2013年10月発売
夕刻になるときまって茶屋を訪れ、団子三皿を平らげて上機嫌に帰る道服姿の老人。そのおかげで店の評判は高まった。ある筆屋の主が、老人は茶湯者・千宗旦に化けた狐だと考え、儲け話を企むが…(表題作)。茶器、書画、花、茶室など、茶湯にまつわる世界を12編の物語に凝縮し、宿業を背負って生きる人間の哀しさや愚かさをしみじみと描いた、情緒溢れる傑作短編集。
野村絹枝の背中に蠢く大蛇の刺青。艶美な姿に魅了された元軍医・松下研三は、誘われるままに彼女の家に赴き、鍵の閉まった浴室で女の片腕を目にする。それは胴体のない密室殺人だったー。謎が謎を呼ぶ事件を解決するため、怜悧にして華麗なる名探偵・神津恭介が立ち上がる!江戸川乱歩が絶賛したデビュー作であると同時に、神津恭介の初登場作。満を持しての復刊!
江戸川乱歩の名作「D坂の殺人事件」は古本屋の女房殺しを描いたものである。これは乱歩が本郷団子坂で古書店を営んでいた経験が執筆の契機だった。新刊書と違い、複数の人の手を経た本には、持ち主の書き込みや挟み込みがあったり、本自体の来歴にも謎めいた要素が尽きない。そんなミステリアスな古書を題材に、斯界の名手たちが腕をふるった傑作アンソロジー!
触れるだけで相手の命を奪う恐ろしい手を持って生まれてきた少女、自分を殺そうとする父から逃げ、山賊に拾われた男、幼き日に犯した罪を贖おうとするかのように必死に悪を糺す同心、人々の哀しい運命が、謎の存在・金色様を介して交錯する。人にとって善とは何か、悪とは何か。
夢、希望、怖れ、孤独、友情…。人気作家で贈る11の物語。ときに切なく、ときにほのぼのと、子供と大人たちの間に起こる様々なドラマ。『東京バンドワゴン』シリーズで知られる小路幸也ワールドから、単行本未収録を中心に、少年少女を主人公にした作品を選りすぐった傑作短篇集!巻末に作家本人による自作解説を付す。
著者の芸術活動の最初期にありながら、会田哲学、セオリー、善悪、聖と俗の逆説、執拗なまでの観察力と巧みな描写技法など、天性の画家ならではの表現が既に完成された小説であり、確信犯の犯行声明ならぬ、美術家・会田誠の制作のプロットであり予告であった。本作品の単行本刊行に大きく関わった松蔭浩之氏の書籍化までを追った回想的解説文を付す。
中世幻想譚の精華たる謡曲から、童話や探偵小説、そして戦後文学を代表する人々まで多彩な幻視者たちの文学を集大成。現実を超えた世界を追求する作家たちの鮮烈な軌跡を、識者によるオールタイム・ベストをもとに選ばれた名作佳品21篇によって跡づける。
母・乙美が遺してくれた、愛情たっぷりのレシピ。すこやかに、幸せに過ごしてほしいー映画『四十九日のレシピ』から飛び出したおいしくて楽しい、料理&暮らしのレシピ。
史上、これほど愛された女性がいたろうかー時の最高権力者・白河法皇と、その養女にして最愛の恋人・待賢門院璋子。法皇63歳、璋子15歳。およそ50歳も離れた二人の愛は、平安という貴族社会を炎上させるほど、激しく純なものだった。文藝春秋読者賞を受賞した、渡辺文学の集大成!巻末には麻木久仁子氏との対談を収録。
後世に名高い「出師の表」を書き、孔明は魏を征伐すべく軍を発する。しかし先鋒を任せた馬謖は兵法には精通しているが実戦経験に乏しく、惨敗を喫す。未だ成熟をみない国の法を重んじ、涙を流しながら馬謖を誅す孔明。一方、尊号を王から皇帝に改めた孫権は、早期の天下平定を目指し遼東の公孫淵と手を結ぼうと使者を送るが…。
おきんとお六、女ざかりの妾二人に挟まれて旅する江戸最強の色男・西門屋慶左衛門。伊勢参りのご利益か、萎れていた男の武器も復活し、京都で大坂で金毘羅で、西国の美女たちを相手に最高の快楽を求めるが…色と欲にまみれた男女が豪華に繰り広げる痛快エロティック時代小説、ノンストップの第三弾!
食道がんの手術のために入院した51歳の多花子。それは、半身不随の母をひとりで介護する暮らしの中で得たつかのまの休息だったが、隣の病室に昔の男がいることに気づいて…いくつもの人間模様を見届け、後半生をあるがままに受けとめ生きる女性の覚悟としなやかさ。不思議な迫力に満ちた傑作短編集。
1993年、あと一歩のところで連続幼児殺人犯を取り逃がした不破と田村の同期コンビ。17年後、不破を訪ねてきた田村は、その夜に変死を遂げた。定年後も事件の捜査を続けていた田村の執念、そして刑事訴訟法改正の狭間で“公訴時効”の名の元に忘れ去られた被害者たちの無念を胸に、不破は真犯人に迫る!
訴訟でやってくる者たちが泊まる“公事宿”のひしめく日本橋馬喰町。お裁きがまさに始まろうとしたお白洲で、獣に食いつかれたような傷を残して公事師が突然死んだ。“マミ”が出たという騒ぎ、卵を産んだ女房、三日月井戸…馬喰町七不思議のなかに隠された巨大な悪事に根岸肥前守が挑む、大人気殺人事件シリーズ第16弾!
貧しい人を放っておけないとガラクタさえも預かる質屋を営む長屋の大家夫婦。店子を支え、長屋の暮しを守ってきたが、突如、悪徳高利貸しに立ち退きを迫られー「弱い者いじめはいい加減にしたほうがいいぞ!」強い信念と熱き心で立ち向う若き町年寄の三四郎が、影の情報集団・百眼と江戸の事件を未然に防ぐ。人気シリーズ第11弾。
世間には知られていない、一風変わったふしぎな職業についた人々に光を当て、その仕事の詳細を聞いた「架空」のインタビュー集。ひょっとしたら世界のどこかにあるかもしれない…、知られざる「わたくし」たちの物語。クラフト・エヴィング商會と、写真家・坂本真典氏が紡ぎだす「ひと」と「仕事」にまつわる19人の肖像。
公団住宅で三つ子の姉と、両親、祖父母に愛されて暮らす「こっこ」こと渦原琴子は、口が悪く、偏屈で硬派な、孤独に憧れる小学三年生。こっこの日常は、不満と問題と驚きと発見に満ちている。世間の価値観に立ち止まり、悩み考え成長する姿を、活きのいい言葉でユーモラスに温かく描く。光溢れる感動傑作。
本所の貸本屋・辰巳屋文三が辻斬りに襲われたところを、新内流しの門付け芸人であるおれんに助けられた。おれんは義父の刀匠・呉羽暁斎の遺言で、彼が呪いを込めて打ってしまった邪剣四振の行方を追っているという。おれんは文三の助けで邪剣を探し当て、邪剣に魅せられた者たちと死闘を繰り広げていく。話題の清張賞受賞作家、幻のデビュー作。