2011年4月発売
定年。老いてはいないが、現役ではなくなった毎日。定年退職した森谷浩平は夕刊紙の広告を頼りにアダルトDVDを買いにいく。そこで八十歳の橋詰老人と出会い、居酒屋へ。定年後、初めて得た友人であり人生の先輩だった。その居酒屋でバイトしていた二十歳の景子と知り合い、心の張りを取り戻してゆく。しかしかつての同期が自殺し、家族とカネをめぐる難題が森谷に降りかかってくる。
朝鮮戦争当時、十五歳だったイ・スーフンは北の故郷に父母と妹弟を残してひとり韓国へ逃れた。六十年後、スーフンは世界的な電子企業を率いる経済界の実力者となり、拉致問題で日本銀行を追われた大田原に接触する。一方、北の暗殺マシン、リ・ソンスが日本に潜入していた。スーフンは北の体制を内側から崩壊させるミッションの実行を命じた。
「このままでは躬は大奥に殺されかねぬ」将軍継嗣をめぐる大奥の不穏な動きを察した四代将軍家綱は、お髷番深室賢治郎に動向を探るよう直命を下す。そこで蠢いていたのは、順性院と桂昌院の思惑。それぞれ実子を五代将軍につかせんと権謀術数を競っていた。家綱放逐を企む者にとって、腹心のお髷番は目下の敵。襲い来る刺客と死闘を繰り広げる賢治郎。風心流小太刀が電光石火で悪を断つ。
新宿を牛耳る神竜会の構成員が射殺された。東京進出を目論む関西系暴力団・共和会傘下の鳴海興業による凶行だ。さらに神竜会幹部までもが中国マフィアの手で爆殺。背後には新宿土地利権の闇が横たわる。果て無き勢力争いと報復。凶悪犯罪組織に敢然と立ち向かう沖幹次郎らK・S・P特捜部を、やがて悲劇が襲う。刑事として、人としての葛藤に裂かれた魂の極限を描く、警察小説の金字塔。
女子が苦手で地味な男子高生の塵八と、女の子が大好きで野性的な女子高生の弓華は、凄腕の殺し屋だ。とある放課後、塵八に仕事が入る。特殊部隊に所属していた、ロシア人の暗殺だ。塵八は狙撃のため、賭博が行われている建物の中で息を潜めた。照準を合わせ指先に力を込めるー瞬間、知らない女に銃を突きつけられた!女と揉めているうちに標的に気づかれてしまい…。戦闘開始。
停学中だった不良生徒・高杉が銀魂高校に帰ってきた!復帰早々、春雨高や吉原商と喧嘩上等で火花を散らす高杉一派に、夜兎工番長・神威が殴り込み!ガチンコ学園抗争が勃発する!?これギャグコメディ小説じゃなかったっけ…?せっかく帰ってきたのに、どうなる3Z-。
年上の彼女を追いかけて、おれは恋の穴に落っこちた…男子校に通う高1の遠藤は、女子校に通う高3の彼女と、年下であることを隠してつきあっている。二人の、SMならぬSSというおかしな関係の行方は?恋もギターもSEXも、ぜーんぶ“エアー”な男子の“純愛”を描く、各紙誌絶賛の青春小説。
社会人五年目で友人なし。恋人は三ヶ月前に出て行ったばかり。そんな私の前に四年間行方知れずだった弟・風太がリーゼントの緑くんと共に現れた。突如始まった、弟との奇妙な共同生活。そんな風太は毎夜、なぜか私の「観察日記」を付け始めたのだが…。短篇「松かさ拾い」に加え磯崎憲一郎氏との特別対談を併録。『ひとり日和』に続く、芥川賞受賞第一作。
「西のはて」の都市国家エトラは、周囲の諸都市と戦を繰り返していた。幼い頃、姉と共に生まれた土地からさらわれ、エトラの館で奴隷として育った少年ガヴィアには、たぐいまれな記憶力と、不思議な幻を見る力が備わっていた。一家に忠誠心を抱いて成長したガヴィアであったが、ある日を境にすべてが変わっていくー。「西のはて」のファンタジー・シリーズ第三作。ネビュラ賞受賞作。
悲惨な事件によって愛する人を失ったガヴィアは、エトラを離れて放浪する。逃亡奴隷の集落「森の心臓」や、生まれ故郷である「水郷」をめぐりながら、旅の途中で出会った人々に助けられ、ガヴィアは自分のふたつの力を見つめ直してゆくー。「西のはて」のファンタジー・シリーズがついに完結。ネビュラ賞受賞、ル=グウィンがたどりついた物語の極地。
乃里子はボリュームのあるバストとはちきれんばかりの肉体の若妻。夫にナイショで、通販で秘密の買物をしている。買物の中身がバイブレーターであることを、ふとしたことで宅配便の運転手の青年・健也に知られてしまう。秘密を知り、興味をそそられた健也は乃里子をデートに誘う。乃里子は年下の男の誘惑をまんざらでもなげに受け入れ、二人は急接近し、背徳の性愛に溺れてゆく。-年下の男との淫らな性愛の原風景がうかがえる会心作。
「お前んち、いっつもええ匂いするのう。」そう言った転校生のコジマケンが気になる緑は、まだ初恋を知らない十四歳。夫(おじいちゃん)が失踪中のおばあちゃん、妻子ある男性を愛し緑を出産したお母さん、バツイチ(予定)子持ちの藍ちゃん、藍ちゃんの愛娘、桃ちゃん。なぜかいつも人が集まる、女ばかりの辰巳一家。そして、その辰巳家に縁のある、謎の女性棟田さん。それぞれの“女”が人知れず抱える、過去と生き様とはー。二ヵ月連続リリース第一弾。大阪のとある街を舞台に、さまざまな形の“女のこうふく”を描いた、著者渾身の一作。
復活した悲運の作家、幻のデビュー作。 『海炭市叙景』で奇跡的な復活を果たした悲運の作家、佐藤泰志のデビュー作が文庫化。山羊、栗鼠、兎、アヒル、モルモット…。バスに動物たちを乗せ、幼稚園を巡回する「移動動物園」。スタッフは中年の園長、二十歳の達夫、達夫の三つ上の道子。「恋ヶ窪」の暑い夏の中で、達夫は動物たちに囲まれて働き、乾き、欲望する。青春の熱さと虚無感をみずみずしく描く短篇。他に、マンション管理人の青年と、そこにするエジプト人家族の交流を描く「空の青み」、機械梱包工場に働く青年の労働と恋愛を描写した「水晶の腕」を収録。作者が最も得意とした「青春労働小説」集。 【編集担当からのおすすめ情報】 『海炭市叙景』に次ぐ佐藤泰志文庫化プロジェクト第二弾。この後も、佐藤泰志作品が文庫化される予定です。 移動動物園 空の青み 水晶の腕 解説:岡崎武志
北の夏、海辺の街で男はバラックにすむ女に出会った。二人がひきうけなければならない試練とはーにがさと痛みの彼方に生の輝きをみつめつづけながら生き急いだ作家・佐藤泰志がのこした唯一の長篇小説にして代表作。青春の夢と残酷を結晶させた伝説的名作が二〇年をへて甦る。
小学生の時に母を亡くした民子は、父とその再婚相手との三人暮らし。複雑な想いを胸に秘めていたが、亡き母の親友からある話を聞き、徐々に心を開いていくーそれぞれの想いを鮮やかに掬い取った、切なくも温かな家族の物語。第2回ポプラ社小説大賞優秀賞受賞作。
京都の大学院から、遠く離れた実験所に飛ばされた男が一人。無聊を慰めるべく、文通修業と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。文中で友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れるが、本当に想いを届けたい相手への手紙は、いつまでも書けずにいるのだった。
自分が斬った男の娘・お雪と暮らす有安は、ある日、血まみれで倒れている男を発見する。それは己の過去を知る人間だった。医師として助けるべきか、今の平穏を守るために見捨てるべきか?親子の別れを予感させる出来事に、呆然と立ち尽くす有安だがー。シリーズ第3弾。
鷹森真九郎は、城下の羨望の的である雪江を妻にして、ひそかに今治藩を出奔する。江戸の片隅でつつましやかに暮らしはじめた二人だったが、ある人物の命を救ったことから、次々と襲いくる刺客たちと刀を交えることになりー。特別書き下ろし短編『祝言(一)』を収録。
新妻・雪江との平穏な暮らしを望む鷹森真九郎は、はからずも江戸に暗躍する組織から命を狙われることになってしまう。人を斬る悲しみに沈む真九郎だが、ついには、雪江にまで危難が及ぶにいたり、自らの運命を受け入れる覚悟を固める。悲哀の剣が舞うシリーズ第二弾。