2011年発売
同心豊岡文五郎と岡っ引き源兵衛は、四年前に兄弟押し込み強盗を捕らえた。兄の金兵衛は獄門、弟の弥蔵は島流しとなったのだが、弥蔵が腕の立つ浪人とともに島抜けをした。復讐の鬼と化した弥蔵たちの企てを、直心影流免許皆伝、大曽根三樹之助の剣が斬る。書き下ろし長編時代小説。
ロンドンで辻馬車業を営むわたしが乗せた奇妙な客は、馬車から降りたとたん、忽然と姿を消した。その男は死体となって発見され、同業者のひとりが殺人容疑で逮捕される。わたしは彼に、御者仲間全員の力を合わせて留置所から出してやると約束するー六千組の目と耳を総動員して。ヴィクトリア朝ロンドンを舞台に、辻馬車探偵ネッドたちの活躍を軽快に描く、傑作歴史ミステリ。
クリスマスに催したクッキー交換パーティに感心したという新婦の願いで、結婚式のプランニングをすることになったジェーン。親友のシェリイも引きずり込んで、会場の狩猟小屋に行くと、そこには動的・人的トラブルが山盛りで待ち構えていた。そしてついには、準備に集まった関係者から死人が出てしまう!主婦探偵が結婚式の裏方と同時進行で事件を調査する、シリーズ第11弾。
人とは異なりながら、人の世に順応して生きてきた一族“鬼”。女が忌まれないという彼ら一族は、母体に眠る女児に印を刻み、その娘が16歳になると花嫁として鬼ヶ里へ迎え入れることをならわしとしてきた。鬼ヶ里を離れのんびりと学生生活を送っていた士都麻光晴は、休暇を使って一人温泉旅行へと出かけ、旅先の森で美しい少女に襲われる。見事な黒髪、華奢な肢体、射るような黄金の瞳ー去来する記憶に動揺する光晴。そして、少女の口から語られた意外な過去とは…。
幼いころ、二人の兄とわかれ盗賊の頭領になった男。半年前から引き込み役を入れた東両国の太物問屋を襲うが、そこには下の兄がおり、町方たちが待ち伏せていた。上方が本店の江戸店の主にまで出世した次兄の人柄に惹かれ、手下が裏切ったのだ。賊を一網打尽にした北町奉行所定町廻り同心・神岡茂平は思う、百姓が嫌になり、上州渋川村から逃げるように江戸に出てきて紆余曲折の末、武士の養嗣子となった己と比べ、頭領の昔のわかれ道が、もし違っていたら…。江戸情緒溢れる人情時代小説。
亡き友の遺志を継ぎ、東海道を江戸へと向かう佐之介は人助けや悪人退治をしながら、そして女たちからの甘い誘惑とも戦いながら、ようやく箱根にたどり着く。しかし、峠への急峻な坂道で、謎の刺客たちに襲われ、打ち負かすも深手を負い、意識を失う。気がつくと、腹に包帯が巻かれ、どこかで見たような若い女がいて…。甘い顔立ちの優男ながら、天下無双の遣い手、春山佐之介の大活躍を描く、ますます快調のシリーズ第二弾。
スポーツ新聞文化部長会の旅行で韓国を訪問した有木進太郎。朝鮮半島の南北の接点である板門店は見ておく必要があるという大義名分でツアーに参加したが、一行にはジャーナリストとしての使命感より、口外できない密かな楽しみが目的にあった。市内見学をそこそこに切り上げた有木は、ソウルの妓生パーティで21歳の可愛い女性と知り合い、悦楽の一夜を共にする。しかし、献身的なサービスを気に入った有木は、ソウル滞在中ずっと彼女と過ごすことに…。
夫の恋をもう許さないことに決めた妻。その夫と恋人の奇妙な旅。教え子との関係に溺れる教師。その教師の妻のあたらしい習慣。決して帰ってこない男を待つ女。その女が忘れられない別の男ーありふれた団地を舞台に、交わり、裏切り合う恋と運命。日常が孕む不穏な空気を、巧みに掬いあげた連作小説集。
なぜか“教主さま”だという女の子を預かることになった。彩乃ちゃんといって、一見ごく普通の、小学五年生の女の子だー。花屋に勤める二十代の智佳子、進路に悩む高校三年生の徹平、東京から地方に越してきた小学五年生の佳奈が、彩乃ちゃんとの出会いで知った人生の奇跡。前に進むすべてのひとに捧げる物語。
鎌倉の実家の近くで今日介は、黒髪の甘い香りと長い睫毛が魅力的な和服の若妻、森下美佐子と知り合う。草履の鼻緒を直すため、誰もいない今日介の実家へ。そして、足のツボを診ることに。白い足袋を脱がし、素足の裏が露わになって…。官能の名匠が贈る新境地、その第1シリーズ完結編。週刊現代連載小説。
初春の闇月夜、揃って命を狙われた逸馬、信三郎、八助。その理由を探る三人が行き当たったのは、南町奉行所の隠密廻り同心・岩倉が、無実の男を斬り捨てたという不祥事だった。自らの懐刀である岩倉を使い、逸馬潰しに躍起になる鳥居耀蔵。両者の対決はいよいよ佳境に!大人気シリーズ第10弾。
百年に一度の金融危機リーマン・ショック。富裕層のオーダーに応えるPBの旗手、顧客から逃げないFAレディ。長引く不況と経済のグローバル化に傷つきながらも、メガバンク東西銀行の行員たちは懸命にそれぞれの道を模索していた。金融動乱に立ち向かうバンカーたちの“誇り”を描くドキュメント・ノベル。
相馬刑事が三年前に説諭した万引少女千江が、再会の約束を果たす前に、多摩川の河川敷で全裸絞殺死体で発見された。相馬は彼女の交友関係をたぐる。親の隠し金一億七千万を仲間とくすねた暴走族。身体に菊の花を差されたまま死んだ女。全ての空白は、千江がいた会津高原で埋まるのか。純情刑事の追跡行。
『東海道中膝栗毛』で一世を風靡するのはまだ先のこと。若き日の十返舎一九、与七郎は平穏な暮らしに満たされず、憑かれたように旅を繰り返す。駿府から大坂、そして江戸へ。稀代のユーモア作家が心に抱いた暗闇とは何だったのか。意外な結末が深い感動を呼ぶ、直木賞作家渾身の長編小説。
満員電車の中、三十代の女性がナイフのようなもので切りつけられる事件が立て続けに起こった。探偵・鷹知祐一朗から捜査協力の依頼を受けた小川と真鍋は、一見無関係と思われた被害者たち全員に共通する、ある事実を突き止める。その矢先に新たな事件が起こり、意外な展開を見せるが…。Xシリーズ第二弾。
両親がものごころつく前に離婚して母の手で育てられた美名子は、父の不在を寂しいと思ったことはなかった。母の表情からすべてを鋭敏に感じ取った幼い日、その話題を自らタブーとしたが、大人になり父がすでに亡くなっていることを偶然知ってから、その存在が大きくなって…。人と人の絆を描いた連作集。
定年を4年後に控えた永関恭次は、ある日、ゲノム解析、予防医学、そしてデータマイニングの先端技術を駆使して、人間の正確な「余命予測」をビジネスとする研究所の存在を知る。余命検査の説明会で偶然居あわせた永関と4人の男女。残された寿命をはっきりと自覚した時、彼らの人生の風景が大きく揺らぎ始める。
職場の同僚と女の子のかわいさについて語り、グラビア誌の「永遠のセクシー女優名鑑」に見入ってしまう実加。美術大学時代の友人たちの行く末を思いつつ、自宅で催した女の子限定カフェなど、今ここに一緒にいることの奇跡のような時間をみずみずしく描いた表題作をはじめ、著者の世界が凝縮された作品集。
江戸末期、駿河の小藩。その岩場からは、美しくも怪しい紺碧の渦が川面に見えた。流れゆく時と川と人。男女は渦に巻き込まれるように人生を移ろわせ、時に後悔し、時に鬱屈を抱え、あるいは平凡でも底光りするような日常を過ごし、いつしか果てていく。それもあり、これもあり。しみじみと美しい七つの物語。