2011年4月発売
江戸から遠く離れた田鶴藩。その藩主が襲われた。疾風のように現れた刺客は鷹を操り、剣も達者な謎の少年・燦。筆頭家老の嫡男・伊月は、その矢面に立たされるが、二人の少年には隠された宿命があったー。尋常でない能力を持つ「神波の一族」の正体とは?少年たちの葛藤と成長を描く著者待望の文庫書き下ろし新シリーズ第一弾。
このことは誰も知らないー四百年の長きにわたる歴史の封印を解いたのは、東京から来た会計検査院の調査官三人と大阪下町育ちの少年少女だった。秘密の扉が開くとき、大阪が全停止する!?万城目ワールド真骨頂、驚天動地のエンターテインメント、ついに始動。特別エッセイ「なんだ坂、こんな坂、ときどき大阪」も巻末収録。
観音さまが見下ろす街で、コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営む気丈なおばあさん、杉浦草。人々を温かく見守り続ける彼女は、無料のコーヒーを目当てに訪れる常連たちとの会話がきっかけで、街で起きた小さな事件の存在に気づく。オール讀物推理小説新人賞受賞のデビュー作を含む「日常の謎」を解く連作短編集。
内藤新宿に店を構える薬種問屋『蓬莱屋』の三男・三吉は、姑の薬代が嵩み、困り果てた御家人の新造の加代から、何とか五十両を工面してくれないかと相談された。媚薬も扱う同業の『玉泉堂』の女将・泉から、加代の淫水や和合水を採ってくるなら五十両を用立てても良いと言われた三吉は…。好評書き下ろしシリーズ第七弾。
現代であれば定年になろうかという寒川十蔵が、身投げ女を助けようとしたことから、血塗られた妖弓「弦月」と関わってしまう。だが、この事件をきっかけに端唄の師匠おりんと出会い、その魅力に惹かれていくが…。一方、「弦月」追跡の果てに浮かび上がってきたのは恐るべき敵の姿であった。手に汗握る、またこころ温まる傑作時代小説。
一九八一年三月。大学の合格発表のため遠く離れた西の田舎町から東京に来た「僕」。その長旅には同級生の裕子という相棒がいて、彼女は、東京暮らしの相棒にもなるはずだったー。ロング・バケイション、ふぞろいの林檎たち、ボートハウス、見栄講座…。「’80年代」と現代を行き来しつつ描く、一人の上京組大学生が経験する出会いと別れ。
根本景子は一人息子・圭一の結婚式当日、その妻となった佳枝に対する殺意を固めた。景子に花束を贈呈する時ニヤリと笑った佳枝の顔に、自分の“同族”と感じたからだ。その半生で息子を守りたい一心から“完全犯罪”による殺人を繰り返した姑と、息子を食おうとする嫁。最後まで“神”になれなかった鬼子母の行く末を描く表題作を含む傑作六編の凄絶なる競演。
東京の浪人生・橋本眞人の部屋で、同級生の撲殺死体が見つかった。部屋に残された痕跡から、逃亡した橋本が時限爆弾を作っていたらしいことが判明する。やがて京都駅長室に届いた駅爆破を予告する脅迫状。京都へと急行する十津川警部だったが、厳戒空しく、駅3番ホームで爆発が!果たして橋本の仕業なのか?また、脅迫犯の真の目的とは?緊迫のサスペンス。
不倫相手が離婚し結婚できることになった女が、独身最後にとった行動は!?(『深夜の迷子』)。唐揚げ弁当ばかり食べている太めの女ADには、なぜか男が惹きつけられて(『処女と唐揚げ』)。社内不倫を続けたあげく相手に逃げられた30歳のOLは後輩の男と…(『笑う修道女』)。-不器用ながらも前へ前へ生き続ける女性たちの、本音の性を描いた傑作官能短編7作。
「BSグループ」会長の笹林宗祐が事故死してから一か月。その任を引き継いだ妻の彩子も拳銃で自殺してしまった。宗祐の遺言で、新会長の座に就いたのは二十五歳の川本咲帆。彼女は、宗祐が結婚前に他の女性との間に儲け、海外で暮らしていた娘だった。帰国した咲帆が空港で何者かに襲われるー。大企業の背後に潜む闇に、片山兄妹と名探偵猫・ホームズが迫る。
どんなに愛していても、ずっと一緒にいることはできない。だから、心は…投資組合を経営する「わたし」が出逢った、風俗嬢サクラ。彼女とのメール交換から、すべてが始まったー。
洛陽に還御した天子は、衰微している漢室を救えるのは山東にいる曹操以外にないと勅命を下し彼を招聘した。精兵二十万を率いて入洛した曹操ではあったが、やがて帝を奉じて都を許都に移し、権力をことごとくわが手に収めてしまった。
「どんな代物でも運ぶ」がウリの運送会社“ベルフェル”。そこの社長兼唯一の社員であるライアのもとに、とある依頼が舞いこんだ。それは、女性ひとりと大型犬一匹を田舎町まで送り届ける簡単な仕事、のはずだったのだが…。その女性、アリスには驚きの秘密があってー!?ライアは彼女を無事に目的地まで送り届けることができるのか。謎を秘めた可憐な少女と、女好きな“運び屋”が織り成すスタイリッシュ・ファンタジー。
平身低頭の30年間を過ごした会社を早期退職した「私」。故郷を見下ろす村営住宅に転居し、のどかな風景のなかで哲学書を片手に、真の自分自身を取り戻そうする男が、静かに狂っていくーいまだ善を知らず、いずくんぞ悪を知らん。