2012年10月31日発売
俺たちが十九の時俺たちが十九の時
『アポロンの島』が日本の文学界に衝撃を与えようとしていた前夜、煉獄のごとき逼塞感のさ中で推敲を重ねられた作品群には、未来の小川文学の全貌につながる世界のすべてが、ほとばしるように芽吹いていた。作家修錬時代の未発表作品集。
母性母性
母と娘。二種類の女性。美しい家。暗闇の中で求めていた、無償の愛、温もり。ないけれどある、あるけれどない。私は母の分身なのだから。母の願いだったから。心を込めて。私は愛能う限り、娘を大切に育ててきましたー。そしてその日、起こったことー。
手紙手紙
ワロージャは戦地へ赴き、恋人のサーシャは故郷に残る。手紙には、別離の悲しみ、初めて結ばれた夏の思い出、子供時代の記憶や家族のことが綴られる。だが、二人はそれぞれ別の時代を生きているのだ。サーシャは現代のモスクワに住み、ワロージャは1900年の中国でロシア兵として義和団事件の鎮圧に参加している。そして彼の戦死の知らせを受け取った後もなお、時代も場所も超えた二人の文通は続く。サーシャは失恋や結婚や流産、母の死など様々な困難を乗り越えて長い人生を歩み、ワロージャは戦場での苛酷な体験や少年の日の思い出やサーシャへの変わらぬ愛を綴る、二人が再び出会う日まで。
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