪失』は大反響を呼び、昭和短歌史にその名を刻むが、すでに乳癌で両方の乳房を切除していた彼女は死の床にあった。それでも恋に堕ち、性の深みに堕ちてゆく。美貌と才能に恵まれ、短くも激しい生命を燃やして31歳で夭折した歌人の愛と生の遍歴。
地方都市で暮らす平凡なOLの亜季子。高校生のときからつきあっている恋人・遙生は東京で暮らしていて遠距離恋愛中だが、いずれは彼と結婚するつもりでいる。新居にする予定のマンションを購入し、幸せな未来を思い描く亜季子。だが、地元に戻ってきた遙生に、東京で出逢った女性を呼び寄せて一緒に暮らすつもりだと告げられてしまう、亜季子の平凡な日常の歯車が、少しずつくるい始めて…。
白昼のホテルで大富豪が殺された。事件の黒幕として容疑にあがったのは二人ー富豪の甥で映画マニアのクライトンと、画廊オーナーで富豪の愛人と目されるジュリー。図らずもこの二人に巻き込まれることになった凄腕弁護士デリクは、クライトンの映画のシーンをまねた常道を逸する行動に追い詰められていく。一方、ジュリーもまた、重大な秘密を抱えていた…。最後まで意外な展開が満載のサンドラの傑作。
汐灘の海岸で起きた幼女殺害未遂事件。容疑者として浮上したのは、二十年前に同様の犯行を自供し、服役した過去を持つ庄司だった。その庄司が、再審請求に向け動き出した矢先の事件。予断に満ちた捜査で犯行のシナリオを描こうとするベテラン刑事に対し、庄司のかつての親友で刑事となった伊達は、独自の調べを始める。
警視庁に新設された広域捜査専任特別調査室、通称「SRO」。総勢7名の小所帯にもかかわらず5人がキャリアという、管轄の枠を越えた花形部署のはずが、その内実は訳ありだった。山梨で発見された白骨死体をきっかけに、史上最凶の連続殺人犯「ドクター」を追う調査員たち。警察組織の限界に迫る、新時代警察小説の登場。