2011年10月31日発売
蓮丈研究室に舞い込んできた手書きの古書「阿久仁村遺聞」。村の伝説や民話めいた挿話の数々は、鏡のモチーフに彩られつつ奇妙につながりを欠き真意も編まれた目的も不可解だったー。明治初期に地図から消えた村、隠蔽された惨殺事件、暗躍する怪人物。那智の推理が、村の来歴と「邪馬台国」の実像を射抜く時、古代から現代まで、歴史の闇を貫く「もう一つの日本史」が現前する。著者の絶筆が、その遺志を継いで遂に完成。
1984年、夏。別れた妻をいまだ忘れられぬゾイド・ホイーラーは、今年もヴァインランドの町で生活保護目当てに窓ガラスへと突撃する。金もなく、身動きもならず、たゆたうだけの日々。娘のプレーリーはすでに14歳、60年代のあの熱く激しい季節から、どれほど遠くまで来てしまったことかー。だが、日常は過去の亡霊の登場で一変する。昔なじみの麻薬捜査官が示唆したあの闇の男、異様なまでの権能を誇り、かつて妻を、母を、奪い去ったあの男の、再びの蠢動。失われた母を求める少女の、封印された“時”をめぐる旅が始まった。超ポップなのに、この破壊力。作品の真価を示す改訳決定版。
老女の部屋の壁に並ぶ、無数のカートリッジ。その一つ一つに彼女の大切な記憶が封じ込められていたー。記憶を自由に保存・再生できる装置を手に入れた認知症の老女を描いた表題作のほか、ダムに沈む中国の村の人々、赴任先の朝鮮半島で傷ついた鶴に出会う米兵、ナチス政権下の孤児院からアメリカに逃れた少女など、異なる場所や時代に生きる人々と、彼らを世界に繋ぎとめる「記憶」をめぐる6つの物語。英米で絶賛される若手作家による、静謐で雄大な最新短篇集。O・ヘンリー賞受賞作「一一三号村」およびプッシュカート賞受賞作「ネムナス川」を収録。
同情は美しい、それとも卑しい?美人の親友のこと、本当に好き?誰もが心に押しこめている本音がこぼれる瞬間をとらえた二篇を収録。デビューから10年、綿矢りさが繰り広げる愛しくて滑稽でブラックな“女子”の世界。
神々と人間がともに歴史を紡いでいた神話の時代。全知全能の父神ゼウスの計らいによって、10年にわたる「トロイア戦争」が勃発する。やがて戦は佳境を迎え、英雄アキレウスとヘクトルの決闘がはじまるー。古代ギリシア神話を題材とし、ギリシア叙事詩のなかでも最高と讃えられるホメロスの『イリアス』『オデュッセイア』の2大作を漫画化。
実の両親と弟を死に追いやられ、復讐を誓った久遠。復讐相手である山波建設の社長の秘書、そして愛人にもなったが、なかなか証拠が掴めないまま月日は流れ…やがて山波の命令により息子である英一の秘書になった久遠は、英一から不正証拠を引き出しはじめる。着実に進む復讐計画。何も知らない英一が自分を信頼し、想いを寄せてくることに戸惑い、それが次第に苦痛となりだす一方で、久遠は復讐を止めることができず…。